レオ様とシュナイダー様。その2
私とリバーがレオ様とシュナイダー様を捜していると・・・。
「全くカーライルは口うるさい奴だ」
少し扉が開いた部屋からレオ様の声が聞こえて来ました。
「ですが、あれはマナーに反しますよ。カサンドラ様はレディなのですから」
シュナイダー様の声も聞こえます。
レオ様が鼻で笑って、
「レディ・・・あれが」
・・・失礼ですよ。むぅ。
「どう見ても、立派なレディではないですか」
・・・う、嬉しいです。「そして、殿下は紳士なんですから、良く考えて行動しなければなりません」
「お前も口うるさいな・・・」
レオ様は溜め息をついて、「面倒だな。王族も貴族も・・・嫌にならないか?」
「私は祖父のような人間になりたいと思っています。五大公爵を名乗るにふさわしい人間に。ですから、嫌だと思ったことはありません」
シュナイダー様はきっぱりと言いました。
「だからと言って、無表情まで倣う必要はないぞ」
「・・・これが、私の普通です。祖父を倣ったつもりはありません」
レオ様は笑って、
「今、ムッとしたな。シュナイダーもまだまだだな」
「・・・」
「無理をする必要はないぞ。まだ5歳だろ」
「殿下もですよ。・・・そう思うと、カーライル公爵様は厳しいですね」
・・・ですよねー。
それにしましても、男同士の友情を感じますね。ときめきます。
シュナイダー様もレオ様相手だと結構喋るんですね。レオ様が羨ましいです。
「そうだ。まったく。カーライルの奴、私がキャスと一緒にいたいのを邪魔するのだ」
「ですが、あそこまでされるとは・・・もしかして、殿下はカサンドラ様に何かされたのではないですか?」
あっ!何だかやばい流れではないですか?!
「うむ。実は・・・」
さすがにキスのことは知られたくありません!
「レオしゃま!」
私は部屋に飛び込みました。
「キャス。どうしたのだ」
レオ様はびっくりしていますが、隣のシュナイダー様はやっぱり無表情でした。
「さ、捜してたんでしよ!」
「捜して?」
「パーティーが始まるまでレオしゃまと一緒にいたいでしから」
「キャス」
レオ様が笑顔になって、「カーライルはいいのか?」
「大人げにゃいお父様は叱っておいたでし。だから、いいのでし」
「キャスが?カーライルを叱った?」
「はいっ!」
と、私が得意げに返事をすると、レオ様は大笑いして、
「あの『火を吐く竜』と恐れられているカーライルにか。キャスは勇ましいな」
「ひをはく、りゅう?」
人懐っこくお茶目で、双子を溺愛しているお父様が『火を吐く竜』って?
私もリバーもきょとんとしていると、
「五大公爵はそれぞれ役割があるのです。五大公爵はカルゼナール王国内、全てのことに目を光らせ、把握しています。その中で、疑問点があれば、徹底的に追及し、不備や怠慢があれば、容赦なく叱責します。その役目がカーライル公爵様です」
と、シュナイダー様が説明して下さいました。
「カーライルに責められて、いい年をして、泣いた議員や、騎士もいるんだぞ。五大公爵が生まれてから現在まで、カーライルが最も恐れられている公爵なんだ」
レオ様はそう言ってから、楽しげに笑うと、「そのカーライルを叱るとは、『ども噛み』持ちのくせにやるな」
ひぇー。五大公爵としての父は怖いんですね。
「で、でも、父がレオしゃまに厳しいから・・・そにょ」
レオ様は私の傍に来ると、
「私のためにカーライルに言ってくれたのだな。ありがとうな。キャス」
「い、いえ」
「だか、よいのだぞ。それもカーライルの役目だ。カーライルはいつも王城で嫌われ役をしているのだから、キャスやリバーにまで悪く思われたら、可哀相だ。許してやってくれ」
「レオしゃま・・・」
「お二人がカーライル公爵様の癒しなんでしょうね。責める側の方が、辛い時もありますから」
と、シュナイダー様が言いました。
私、人生2回目なのに、5歳の子供に諭されてます。て、言うか、レオ様もシュナイダー様も本当に5歳ですか?
そこへ、ドアがノックされて、
「失礼致します」
父が入って来ました。・・・あ、私、ノックもせずに入ってしまいました。だめですね。
「何だ。カーライル。私に詫びに来たのか?」
レオ様がからかうように言いました。
父は眉をしかめた後、
「私が殿下に詫びることなど何一つございません」
と、言いつつも、私をちらちらと見ています。
お父様は可愛いですね!
なので、水に流すことにしましょう!
「お父様」
私は父の傍に行き、「さっきは小さいなんて言って、ごめんなさい」
父は私と視線を合わせるようにしゃがむと、
「いいんだよ。キャス」
私はにっこり笑って、
「『火を吐く竜』の時のお父様を見てみたいです」
けして、嫌味ではないですよ?働くお父様を見たいと思っただけです。
ですが、父は唖然とした後、青くなると、
「あんな姿見せられるわけがないっ!」
と、嘆くように言うと、レオ様に向かって、「殿下!余計なことをおっしゃらないで下さい!」
「カーライルは立派に嫌われ役をやってると教えただけだ」
「それが余計な、」
「お父様」
私はそれを遮るように父を呼ぶと、「私とリバーはどんなお父様でも嫌いになりませんよ。大好きなお父様ですもの」
「うん」
リバーも頷きました。
すると・・・。
「キャス!リバー!」
感極まった父が私とリバーを抱きしめました。そして、更に私の頬にキスしました。
ぎゃあ!人前ですよ?!
まあ、私は恥ずかしいですが、微笑ましい光景に見えますよね。
ところが。
「カーライル公爵様。お邪魔して、大変申し訳ないのですが、カサンドラ様の髪が非常に乱れてしまいましたが、よろしいのでしょうか?」
シュナイダー様は冷静に突っ込みました。
「あっ!まずい!」
父が私を慌てて離します。
ですが、綺麗に編み上げていた私の髪は、差していた花が潰れたこともあり、見るも無残な有様で・・・。
「酷いな!奥方に叱られるぞ!」
レオ様は大笑いしました。
「ひっ」
父は『奥方』を聞いた途端、震え上がりました。
『火を吐く竜』にも怖いものがあるんですね。




