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萌えることすら出来ません

 炎天下の校庭だったら、倒れてました。と、言っていい程長かったアンバー公爵様の挨拶がやっと終わり、スターブ伯爵様が良く通る声でパーティー開始を宣言しました。


 ようやく始まりました。

 私、胃が空っぽなので、ちょっと何かおなかに入れとこうかなー。と、豪華な料理が並んでいるテーブルに向かおうとしましたが、

「キャス、リバー。初めてなんですから、今日は全ての方にご挨拶しますよ」

 と、母が私とリバーを引っ張って行きます。

 全ての方って、ざっと数えて、100人以上いますよー?挨拶が終わるまで食べられないのでしょうか。ひぇー。


 その後、母は手際良く人を捕まえては、私たちを紹介していきました。


 で、『ども噛み』持ちの私ですが、見事なものでしたよ。

 挨拶した全ての方の前で『ども噛み』してしまいました!


 私が言った言葉・・・。

『はじめまして。カサンドラと申します』

『5歳になります』

『ありがとうございます』

 以上、この3つです。後はリバーにお任せしてました。

 たった3つですよ?なのにっ・・・!

 私、今、気付きました。

 私、『さ行』が苦手で、特に『す』がまともに言えていないのです!

 ですから、『申しまふ』とか『なりましゅ』とか『ございまし』になるんですよ!

 え?!知ってたんですか?!教えて下さいよ!


 散々でしたが、『笑顔でごまかせ作戦』は上手くやったと思います。顔・・・頬の辺りの筋肉がちょっとおかしいなとは思いますが。

「おなか空いたでしょう。何かいただくことにしましょうね」

 と、母が言いましたが、それより喉がカラカラです!何か飲ませて下さい!


 そこへ、

「キャス、リバー」

 レオ様がシュナイダー様と一緒にやって来ます。

 レオ様はマントが纏わり付いて、歩きにくそうにしています。でも、それが何とも可愛いらしいです。

「公爵夫人、キャスとリバーを借りるぞ。構わないか?」

 母は笑ってしまいましたが、

「はい、どうぞ。殿下」

「うむ」

「レオ様、何かご用ですか?」

 と、リバーが聞きますと、

「兄上とサラ嬢が到着した。一番に会わせてやろうと思ったのだ」

 わおっ!噂のお二人にお会い出来るんですね!

「光栄です。ありがとうございます」

 と、リバーが言いましたので、私もこくこくと頷いて、

「レオしゃま、ありがとうございまし」

 すると、レオ様が私の肩に手を置いて、

「キャス。安心しろ。『ども噛み』持ちのことは話しているからな」

「は、はあ・・・」

 レオ様、そんな可哀相な人を見るような目はやめてください!


「カサンドラ様。リバー様。どうぞ」

 シュナイダー様が私たちにジュースが入ったグラスを渡して下さいます。

 私はグラスを受け取りながらも、ぽかんとしていると、

「挨拶続きで喉が渇いたのではと思いまして」

 何と素晴らしい方なのでしょう!

「あ、ありがとうございまし。シュナイダー様」

 私が感激しながら、お礼を言いますと、

「いえ、主催公爵家の一員として、当然のことをしたまでです」

 と、シュナイダー様が答えました。歳ごまかしてませんかー?


 シュナイダー様のお陰で、喉を潤すことが出来た私はレオ様の後について行きます。

 緊張です!レオ様のお兄様と言うことは、王子様ですもんね。レオ様と親しくしているうちにすっかり忘れてました!

 そして、ジャスティン殿下と萌え展開を繰り広げるであろうサラ様ともお会い出来るのです。

 緊張もありますが、期待感ハンパないです。


 ジャスティン殿下は五大公爵様方とお話をしていましたが、私たちに気付いて、こちらにやって来て下さいます。

 その背後から、サラ様が小走りで追いかけて来るのが見えます。待ってあげましょうよっ。ジャスティン殿下!

 私とリバー、シュナイダー様は頭を下げました。

 ジャスティン殿下は立ち止まると、

「顔を上げて、良いよ」

 と、言って下さいましたので、私が顔を上げますと、ジャスティン殿下はにこにこ笑顔でした。

「カーライル家の双子だな。カーライルからも、レオからも良く話は聞いている。レオがそちらに滞在していた際は世話になった」

 ・・・この方がツンデレ?全然見えません。

 レオ様と似ているようで全く違う方です。

 レオ様は元々はあまり笑わないし、一般的でない髪と瞳の色のせいか、やや近寄り難い雰囲気があります。ですが、穏やかに笑い、私たちと同じ金髪(金髪はこの国では全く珍しくないです)のせいか、ジャスティン殿下には親しみを感じます。

 はっきり言わせてもらうと・・・失礼ながら、王族ならではの気品は当然ありますが、レオ様、シュナイダー様に比べると平凡な方です。

 はっ!

 ジャスティン殿下、私なんかがこんな風に思って、ほんとにすみません!レオ様とシュナイダー様が非凡過ぎるのが悪いだけなんですよ!


 そして、お待たせしました。

 ダンレストン公爵家令嬢サラ様のご登場です。

 サラ様は蜂蜜色の髪色に濃いグリーンの瞳をしています。泣いているわけでもないのに、潤んでいる瞳が殿方の保護欲をそそりそうですね。悪役には縁遠いです。ちぇ。ともかく、清楚で可憐な方ですね。

 ファッションチェーックもしましょう!

 サラ様はレモンイエローのドレスです。パフスリーブになっている袖と襟元にはレースがふんだんに使われています。スカート部分はアシンメトリーになっていて、とてもオシャレです。私より大人っぽいドレスですね。

 髪はドレスと同じ色のリボンを使って、アップにしていて、それに小さな白い花を幾つか差しています。


「ジャスティン殿下、サラ様、お会いできて光栄です。カーライル公爵家、リバー・ロクサーヌと申します」

 リバーは堂々とご挨拶しました。

 立派な弟ですね。お姉ちゃんは泣きそうです。いや、リバーがあまりに立派だからだけでなく、緊張のせいで・・・。

 ですが、私もカーライル公爵家の人間として、立派に挨拶しますよ!

「わ、わたくし!」

 と、くわっと口を開けた時・・・。


 ぐーきゅるるるー・・・。


 と、おなかが鳴りました。


 またですか?!確かに胃は空っぽでしたよ?!ですが、こんな時にそれはないでしょうっ!?


 

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