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キャスが進む道

 ローズマリー様がレオ様を諦めると言いました!

 確かにゲームでは良くある展開なんです。何故そうなるかと言いますと、カサンドラやその取り巻きが『レオンハルト様のことは諦めろ!』とか、『子爵令嬢のくせに!』とか、『泥棒猫!』とかって、ローズマリー様を散々罵るからなんですよね。

 ですが、私はもちろんそんなことはしておりませんし、リバーやシュナイダー様、そして、失礼ながら、ややおかしい思考をお持ちのリバー派閥の方のお陰でそんなイベントはもちろん起こっておりません。

 なのに、何故、ローズマリー様はレオ様を諦めるなんて言うんでしょうか!さっぱり意味が分かりません!


 も、もしかして、私が悪役令嬢の役目を何一つ果たせていないせいなんでしょうか・・・。


 私は悩んでおりましたが、放課後になりました。スターリング先生にせっかく時間を作っていただいたので、いつまでも、自分の世界に入っているわけにはいきません!

「スターリング先生のところへ?じゃあ、図書室はどうする?」

 と、メグは聞きました。

「そんなに時間がかかることじゃないですから、ルークと2人で待っていて下さい。2人に相談したいことが出来ましたので」

「相談?」

 メグは首を傾げましたが、「分かったわ。あ、じゃあ、ルーク、私、部屋に本を取りに一旦、戻るから。返却しなきゃいけないのに、忘れちゃったのよ。キャスを送ったら、先に図書室に行ってちょうだいね」

「じゃあ、自分も寮までご一緒しますよ。一人で図書室に行っても仕方ないですし」

「あら。寮の中まで行くわけじゃないのに」

 ルークは赤くなると、

「当然でしょう!」

「まあ、ルークはそんなことで赤くなるのね。私が読んできた小説にはそんな人物いなかったわ。あ、でも、あの伯爵は・・・」

「メグさん!いちいち、小説の登場人物と比べるのはやめて下さい!」

 私はルークとメグのやり取りを聞いていましたが、

「私、そろそろスターリング先生のところに行かないといけませんから、後は二人で遊んでて下さい」

 と、言いますと、ルークとメグは私をジロッと見て、

「「遊んでてとは何ですか?!」」

 おー。ピッタリですねー。最近、ルークとメグは仲良しです。私、ちょっと疎外感を感じることがあります。ちぇ。


 いつの間にか、『ルークさん』が『ルーク』に、『マーガレット様』が『メグさん』になってますからね。

 ルークは妹さんが3人いますので、レオ様と違って、女性に対して、苦手意識がありませんし、仲良くすることにも抵抗がないのでしょうね。

 でも、メグの方が意外ですよね。とっつきにくい方かなと思ってましたから、ルークとここまで親しくなれるとは思ってませんでした。

 ルークがメグを『メグさん』と呼ぶようになったことに気付いた私が、ルークに『そろそろキャスって呼んで下さい』と、お願いましたが、ルークは何故か焦ったように『カサンドラ様は永久にカサンドラ様ですから!』と、言いました。意味が分かりません。


 私とルーク、メグが教室を出ようとして、丁度、レオ様とローズマリー様とかち合いました。

「ヒューバート様。先程はありがとうございました」

 と、私が頭を下げますと、

「こちらこそありがとうございました。お話出来て良かったです」

 と、ローズマリー様も頭を下げました。

「では、また明日」

 私はさっさと行こうとしましたが、

「おい。私を無視してないか?」

 と、レオ様はむっとして言いました。

 ええ!無視したいですよ!レオ様がはっきりしないから、ローズマリー様がレオ様を諦めるなんて言うんじゃないですか!

「レオ様だって、朝から私を無視したじゃないですか」

 と、私が言い返しますと、レオ様は私を睨みましたが、

「話がある。来い」

 と、言って、私の腕を引っ張ります。

「ちょっ」

「あ、ローズマリー。教室で待っていてくれ」

「はい」

 ローズマリー様が答えます。

「レオ様!離して下さいー!」

 このへっぽこ王子ー!誰のせいで悩んでいると思っているんですかー!へっぽこにへっぽこ言われて、ザマーミロです!


 私がスターリング先生に用事があることを言いますと、レオ様は歩きながら話をする。と、言いました。

「話って、何ですか?」

 私がそっぽを向きながらそう言いますと、

「わ、悪かったよ」

 ぬ?

 私はレオ様を見て、

「い、今、謝ったのですか?」

「わ、悪いか」

「い、いえ・・・」

「その、戸惑っただけだ。キャスがアーロンを好きだと言ったから」

「は?あ、いや、違いますよ。私とアーロンは本当にただのお友達ですよ」

 と、私が言いますと、レオ様は頷いて、

「そうだよな。分かっている。ただ、キャスはシュナイダーを好きなはずなのに、アーロンを好きだと言ったから、驚いてしまったんだ」

「は?」

 シュナイダー様を好きな『はず』?「あ、あの、レオ様、シュナイダー様・・・」

 と、私が言いかけたところへ、

「キャス」

 リバーがやって来ました!

「リバー!」

 お姉ちゃん、会いたかったです!リバーの派閥の方々がちょっとおかしいんです!何とかして下さい!


 リバーは眉を上げて、

「2人で何を?」

 と、まるでレオ様を咎めるような口調で言いました。

 リバー、レオ様を睨んではいけませんよ!

 レオ様はムッとして、

「何って、ただ話をしていただけだろう。何が悪いんだ?・・・リバー、いい加減、姉離れをしたらどうだ?」

 リバーはにっこり笑って、

「貴方への忠誠の誓いを取り下げることはあっても、姉離れをすることはありません」

 ひぃっ!

 レオ様はお綺麗な顔を引きつらせると、

「相変わらず、いい根性をしているな」

「これくらいではないと五大公爵は務まらないでしょう?むしろ、喜んで下さるべきではないかと思いますが?」

「カーライルに似て来たな。忌ま忌ましい」

「褒め言葉として、受け取りますよ」

 二人は睨み合ってます。な、何をやってるんですか!


 私が困っていますと、

「カサンドラ様。今、スターリング先生とすれ違いましたよ。早く行かなくていいのですか?」

 シュナイダー様が現れて言いました。

 いいところに来てくれました!

「シュナイダー様!このお馬鹿さん2人を何とかして下さい!お願いしますね!」

 私はシュナイダー様にリバーとレオ様を押し付けると、スターリング先生の元へ急ぎました。


「このお馬鹿さんって・・・」

「キャスにだけは言われたくない・・・」

 と、レオ様とリバーは言いましたが、

「シュナイダー。キャスって、スターリング先生に何か用事?」

 と、リバーが聞きますと、

「何か・・・大事なお話があるそうですよ。おや。知らないんですか?」

 と、シュナイダー様が意味ありげに言います。

「知るわけない・・・って、シュナイダーは知ってるの?」

「さあ。どうでしょうか」

 と、シュナイダー様は言いますと、さっさと歩いて行きます。

 リバーとレオ様は顔を見合わせますと、

「「おい!シュナイダー!」」

 慌てて、シュナイダー様の後を追いかけました。



 そして、私の方は・・・。


 シュナイダー様にお話したことをスターリング先生にもお話しました。

「ですから、勝手だとは思うのですが、解毒魔法を早めに教えていただけないかと思いまして・・・もちろん、すぐに母のようになれるとは思っていません。私の研究には解毒魔法の仕組みも良く理解しておく必要があると思うのです。初歩的なものでかまいませんから、何とかお願い出来ませんでしょうか。解毒魔法は食中毒にも有効だと聞きましたが、私は子供の頃に食べ過ぎで胃の中の物を戻したことがありました。その時、母が魔法で楽にしてくれましたが、食べ過ぎは食中毒とは違うでしょう?実は母も無理かもしれないけど、試しにかけてみたのだと言っていたんです」

 スターリング先生は頷いて、

「それなら、消化器系の病気が原因の吐き気にも有効ではないかと考えたのですね」

「はい!」

「なるほど・・・」

「・・・先生はどう思いますか?」

「そうね・・・」

 スターリング先生は考え込みます。

「か、考えが短絡的でしょうか・・・母もあの時は私の胃の中がからっぽになっていたはずだし、あれ以上悪くなることはないから、たまたま上手くいっただけだと言ってました。でも、私は全く可能性がないとは思いたくないんです」

 すると、スターリング先生はまあ、待ちなさいと言うように私に向かって、手の平を見せると、

「病気の前に魔法は無力である。・・・これはこの世界の常識でした。密かに研究をしていると言う話も聞いたことがありますが、私自身、全く考えもつかないことでした。・・・私の母は病で早くに亡くなりました。私もとても悔しい思いをしたのに、しょうがないことだとすぐに諦めたんです。でも、貴女は常識を打ち破りたいと思ったのですね」

 私は赤くなると、

「そんな大袈裟なことではありません。私は病気による苦痛を少しでも和らげてあげることが出来たら・・・ただそれだけなんですから」

「実は病による苦痛を和らげることが出来る力を持つ方を一人だけ知っています」

「?!」

 何ですと?!

「その方も初めは病気自体を治す方向で長年研究をしていたのですが、結局、挫折してしまったそうです。ですが、長年の苦労の成果かもしれませんね。その方が魔力を送ると、呼吸が楽になり、良く眠れるようになるそうなんです」

「私もそんな魔法を使えるようになりたいのです!」

 私は勢い込んで言いますと、「その方は一体誰なんですか?」

「ある修道院の修道女です。その方はこの国の王族だった方で・・・確か、ああ。フォルナン侯爵夫人は知ってますか?」

「は、はい。何度かお会いしたことがあります。今も時折お手紙を送っています」

「そうですか。それなら、フォルナン侯爵夫人に紹介してもらうことも可能ですね。フォルナン侯爵夫人の妹君なんですよ。国王陛下の叔母様になりますね」

「そうなんですか!フォルナン侯爵夫人にお願いすれば、すぐ会えますでしょうか!」

「すぐには無理だと思いますよ」

 ぬっ?!


「修道女は基本修道院から離れることは出来ませんが、シスター・レティシアはその能力から特別に認められ、世界中を旅しながら、直接、人々に奉仕を行っているのです。魔法に頼らずに旅をしていますから、今、どこにいるかはフォルナン侯爵夫人でも分からないと思いますよ」

「そうなんですか・・・」

 私はがっくりしましたが、

「ともかく、シスター・レティシアに会うより前に、貴女のお母様が得意だった解毒魔法を習得するようにしましょう」

 と、スターリング先生が言いました。

「え?!いいのですか?!」

 スターリング先生は頷きますと、

「シスター・レティシアは学園を卒業してすぐに王族だった立場を捨て、修道院に入り、病気を治す魔法の研究を続けました。そして、今は世界を旅しながら、病に苦しむ方々を救う活動をしています。どれも生半可な覚悟では出来ないことです。そんなシスター・レティシアに貴女もそれなりの覚悟や姿勢を見せる必要があります。貴族令嬢の気まぐれで片付けられる可能性もありますからね。貴女が解毒魔法を習得してから、研究に入り、ある程度の成果が見せられるようにしましょう」

「はいっ!」

「・・・そうですね。学園長に了承が貰えたら、貴女だけ早めに解毒魔法を教えることにしましょう。習得後に研究に入ることにしなさい」

「はい!ありがとうございます!」

 私は頭を下げましたが、「あのー、何て言いますか、特別扱いになりませんかね?」

「貴女の治癒魔法習得の進捗状況は他の生徒に比べて、倍以上になりますから、どのみち、貴女は3年生になる頃にはする事がなくなると思いますよ。まあ、攻撃魔法や防御魔法が出来ないせいでもありますが。余った時間を研究に当てても構わないでしょう。貴女のお父様も一人で訓練していたらしいですよ。優秀過ぎて、学園で教えることが早々になくなったそうですからね」

「・・・」

 お、お父様・・・。本当にハンパない人ですね。私のお父様かしら?と、思う以前に同じ人間なのかと疑ってしまいます。


「貴女の弟さんもお父様に近いものがあるそうですよ。ともかく集中力が凄まじいと聞いています」

「そうですね。私もそう思います」

 私もリバーの授業中の様子を見ていますから、そう思いますし、とても頑張っていると思うのですが、もしかしたら、リバーは無理をしているのでは。と、少し心配になってしまいます。

「二人とも頑張ってますね」

「い、いえ。弟はともかく私は必死なだけで・・・治癒魔法のことだって、高い魔力量のお陰ですし、私自身に才能があるわけではありませんから」

「貴女はもう少し自信を持ちなさい。確かにカーライル公爵家は代々魔力量が高いとされています。ですが、今、他の生徒と倍以上の差が出来ているのは、才能以上に貴女の頑張りがあってこそなんですから。自信を持っていいのですよ」

 スターリング先生は優しい表情でそう言って下さいました。



 私、意気揚々とルークとメグが待つ図書室へと向かいながら、決心しました!

 卒業後はシスター・レティシアがいらっしゃる修道院に入ります!私も修道女になるのです!

 そして、いつか私も世界中を旅して、病気に苦しむ方を救いたいと思います。施設だって、この国だけではなく、他の国にも出来たら良いのではないでしょうか?!

 攻撃魔法も防御魔法も出来ない私が高い魔力量を持って生まれて来たことの意味を考え続けていましたが、やっと、その意味を見つけたような気がするのです。


 修道女になると言うことは結婚は出来ません。ですが、こんな私が大きなお屋敷を取り仕切り、旦那様を支え、子供を育てるなんてことが出来るわけがありません!それなら、自分の力を100%発揮できる道に進むべきなのです!

 きっと、両親も応援してくれるはずです!お父様、私、大事に育てていける物が見つかりましたよ!頑張りますからね!!



 スターリング先生は体を震わせて、

「急に寒気が・・・な、何かしら?」

 首を傾げていましたが、「・・・そう言えば、あの子、まさか、修道女になりたいなんて言い出さないわよね。・・・まあ、カーライル公爵とマリが認めるわけないでしょうけど」

 と、言ったのでした。



 ・・・どうしてですか?



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