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悪役令嬢は忘れた頃にやって来る

 私、カサンドラ・ロクサーヌ、ついこの間、9歳になりました!何だか急に年を取ったような気がします。

 誕生日には豪華なパーティーを開いていただきまして、レオ様やシュナイダー様、サラ様にジャスティン殿下まで来て下さいました!


 その際、サラ様とジャスティン殿下の萌え展開を間近で見ることが出来ました。


 ジャスティン殿下は私たちとお話をして下さる時はにこにこ笑顔なのですが、サラ様が加わるや否や、笑顔が不自然になり、言葉少なになるんですよ!私たちからすれば照れているだけだと分かるのですが、サラ様は自分が入っては邪魔だったのだと思い、輪から外れようとします。ですが、そうなると、ツンデレのジャスティン殿下はサラ様の手を取って、『ここにいなさい』と、ぶっきらぼうに言うのです!それに安堵したサラ様が天使のような笑顔になると、ジャスティン殿下は真っ赤になり、それを知られたくないのか、そっぽを向いてしまいます。そして、またサラ様がしょぼーんとしてしまい・・・。以降、無限ループ状態となります。

 いやー、もー、見てるこっちが恥ずかしくなりますね。でも、レオ様たちと一緒にあたたかーく見守って行きたいです。


 そんなサラ様と私は文通をしています。

 文通するようなお友達が出来るなんて、前世の私からは考えられませんでした。サラ様から誘われた時は嬉しくて泣きました。悪役令嬢としては、人前で度々泣いてはいけないと思いますが、サラ様は3歳年上ですので、残念ながら、私と入れ違いで卒業してしまわれます。と言うことで、ゲームとは全く関わりのない方なので、まあ、良しとしましょう。


 ここだけの話ですが、サラ様の手紙の内容はジャスティン殿下のことばかりです。落ち込んでいたり、悩んでいる文面だとすぐに励ましのお返事をします。私の恋愛経験も大したことはないですが、人生2回目ですので、少しは力になれたらいいなと思います。

 そして、私もシュナイダー様への思いを手紙に綴ります。恥ずかしいですが、周りには相談出来ませんからね。リバーも私がシュナイダー様を好きだとは思いもしないでしょう。双子と言っても、リバーは子供ですからね。ふっ。人の色恋沙汰に敏感だとは思えません。


 もちろん、私、この恋を成就させようなんて、大それたことは思っておりません。

 シュナイダー様は私のことなんて眼中にないでしょうし、そして、何より私は悪役令嬢ですからね。しなくてはならない役目があるのです。

 忘れていたのでは?と、思われていた方もいるかと思います。


 ふふっ。『悪役令嬢は忘れた頃にやって来る作戦』ですよ。


 私、レオ様をいじめてませんし、それによって、シュナイダー様に悪い印象も与えられていないんです。だから、ここは二人同時に悪役令嬢の餌食になってもらいましょう!

 

 レオ様は週に一回必ず我が家に来ます。そして、月に2回、シュナイダー様も連れて来ます。

 あ、そう言えば、リバーとシュナイダー様は、お互い呼び捨てです。羨ましいです!私のことも『キャス』って、呼んでもらえないですかねー。ああ、想像しただけでも倒れそうです。


 ・・・。


 ・・・はっ!い、いけません。本当に倒れそうでした。戻りましょう!

 そうです。必ずおふたりは我が家に来るのです。こんなチャンスを逃すわけにはいきません。


 そこで私、考えました。

 二人同時に屈辱を味わわせてやる方法を。

 考えに考え、前世で見たものも参考にし、思い付いたのが、『落とし穴』です!

 二人を上手く誘導し、落とし穴に落とし、そして、私は二人を見下ろしながら、悪役令嬢らしい高笑いをしてやるのです!

 二人は悔しくて堪らないでしょうね!どちらもプライドが高そうですからね!


 と言うわけで、私、裏庭に穴を掘りました。いやー、大変でした。『落とし穴』を思い付いてから、完成まで半年かかりました。

 庭師さんに花の種を植えたいからと、掘り易くなるようある程度耕してもらってから掘り始めました。

 ここで問題はリバーの存在です。リバーと一緒にいながら穴を掘るなんてことは出来ません。ですから、リバーが領地の子たちと遊んでる時、剣術の訓練をしている時・・・これで確実に2時間は一人になれますので、その間に掘り進めました。

 たった2時間、おまけに毎日出来るわけではない、そして、子供の非力な細腕・・・こんな悪条件の中、半年で完成させた私を褒めて欲しいです!

 

 苦労の末に完成させた『落とし穴』。ふふっ。これでシュナイダー様に嫌われるとしても、二人が穴の中にいる姿を想像するだけで笑いが込み上げて来ます。ふふふっ。


「お嬢様・・・大丈夫ですかね・・・」

「ええ・・・半年も経つのに、芽すら出ない花壇を見て笑ってますもんね・・・」

「でも、とても嬉しそうですね」

「なら、お嬢様が嬉しいならそれでいいのではないでしょうか!」

「そうだ!お嬢様の幸せが何より大事だ!」

「そうですね!これからもお嬢様を見守っていきましょう!」

「お嬢様の幸せの為に!」


「「「お嬢様の幸せの為に!!」」」 


 ・・・なんて風に使用人さんたちが団結を強めていたことには気付きませんでした。





 『落とし穴』・・・多分、どういう結果になるか、予想出来る方は多いかと思いますが、お付き合いしてあげて下さい。



 ちなみに、2時間作業が出来ても、キャスは体力がないので、ほとんど休憩時間に費やされていました。



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