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恋愛結婚を諦める主人公

 次の日。

「アーロン、昨日はごめんなさい。私ったら、変なことを言って」

 私はアーロンに謝りました。

 歴史の授業が終わったばかりです。

「いいんですよ。それに誰も信じていませんから、気にする必要はないですよ。キャス様が僕なんか好きになるなんて有り得ませんし」

 アーロンは笑いながら、教室を出ます。

 私は後を追いながら、

「なんかってことはないわ。アーロンはとても素敵な人よ」

「ありがとうございます」

「信じてないでしょう」

「そんなことないですよ」

 アーロンは絶対信じていません。

 私はむくれていましたが、

「あ、おはようございます」

 ゴードン様がやって来ました!

「おはようございます」

 ゴードン様はいつもの穏やかな笑みを浮かべて、「歴史の授業は楽しかったですか?」

「ええ。とっても」

「ロクサーヌ様は本当に歴史が好きなんですね」

「ええ・・・変わっていますよね」

「そんなことはないですよ。夢中になれる物があることはとても素敵なことですよ」

「あ、ありがとうございます」

 ゴードン様は何て素晴らしい方なのでしょう!


「ゴードン様は良い方ね」

 と、私がゴードン様を見送りながら言いますと、

「キャス様に好意を持たれているんじゃないでしょうかね・・・」

 と、アーロンが言いましたので、私は笑ってから、

「まさか。私なんか好きになるわけないですよ。持参金目当てならともかく、ゴードン様はそんな人ではないでしょうし」

 こんな私でも、カーライル家がそれなりにお金持ちなことは知ってます!

 アーロンは渋い顔になると、

「キャス様だって、なんかって言ってますよ」

「あ」

 私はしまったと口を覆いました。

 アーロンは笑って、

「キャス様は本当に素敵な方ですよ。自信を持って下さい」

「・・・ありがとう」

 私はお礼を言いましたが、「でもね、私はカーライル公爵家の令嬢で、それしか取り柄がないのです。自分で良く分かっています」

「そんなこと・・・」

「ええ。私がカーライル公爵家の令嬢でなくても、好きになってくれる方がいたらとは思いますけどね」

 と、私はどこか願うような気持ちで言いました。 


 お昼休み。私とアーロンは校舎の壁にもたれながら、話をしています。

「両親は愛し合って結婚しましたけど、貴族家のだいたいの夫婦は愛情で結ばれているわけではないですからね。・・・私も愛情なんて関係なく、それなりの家の方と結婚することになるんでしょうね」

 ・・・今から、将来の旦那様が不憫に思えて仕方ないです!

「確かに貴族の結婚は本人同士だけが良ければ、それでいいと言うわけにはいきませんよね。ですが、僕はキャス様には本当に好きな方と結婚して、幸せになって欲しいと思います」

 と、アーロンは言いました。「ありがとう」

 ・・・ですが、私はもうそれは諦めています。

 でも、旦那様となった方が少しだけでも私を好きになってくれるよう努力しようと思います。どうすればいいのかさっぱり分かりませんが。

 本音を言うと、独身を貫き通したいと思うようになったんですよね。そして、甥っ子、姪っ子の良きおばさまになりたいんです!

 ・・・ですが、誰も許してくれないでしょうね。特にお母様が。


 そんな私とアーロンからちょっと離れたところでは、ルークとメグがいて、メグが『ここだけ読んで!』とルークに言っています。

『そんな短い文章を読んだところで、どうなるんですか』

『だから、貴方と牧師館の娘さんの恋の結末はこれがいいと思うのです!もちろん、ハッピーエンドです!』

『もう会うことはないんですから、いいんですよ!』

『なんてこと!初恋を実らせる気はないんですか?!』

 

 なんてやり取りが行われていて、私とアーロンは溜め息をつきました。

「マーガレット様は見た目と違いますね・・・」

「ええ、恋愛小説狂いですね」

「なら、レオンハルト様とローズなんて、マーガレット様からしたら、堪らないんでしょうね」

「!」

 私がびっくりして、アーロンを見ますと、アーロンは苦笑いして、

「11歳の時にレオンハルト様がローズの前に現れた時にもう何もかも決まっていたのかもしれませんね。ローズは一目惚れだったんですよ。・・・レオンハルト様が王都に帰った後もずっと思い続けてましたから」

「そ、そうだったんですか」

「・・・いえ。違いますね。ローズがあの黒い髪と瞳を持って生まれた時にもう決まってたんでしょうね」

 アーロンはとても切なそうです。

「・・・」

「レオンハルト様は王子様なのに、平民の僕にも優しくしてくれます。とても尊敬出来る方です。・・・きっと、ローズを幸せにしてくれると思います」

「・・・」

 これがアーロンが言った台詞でなければ、私はその通りだと何度も頷くのですが、そんなことはもちろん出来ません。

 私は何も言えず、アーロンの隣にいてあげることしか出来ませんでした。


 すると、

「こんな恥ずかしい台詞、言えるわけないでしょう!!」

 と、ルークの声が響き渡りました・・・。



 私、悪役令嬢ですが、ヒロインであるローズマリー様に話し掛けようとしています。

 どうしても、アーロンとは何もないと弁解しておきたいんです!

 でないと、アーロンが可哀相過ぎます!

 思いを寄せるローズマリー様にレオ様に奪われ、挙げ句、私と良からぬ(?)関係だと思われるなんて!

 ローズマリー様に誤解させたままではいけないと思うのです。


 と、言うわけで、ローズマリー様を尾行中です。

「あのー、殿下が常に一緒ですから、一人の時を狙うなんて無理なのでは?普通に声をおかけしたらいいのではないですか?」

 と、ルークが私の背後で言いますが、

「だから、そのレオ様が問題なのよ」

「どうしてですか?」

 ルークがきょとんとします。

「今日の朝、挨拶したら、無視されたもの。昨日、アーロンのことで軽率な発言をしたせいかもしれないわね。レオ様は学園でのお母様だし」

「お、お母様って。・・・ですが、カサンドラ様がおかしなことを言うのは今に始まったことではないでしょう」

「ぬ。失礼ですね」

「なのに、いちいち怒ってたら、身が持たないでしょう」

「まあ、確かにそうですねー」

 ・・・情けない話ですが。

「殿下は本当にカサンドラ様がアーロンを好きだと思ってるのでは?」

「だからって、私を無視する理由にはならないでしょう。身分差に腹を立てるような方じゃないし」

「うーん。じゃあ、他に何か悪いことをしたんじゃないですか?」

「えっ?!」

 私はギョッとして、「な、何かしら。思い付かないわ」

「いや、絶対、何かあるはずですよ」

「えーと・・・」

 私がうんうん考えていますと、


「カサンドラ様。ルーク」


 シュナイダー様がやって来て、

「もうすぐ授業が始まりますよ」

「あ、いけね」

 ルークは自分の懐中時計を見ますと、「ではまた!」

 ルークが廊下を走ろうとして、

「廊下は走らない」

 と、シュナイダー様が注意しました。

「はい!」

 と、ルークは元気良く返事して、早歩きで行きました。

「ほとんど走ってるでしょう・・・」

 シュナイダー様は呆れて言いましたが、私を見て、

「私たちも行きましょうか」


「はい!お兄様!」


 私が元気良く言いますと、シュナイダー様は唖然として、

「か、カサンドラ様、何ですか?お兄様って・・・」

「い、いやー、ルークに注意したところを見ていたら・・・つい。あ、それに、私とレオ様を仲直りさせてくれましたし、まるでお兄様みたいじゃないですか。シュナイダー様って、とっても頼りになりますし」

 私としては褒め言葉のつもりでしたが・・・。

「私はカサンドラ様のお兄様ではありませんから、やめて下さいね」

 シュナイダー様はやや不機嫌そうに言いますと、さっさと歩いて行きます。



 あれ?怒ってます?どうしてですか?

 私は首を傾げつつ、シュナイダー様の後を追いかけました。



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