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弟から見た悪役令嬢(リバー視点)



 初の他者視点です。



 これから、どんどん年齢を上げていきたいと思ってます。




 皆さん、こんにちは。リバー・ロクサーヌです。

 早いもので、僕たち双子は8歳になりました。

 姉、カサンドラ・ロクサーヌ、愛称キャスははっきり言って、挙動不審です。しかし、このところ、特技の独り言も鳴りを潜め、落ち着いた日々を過ごしているようです。


 あの失敗だらけだったアンバー公爵家でのガーデンパーティーで知り合ったダンレストン公爵家の令嬢であるサラ様と文通をする仲になったようで、

「サラ様と仲良くなれて良かったね」

 と、僕が言うと、姉はうんうんと頷いて、

「サラ様は3つ年上で、私が入学する時には入れ違いで卒業してるからね」

 はい?

 意味が分かりません。確かに姉は事実を言っていますが、僕が言ったことに対する答えとしては、おかしくないですか?

 僕がその疑問を姉にぶつけると、まあまあと言って、僕の肩をポンと叩いて終わりです。・・・これは今までに何度もあったやりとりで、僕はもうそれ以上何かの答えを姉から求めるのは諦めました。

 あ、そう言えば、姉はサラ様からの手紙を読みながら、『きゃー、モエルー』だの『モエ展開キター』なんて叫んでますが、何が燃えるんでしょうか。意味が分かりませんよね。


 あ、大事なことをひとつお知らせします。

 姉の『ども噛み』ですが、お陰で、緊張している時や初めての方とお話をする時でも出ないようになりました。なぜか、残念に思っている方も一部にいるそうですが、苦手だった『す』をちゃんと言えるようになった姉の喜びようには僕も胸が暖かくなり、自分のことのように嬉しく思いました。


 ただ、困った奴の、あ、失礼しました。あのお方のせいで、『ども噛み』が再発する時があるのです。

 あのお方・・・そう。レオンハルト殿下、レオ様です。

 レオ様は姉に対するスキンシップが過剰で、いきなり抱きついたりするので、驚いた姉が『レ、レオしゃま』と言ってしまうのです。本当に迷惑な人です。


「何をしているんですか!姉から離れて下さい!」

 と、僕は声を上げましたが、

「嫌だ」

 と、レオ様は姉の腰に抱きつきました。

 この男(もう遠慮しません)、信じられません。姉に膝枕をしてもらっているのです。

「キャスも嫌ならちゃんと言いなよ」

 と、僕が責めるように言うと、姉は『分かった』と言うように頷いてから、

「レオ様、その」

 と、言いかけたのですが、

「キャス・・・」

 レオ様が姉を見上げて、「昨日、キャスに会うことが楽しみで、なかなか寝付けなかったのだ。だから、今、眠くて・・・もう少しこのままでいてもらえないか?」

 と、飼い犬が餌をおねだりするように言いました。はっきり言って、僕からすれば気持ち悪いのですが、姉は頬を染めると、

「し、しょうがないでし、ですね。少しだけですよ」

 何故だ?!


 前は姉も『あんのセクハラ(意味が分かりませんが)王子っ』と、怒っていましたが、最近では諦めたのか、今のようにレオ様の我が儘を聞くようになってしまいました。そこは諦めないでよ。もうっ。『可愛くお願いされると断れないのよ、母性本能かしら』じゃないのっ!


 そんな二人ですが、お互い恋愛感情はないようです。レオ様は事情があるらしく、実の妹君とは仲が良くないそうで、その分、姉を可愛がっているのだと思います。ただ過剰な姉へのスキンシップはそれだけが理由ではない気がします。自分でもどうしてそう思うのかは分かりませんが。


 そして、姉の方と言うと、アンバー公爵家のシュナイダーのことが好きなのです。

 シュナイダーと話している時、姉の頬は赤く、瞳は輝いています。それは3年の間、ずっと変わりません。

 僕は、姉の恋心を知って、何だかもやもやして、面白くありませんでした。そんな自分が嫌で、悩んだ僕はそのことを、父、アンドレアスに相談しました。

 父は何故か目に涙を浮かべ、

「父親なんか嫌だ」

 と、言いましたが、僕の頭を撫でて、「大丈夫。そういう気持ちはキャスが好きだからなるんだ。でも、キャスに好きな男がいたとしても、キャスにとって、リバーは違うところでちゃんと一番なんだから、何にも変わらないよ。キャスがずっとリバーのお姉さんであることと同じだ」

「うん、そうだね」

 僕は頷きました。・・・僕はちょっとヤキモチをやいていたようです。

「そう・・・誰を好きになろうが、誰にもキャスは渡さん!」

 父は立ち上って、宣言しました。

「・・・」

 なぜそうなるんですか?


 姉の初恋(多分)相手であるシュナイダーですが、ここ1年くらいでやっと打ち解けて、名前も呼び捨てし合うようになりました。将来、五大公爵として、協力し合わないといけませんからね。これからもたくさんの時間を過ごせたらと思います。ですが、いまだに無表情以外の表情を見たことがありません。何が彼をここまでにしたのでしょうか。

 と、言うわけですので、シュナイダーが姉をどう思っているのかは分かりません。



 レオ様は週に一回は必ず我が家に来ます。そして、シュナイダーも月に2回、レオ様と一緒に来て・・・それが、パターン化して来た頃、また姉の特技である独り言が始まりました。

 おまけに何やら裏庭で作業を始めました。聞いても、花を植えているだけだと言います。

 とても、信じられませんし、また何かやらかすのではないかと少々心配ですが、僕は姉のことが大好きなので、これからも見守っていきたいと思います。


『もし、レオ様と同じ人を好きになったら、リバーはどうする?』

 と、僕に問い掛けた姉はひどく真剣な表情をしていました。


『キャスがいてくれるなら、レオ様に譲ってもいいよ』

 と、僕が冗談めかして言うと、姉は笑いました。


 でも、あまり嬉しくなさそうでした。


 どうしてでしょうか・・・。





 マリアンナ、リバー、レオ様はキャスに対して、漠然とはしてますが、不安を感じています。


 レオ様の過剰なスキンシップはその不安から来ていますので、急に変態になったわけではありません。




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