応援します!
私は王室付きの魔術師になりたいと思った理由を熱心に語るローズマリー様のより一層輝く黒い瞳を見つめていましたが、我に返ると、
「その思いを弟に話したのですか?知っていたら、弟もあんなに失礼なことは言わないと思うのですが・・・」
「詳しくは話していませんが、分かってらっしゃるとは思います」
何ですと?!なのに、リバーったら、あんなことを言ったんですか?!お姉ちゃん、叱ってやりましょうか?!
「ですが、私は考えが甘かったのです。何を言われても、仕方なかったのです」
と、ローズマリー様はそう言って、目を伏せました。
ローズマリー様がリバーとシュナイダー様に王室付きの魔術師について相談した日から、一週間後、魔法の実技試験が行われました。
「私は光の攻撃魔法を得意としています」
「『光の矢』ですね!あれ、カッコイイですね!」
見ましたよ!実際に矢を射る動作をするのが他の術とは違うんですよね!本当にカッコイイんですよ!
私も光の属性を持っているのに・・・出来ないなんて、残念でなりません!
ローズマリー様ははしゃぐ私を見て、微笑みましたが、すぐに笑みを消すと、
「先生にはこの時期に『光の矢』を習得した生徒はほとんどいないと聞いていたので、自信を持っていたのですが・・・思い上がりでした。レオンハルト様、リバー様、シュナイダー様は遥かに次元が違っていたのです」
実技試験と言うと、入学してから、初めて行われましたので、メグは何とか倒せたけど、必死過ぎて、何が何だか分からないうちに終わったと言ってました。多分、そんな生徒さんばかりだったと思われますが、レオ様、リバー、シュナイダー様は一瞬のうちに魔物を消してしまったそうです。その場にいた生徒さんは今、何したの?なんて状態だったそうです。
ちなみにレオ様は雷、リバーは火、シュナイダー様は氷の術だったそうです。・・・見たかったです!
それから、順位発表後、ローズマリー様はリバーとシュナイダー様とお話したいとリバーたちの教室に来ていたことがありましたが、その日のお茶の時間の話です。
『ローズは女子生徒だけで見れば、学力3位で魔法は1位。学力は3位と言っても、1位とほぼ差がないし、900点を超えているから、問題ないけど、魔法について言えば、平凡な点だね。実技試験を見ていたけど、発動まで時間がかかり過ぎるし、命中率も低い。状況判断も出来てない。実技試験は術が自由に選べるから、ローズの勝手と言えば、勝手だけど、光の矢にこだわり過ぎなんじゃない?どんなに強力な魔法も実戦で使えなきゃ意味がないよね?試験は得意な術を披露する場所じゃないよね?そんなことくらい分かってると思ったんだけどな。・・・多分、この平凡な点数は実技試験が足を引っ張った結果だろうね。このままじゃ、王室付きの魔術師なんて、到底、無理だよ』
と、リバーは言いました。
更にシュナイダー様も、
『王室付きの魔術師の採用試験は学園在学中の成績も多少参考にされます。ローズさんの魔法は800点を少し超えたくらいでしたよね?過去、900点を超えていなくても、採用された方はいますが、やはり物足りない点数ですね。2年生からは評価が厳しくなりますが、それでも、もう50点は上げなくてはいけないと思いますよ。かなりの努力が必要となるでしょう。まずはご自分と私たちのどこが違っていたか、良く考えて下さい。血筋の違いなんて言わないで下さいね。全属性持ちで魔女の子孫のローズさんの方がリバーよりもずっと優れているんですから』
『まあ、僕はそれを言い訳にはしたくないけどさ。あ、そう言えば、僕の魔法、どこがマイナスになったんだろうなー。悔しいよなー』
『リバーはやや攻撃に重点を置き過ぎなのでは?』
『シュナイダーは慎重過ぎるんだよ。魔法攻撃力を上げて、一気に叩けばいいじゃないか』
『さすがカーライル家の人間らしい戦法ですが、その戦法は雑魚相手なら通用しますが、防御もしないと後々苦労しますよ?』
『けどさー、シュナイダーは相手に合わせて、戦法を変えるのはいいけど、雑魚相手に深読みし過ぎじゃない?』
『私は貴方のようにいくらでも際限なく、術を繰り出すことは出来ませんから。ですが、リバーは無駄に炎を放ち過ぎでは?』
『派手でいいでしょ?』
『良くありません』
それから、二人はローズマリー様そっちのけで議論を始めてしまい・・・。
「私は存在を忘れられてしまったようです」
ローズマリー様は溜め息をつきました。
私はつい笑ってしまうと、
「リバーもシュナイダー様もやっぱり男の子ですよね」
女子生徒さんは実技試験の感想をただただ魔物が気持ち悪くて、怖かったとしか言いませんが、男子生徒さんは魔法で敵を倒すこと自体にとても興奮してしまうのです。試験期間が終わってもしばらくは実技試験について、熱く議論を交わす男子生徒さんが多々いました。
・・・レオ様は私が話を聞いても、これと言って、興奮した様子はありませんでしたし、試験の出来もまあまあとしか言いませんでした。レオ様はクールですね。
ローズマリー様も笑うと、
「普段はおとなしいアーロンも興奮していましたね」
「ああ!アーロンったら、歴史の時間の後なのに珍しく歴史の話ではなく、実技試験の話ばかりしてましたよ!」
それから、私とローズマリー様は笑っていましたが、ローズマリー様がふと笑うのを止めて、
「実はアーロンには私が王室付きの魔術師を目指していることはまだ話していないんです」
「え、そうなんですか?」
「アーロンは今だに迷っているみたいなんです。そんな時に私が目指していると知ったら、なら、自分はやめると言い出しかねませんから」
「そうなんですか・・・アーロンはまだ迷ってるんですか・・・」
「ですから、折を見て、話したいと思ってるんです」
「分かりました!このことは黙ってますね!」
ローズマリー様はお願いしますと言うように頭を下げると、
「あ、あの・・・ロクサーヌ様」
「はい?」
「私、ロクサーヌ様のこと、応援しています。ロクサーヌ様の目標は未だ誰も達成したことがない未知の物ですから、私なんかよりずっと大変だと思います」
「ヒューバート様・・・」
「貴族令嬢である私は他の方々とは違う道を選ぶことにしました。母や祖母は多分反対すると思います。不安ではないと言ったら嘘になります。ですから、ロクサーヌ様の目標を知った時、私だけではない、私も頑張らなくてはと思ったのです。ロクサーヌ様に勇気をもらいました」
「・・・」
ローズマリー様・・・。こんな私なんかに勇気をもらったなんて・・・。
ローズマリー様はにっこり笑って、
「私も頑張りますから、ロクサーヌ様も頑張って下さい。無理だと思っているリバー様やレオンハルト様を見返して下さい。私も女性でも出来るんだと皆に思わせたいです」
「ヒューバート様!」
感激した私はローズマリー様の手を握りました。
「え」
ローズマリー様が目を丸くさせます
「お互い頑張りましょう!女の底力を見せるのです!」
「はっ、はい!」
私は大きく頷きますと、
「では、私はこれで失礼します!お茶、ありがとうございました!私、これから、イメージトレーニングをすることにしますから!それでは、また明日!」
私はガバーッと頭を下げますと、ローズマリー様の部屋を出て行きました。
ローズマリー様は首を傾げて、
「いめ、とれ・・・?何かしら・・・?」
と、呟きました。
ローズマリー様は王室付きの魔術師を目指しています。
私はローズマリー様が学園卒業後にレオ様のお妃様になるのは決まっているものと思っていましたが、私と同じ様に目標があるローズマリー様を私も応援します!
それにローズマリー様が魔術師として、功績を上げることが出来たら、レオ様のお妃様として更に認められやすくなるかもしれませんからね!
終わり良ければ、全て良しです!
私も負けないように頑張ります!




