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順位発表

 翌日。2時限目が終わり、私とルークが教室に戻っていると廊下の掲示板の前に人だかりが出来ていました。

「もしかして、順位が張り出されたのかしら?」

 と、私が言いますと、ルークが背伸びをして、

「あー、そうみたいですねー」

「早速、見に行きましょう!」

 私が張り切って、そう言うと、ルークが首を傾げて、

「カサンドラ様も自信があるんですか?」

「私のことなんかどうでもいいのよ!リバーよ!リバー!」

 私の自慢の弟の順位はどうなってるんでしょうか?!


 学力と魔法の総合順位が発表されました!

 魔法学園では年に2回、前期と後期に分かれ、試験が行われます。

 学力と魔法共に千点満点で学力は筆記試験のみの点数ですが、魔法は実技試験の点数(300点満点)と、授業時に新しい術を習得する度に先生の前で披露することになっていますので、その完成度等を先生が評価して出した点数(700点満点)を合わせます。

 生徒それぞれ選択科目が違いますから、なかなか複雑な採点方式になっているそうです。

 ところで、入学後、初めて発表された総合順位がどうなっているかと言いますと、


 学力。

 1位、シュナイダー様、995点。

 2位、レオ様、986点。

 3位、リバー、985点。


 魔法。

 1位、レオ様、998点。

 2位、リバー、994点。

 3位、シュナイダー様、989点。



 と、なりました!


「・・・」

 皆様がどうぞと道を開けて下さいましたので、私、掲示板の真ん前にいます。

「うわー。殿下もリバーもシュナイダーも凄いなあ・・・ねえ、カサンドラ様・・・」

 と、ルークはそう言いながら、隣の私に顔を向けましたが、ギョッとして、「カサンドラ様、どうしたんですか?!何、泣いてるんですか?!」

 私、号泣しています!!

「ううっ・・・だ、だって、リバーが・・・リバーがこんな凄い点数を取るなんて、私、嬉しくて・・・うっ。うっ。こんなに立派になって・・・ううっ」

 さすがは私の自慢の弟です!素晴らしいです!感激です!

「だからって、そんなに泣かないで下さいよ」

 ルークが呆れて言いました。

「うーっ」

「とりあえず、皆さんの邪魔になりますから、ここから離れましょう」

「ふぁい・・・」


「あら。キャス。貴女、一体どうしたの?」

 人の間を縫って、何とか掲示板の前から私とルークが離れると、丁度、メグがやって来ました。

「メグ!見て下さい!」

 私は涙も拭わずに、掲示板を指差しますと、「リバーが、私の可愛い弟が凄いんですよ!」

 メグは掲示板に顔を向けると、

「ええ。私はもう見てるわ。リバー様もレオンハルト殿下もシュナイダー様も凄いわね。魔法で900点を超えてるのは3人だけですものね」

 ちなみに学力で900点超えは他に何人かいらっしゃいます。

 それにしましても、リバーもレオ様もシュナイダー様も本当に凄いですね!

 今後はこの3人でトップ争いをするのでしょうね!

 もちろん、お姉ちゃんはリバーを応援します!レオ様、シュナイダー様、申し訳ありません!

 

 ところで、発表されるのは50位までです。

 そして、この私はと言いますと、何と魔法の順位はないんです!順位なしです!

 何故なら、治癒魔法しか出来ず、実技試験もないので、私はどう足掻いても、ぶっちぎりの最下位になってしまうからです!

 先生方の協議の結果、順位をつけるのはやめてあげようと言う事になったそうです。

 仕方のないことですが、私、何だか泣きたくなります・・・。


「とりあえず、キャスは涙を拭いなさい。みっともないわよ」

「ふぁい・・・」

 私はハンカチを出すと、涙を拭きました。・・・感激の涙だけではないような気がします。はぁ。

「そろそろ、昼にしませんかー?」

 ルークがおなかをさすりながら、「腹ぺこです」

「そうね。裏庭に行きましょうか」

「はい」

 私、メグ、ルークの3人は教室に戻ろうと、歩き始めましたが、「あれ・・・」

 私は足を止めました。

「カサンドラ様?どうしたんですか?」

「ローズマリー様が・・・」

 私の視線の先にはローズマリー様がいます。

「あら・・・どうしたのかしら・・・」

 と、メグが呟きましたので、私は頷きますと、

「ええ・・・どうしたんでしょう?」


 ローズマリー様は掲示板の順位表を見つめていました。

 そのローズマリー様の表情は私やメグが戸惑うくらい、厳しいものだったのです。



 ランチを終え、私たちが教室に戻ろうとしていると、

「リバー!」

 リバーがレオ様、シュナイダー様と一緒に前を歩いていました。

 リバーが振り返って、

「あ、キャス」

「リバー!会いたかったです!」

 私は走って行くと、リバーに抱きつきました。

 リバーはびっくりして、

「ど、どうしたの?!」

 私はリバーから少し離れながら、リバーの両肩に手を置くと、

「順位表、見た?!」

「え?・・・ああ。見たよ」

「リバー、頑張ったね!」

 私がそう言って、リバーの頭をなでなでしようとしましたが、リバーはその手を止めて、

「恥ずかしいからやめて」

「えー・・・」

 恥ずかしがることなんかないのに!


 私がむくれていると、 

「リバー。カサンドラ様、掲示板の前で号泣してたんだよ」

 と、ルークが言いました。

 リバーが苦笑いして、

「聞いてる。もー、恥ずかしいなー。泣く程のことじゃないだろう」

 と、言うと、私の頭を撫でました。自分がする分にはいいんですか?変な弟ですね。

 私は赤くなりつつも、

「だ、だって、感激しちゃったんだもの」

 リバーはレオ様とシュナイダー様を見ると、

「魔法1位と学力1位の方が凄いよ?」

 と、言いましたので、

「殿下ー!」

 ルークが私とリバーを押し退けるようにして、レオ様の前に行くと、「ほんっとうに素晴らしいです!自分、殿下に一生ついていきますっ!」

 ルークもレオ様に抱きつきそうな勢いです。ルークも私に負けず劣らず、大袈裟ですねー。


 レオ様は眉をしかめつつ、

「・・・ああ。ありがとう」

 と、お礼を言いましたが、顔を横に向けると、「・・・だが、ちょっと、顔が近いな」

「失礼しましたー!」

 ルークはがばーっと頭を下げました。

 ぎゃあっ!ルーク!危うくレオ様に頭突きするところでしたよ?!

 顔を横に向けていたにも係わらず、反射的に後ろに引いたレオ様は、

「だから、近い!」

「申し訳ありません!」

「だから、そんな近くで頭を下げるな!危ないだろう!」

「も・・・」

「謝らなくていい!頭も下げるな!」

「はいっ!」

「・・・ルークったら・・・」

 困った人ですねえ。まるでコントを見てるようです。


 すると、シュナイダー様が私の隣で震えていました。レオ様とルークのコントがツボに入ったようです。

「・・・」

 可笑しいなら、思い切り笑ったらいいのに・・・。

 私がそんなことを思いながら、シュナイダー様を見ていると、シュナイダー様は私が自分を見ていることに気付いて、

「も、申し訳ありません」

 何とか笑いを堪えながら言いました。

 私は首を傾げて、

「どうして、謝るんですか?可笑しいなら、笑っていいんですよ?」

 シュナイダー様は右手で口を覆いながら、

「そ、その・・・笑った顔が変ではないかと・・・」

 変?!シュナイダー様ったら、何を言ってるんでしょう!

「変だなんてこと全くありませんよ!シュナイダー様の笑った顔、素敵ですよ!私、もっと見たいです!」

 シュナイダー様は無表情に見えて、嬉しい時、楽しい時、悲しい時、苦しい時・・・どことなく違うんですよね。どう違うのかは上手く説明出来ませんが、ともかく違うのです!

 ですから、無理をして表情に出す必要はないのですが、やっぱり、笑いたいなら、思い切り笑って欲しいのです!


「す、素敵は言い過ぎです」

 シュナイダー様は今度は顔全体を右手で覆い隠しました。・・・ですが、隠せていない部分が赤くなっています。照れているようです!

「言い過ぎなんかじゃなく、本当のことですよー」

「なら・・・」

 シュナイダー様は顔を隠すのをやめると、「カサンドラ様が見たいと思って下さるのなら・・・努力します」

 と、言って、私を真っ直ぐ見つめました。

「え・・・」

 私はシュナイダー様の言葉と眼差しに戸惑ってしまいました。


 すると、

「レオ様。ぼんやりされてますが、どうかされましたか?」

 と、リバーが言いました。その声はいやに響きました。


 私がそれを聞いて、レオ様に顔を向けると、目が合いました。

 ですが、レオ様はすぐに顔を背けて、

「・・・何でもない。先に教室に戻るから」

 と、言って、足早に行ってしまいました。

「・・・?」

 どうしたんでしょう?闇の力のせいでしょうか?今日はまだ攻撃魔法の授業はないはずですが・・・。

 ふと、リバーを見ると、リバーは教室に向かうレオ様の背を見つめていました。

「リバー?レオ様、どうかしたの?」

 と、私が聞きますと、リバーは振り返って、

「まさかと思ったんだけど・・・なるほどね」

 と、言うと、私の頭をなでなでしました。・・・ん?


 それから、私たちは教室に戻ることにして、

「リバー、早速、お父様とお母様に試験の結果を知らせなきゃね!きっと、喜ぶわよ!」

 と、私は言いましたが、

「・・・」

 リバーは首を振ると、「いや。いいよ。どうせ分かることだし・・・」

「でも・・・」

「それに僕は全然満足してないし、わざわざ知らせたいとは思わない」

 リバーはやや不機嫌そうに言いました。

「え・・・」

 あんな凄い点数を取ったのに?!満足してない?!

 私は信じられませんでした。


 リバーたちの教室の前まで来たところで、

「こんにちは」

 ドアの側に立っていたローズマリー様がお辞儀をしました。

「やあ。どうしたの?」

 と、リバーが言うと、

「リバー様とシュナイダー様とお話出来たらと思いまして、お待ちしていたんです。どうかお時間をいただけませんでしょうか」

 と、言ったローズマリー様の表情はやや強張っています。

 リバーはシュナイダー様と顔を見合わせてから、

「いいよ。お茶の時間でいい?」

「はい。ありがとうございます」

 ローズマリー様は頭を下げると、行ってしまいました。


「ローズマリー様、何かあったの?・・・そう言えば、順位表を見てた表情も厳しかったけど・・・」

 と、私が言うと、

「ローズも満足してないんだろうね」

 と、リバーは言いました。

「そうなんですか?ローズマリーさんは学力は900点を超えているし、魔法は女子生徒の中では一番でしたよ?」

 と、メグが言うと、

「女子生徒の中で全属性持ちは彼女だけですよ。一番を取るのは当然のことでしょう」

 と、シュナイダー様はやや素っ気なくそう言うと、私たちに向かって、頭を下げてから、教室の中に入って行きました。

 リバーは苦笑いしましたが、

「じゃあ。またね。・・・キャス。本当にお父様とお母様には知らせなくていいからね」

 と、言って、手を振ると、教室に入って行きました。


「あれで満足してないなんて・・・」

 もしかして、リバーもローズマリー様も千点満点を目指してたんでしょうか?!



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