表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/216

攻略対象も忘れた頃にやって来る



 『落とし穴』の結末を先に延ばして、シリアスなお話が続きます。




 私、レオ様とシュナイダー様を笑顔で出迎えました。今日、『落とし穴作戦』を決行させるつもりでしたからね。

 ですが、その笑顔が凍り付いたことが自分でも分かりました。


 な、なぜ、こ、こいつが、今、現れるのでしょうか。

 こんな大事な日に・・・。

 私は震え始めました。


「グレイ伯爵と言うより、シャウスウッド騎士団団長と言った方が分かるかな。その団長の息子である、ルーカス・シャウスウッドだ。父親について城に良く来ていたから、私やシュナイダーとは幼い時から親しくしている」

 レオ様がその男のことを紹介しました。


「グレイ伯爵家次男、ルーカス・シャウスウッドと申します!!」

 ルーカスはびっくりするくらい大きな声で言うと、なぜか敬礼しました。


 リバーはややびっくりしていたようですが、すぐににっこりと笑って、

「始めまして。リバー・ロクサーヌです。僕とも仲良くしていただけたら、嬉しいです」

 と、挨拶すると、手を差し出しました。

「光栄です!」

 ルーカスがすぐにその手を握り、満面の笑顔で言いました。

「・・・」

 私はその笑顔を見て、体温が下がった気がして、この場から今すぐ逃げ出したいと思いましたが、

「僕の双子の姉、カサンドラです」

 と、リバーが紹介しましたので、私は仕方なく、スカートをつまんで、お辞儀をすると、

「カサンドラと申します」

「始めまして」

 リバーと握手したので、私とも・・・と、思ったのでしょう。ルーカスが手を差し出しました。

 ですが、私は頭を下げたまま・・・。

「レオ様、申し訳ございません。私、体調が優れませんので、部屋に戻りたいのですが、よろしいでしょうか」

「どうした。熱でもあるのか?」

 と、レオ様が言います。

「いえ・・・」

「キャス、本当?!」

 驚いたのはリバーです。さっきまで、レオ様たちの到着を喜々として待っていた姉が、急に体調が優れませんと言い出したのですから。


「ど、どうしたんだろう。さっきまで元気だったのに。何か悪い物でも食べたとか、食べ過ぎ?朝食べたあれが悪かったのかな。あ、でも、あれを食べ過ぎだと思ってたんだけど」

 ・・・うーん。動揺するのは分かりますが、私の体調不良の原因は悪い物を食べたとか、食べ過ぎしか考えられないんでしょうか。確かに以前食べ過ぎで吐きましたけどね。

「そういうわけじゃないけど、大丈夫よ。横になればすぐ良くなるわ」

「確かに顔色が悪いですね。すぐ横になった方がいいですよ」

 と、シュナイダー様が言って下さいます。ありがとうございます!

「じゃあ、そうしようか」

 リバーが私の手を取ろうとしましたが、

「いいのよ。皆様のお相手をしなきゃ」

 私はリバーから離れますと、「本当に申し訳ございません。失礼します」

 レオ様たちに頭を下げると、私は自分の部屋へと向かいました。



 部屋に戻った私は・・・。

「何で来ちゃうわけ?!信じられない!カサンドラとはほとんど関わりないはずでしょう!」

 と、クッションに顔を埋めながら叫びました。ですから、全くクリアには聞こえないと思います。 


 グレイ伯爵家の次男、ルーカス・シャウスウッドは4人目の攻略対象キャラです。

 レオ様が言っていたように、父親が騎士団団長で、自身も将来、騎士を目指しています。

 ゲームではカサンドラと接点はありません。ルーカスはレオ様と親しく、何よりレオ様を崇拝していますが、レオ様はシュナイダー様だけにカサンドラとのことを話していますから、ルーカスはカサンドラを何とも思っていません。そして、カサンドラも伯爵家の次男坊を鼻にすらかけていなかったと思います。

 ですから、私、安心してました。学園に入っても、すれ違うくらいだと。いえ、悪役令嬢の役目を果たすとしたら、すれ違うだけではないでしょうが、いくら何でも、それまでには私の気持ちが落ち着いているはずだろうと思っていたのです。なのに、こんなに早く遭遇してしまうとは。


 なぜ私がルーカス・シャウスウッドと会ってしまったことにここまで動揺しているのかと言いますと・・・。


 私が前世で死んでしまったそもそもの原因である元彼・・・私を騙した男と似ているからなのです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ