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王子様は理解不能です

 3日ほどの滞在予定だったレオ様ですが、もう1日、また1日と延びてゆき、結局、カーライル公爵家に一週間滞在しました。

 他では一泊しただけだそうなので、ずいぶんと長い滞在となりました。

 多分、正体を早々にばらしたので気が楽になったことと、私たち双子がいい遊び相手になったからでしょう。

 それに、他の五大公爵家とは違い、カーライル公爵家は王都から離れた・・・・言わば、自然の多い田舎にあります。それもレオ様にとっては魅力に感じたのだと思います。


 一週間のうち、毎日必ずレオ様はリバーと我が国の政治や貿易、環境問題などについて、議論を交わしていました。剣術の稽古の相手にもなり、おまけに身分を隠したまま、領地の子供たちと遊んだりしていました。その間、私はぼっちでしたが、戻ってくれば、お詫びと称して、花の冠を作ってくれたり、めだかさんの絵を描いてくれました。

 レオ様は何でも上手なんです。

 ちなみにリバーと私は絵が苦手で、双子がめだかさんを描いた絵をレオ様は見た途端、おなかを抱えて、大笑いしました。・・・笑われることに慣れてないリバーがちょっと可哀相でした。レオ様は全く遠慮がありません。


 一日、雨の日があって、図書室で本を読んでいたら、眠くなったので、私の部屋のベッドでレオ様と一緒に寝たのですが、その夜、父に叱られました。5歳同士で何があると言うのでしょう。父は本当に心配性です。


 レオ様が王城に帰る前の夜になると、寂しくて仕方ありませんでしたが、ベッドに入るとすぐに寝てしまいました。そんなものです。5歳では睡魔の方が勝るのです。


 しかし、翌朝、王城に行く父と共にレオ様が出発する時が来てしまうと、

「レオしゃま。レオしゃま。やですー。もっと居てくださいー」

 レオ様にもう少し居て欲しいとお願いする私の目からは涙が溢れてしまっています。

 レオ様は私がこの世界で出来た初めてのお友達なのですが、それだけではありません。前世でぼっちだった私です。もちろん、お友達はいませんでした。ですから、レオ様は特別なのです。重いと思われても、どうしようもないのです。レオ様は同じ気持ちではないでしょうが、それでもなんです。

 レオ様が困った顔をしているので、せめて泣き止みたいですが、忌ま忌ましいこの涙。止まらないのです。


「キャス。泣くな。また来ると言っただろう」

 レオ様がそう優しく言いながら、頭をなでなでしてくれますが、余計に涙が出てきます。

 いっそのこと、いつもみたいにからかうか、馬鹿にして、笑って欲しいです!


「キャス。泣き止んで、ちゃんとお見送りをしなさい。殿下が帰れないでしょう」

 と、母が言いました。

 確かにこのままでは父の仕事にも影響します。ここは我慢するしかありません。

「ふぁい・・」

 私は一歩下がりました。さあ。どうぞ行ってください。と、言う意味に取って下さい。


「じゃあな」

 と、レオ様は言って、手を振ると父に続いて、馬車に乗ろうとしましたが、足を止め、「リバー」

「はい」

「お前との議論はとても有意義だった。剣術も負けぬよう励むぞ。どちらの相手もまた頼むな」

「はい。喜んで」

 ちなみに剣術はほぼ互角だそうです。

「お前のお陰で民と接することが出来た。感謝する」

 殿下が平民と過ごすことは滅多にありません。貴重な経験だったのでしょう。


「さて。キャス」

 レオ様がからかうような笑みを浮かべて、「次に会う時はちゃんと私の名を言えるようにな」

 言えます!私はつんと顎を上げ(悪役令嬢っぽいです)、

「レオンハルト殿下」

 おお!言えました!

 レオ様はやや驚いた顔をしましたが、

「じゃあ、レオで」

 うっ!そ、それは・・・。

「ほら、言ってみろ」

 言ってやりますとも。ええいっ!

「レ、レオしゃま」

 ・・・だから、愛称呼びはハードル高いんです!


 レオ様は笑って、

「キャスはおかしな奴だな」

 おかしくなりたくてなってるんじゃありません!

 いまだ泣いてるせいで反論出来ずにいると、

「キャス。涙を止めてやるぞ」

 と、レオ様が言いました。

 ・・・?王子様だと12歳にならなくても魔法使っていいんですか?なんて私が思っていると、ふいにあのガラス玉のような瞳が目の前にあって・・・。


「あああっ?!」

 父が今まで聞いたことのない素っ頓狂な声を上げました。


 私、王子様にキスされました。


 おまけに唇同士です。ぶちゅーっ。と、されました。長すぎて息が出来ませんでした。


 硬直したままの私、リバー、母、使用人さんたちを残して、レオ様が乗った馬車は行ってしまいました。


 ええ、もちろん涙は止まりましたよ。


 でも。


 王子様は理解不能です!!




 馬車にて。

「カーライル。何をふて腐れているのだ。失礼だぞ」

 と、まだ短い足を何とか組みながら、レオ様は言いました。

「目の前で娘のファーストキスを奪っておいて、良くそんなことが言えますね!」

 父はそう言ってから、当てつけのように長い足を組みます。

 レオ様はそんな当てつけにも気付かず、

「あれは別れの挨拶と、ほら、涙も止まったようだったぞ」

「そんなのほっぺで十分ですよ!」

 レオ様はふと首を傾げた後、

「口にキスしたいと言う気持ちになったのだ。仕方ないだろう」

 父はイラッとして、

「子供が言う台詞かっ」

 と、レオ様に聞こえないように言いました。


「しかし、キスは私も初めてだったが、やや息苦しいものだな。こういうものなのか?」

「そういうものです。ですから、もうされない方がよろしいかと。それこそ結婚される方だけにして下さい」

 レオ様は眉を寄せると、

「私がキャスとベッドに寝てた時もそう言ってたな」

「ええ。キスも同じベッドで寝るのも、結婚された方だけです。そういうものなんです」

「・・・」

 レオ様はしばらく考えて、「カーライル。キャスが勘違いするといけないから、結婚はしないと伝えておけ」

 怒っていいのか喜んでいいのか・・・なんて、父は思いつつ・・・。

「かしこまりました。王城に着き次第、私の鳥を飛ばします(魔法で作った伝書鳩のようなもの)。カーライル家にとって、朗報になります」

「ん?なぜ朗報だ?」

「失礼致しました。言い間違いです」

 父は素知らぬ顔をしました。




 キスをされたショックから、立ち直った頃・・・私、ようやく気付きました。レオ様に対して、悪役令嬢らしいことを何一つしていないことに。


 ですが、ゲームと同じでレオ様は誰とも婚約しませんでした。何も予定通りに行かないので、ちょっと心配でしたが、これで何の足枷もなくレオ様はヒロインと恋愛できます。


 もちろん、悪役令嬢として、邪魔してやりますけどねっ!





 何と、キスさせちゃいました。

 唇同士か頬かで、ずいぶん悩みました。

 ちょっと違うんじゃ・・・と、思う方もいらっしゃると思います。

 もっとほのぼのとした感じが良かったのですが、作者の力不足ですね。



 キスしちゃったレオ様ですが、キャスに恋愛感情は本当にありません。

 そろそろキャスにも恋をさせたいです。




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