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キャス、王子様と友達になる。その1

 鼻血を出して、気絶した私は母マリアンナの治癒魔法のお陰ですぐに復活しました。


 ちなみにマリアンナの治癒魔法は軽い怪我を治せる程度ですが、解毒魔法の遣い手として、名を知られていたそうです。何でも一瞬にして、体内の毒を消し去るとか。この世界では、体に入った毒を入った場所から魔力を使って吸い取ると言うのが一般的な解毒魔法で、体内から毒が完全に消えるまで少し時間がかかりますが、マリアンナの解毒魔法は発動と同時に毒が消え去ると言うとても高度なものです。

 さすがは私たちのお母様です。



 いや、そんなことよりもです。


「どうして、寝てなきゃいけないの?」

 私は不満げに言いました。

 ちなみに自分の部屋のベッドの中にいます。

「しょうがないよ。お父様の言い付けは守らないと」

 ベッドの側に座っているリバーが言いました。監視役です。

「つまんない」

 図書室でじっとして本を読むのは好きですが、病気でもないのにベッドでじっとしているのは嫌です。

「まあ、キャスのあんな状態を見ればねえ」

 噴き出した血のせいで、鼻から下が血だらけになった私を見て、両親は顔面蒼白になり、母は悲鳴を上げた後、気絶しそうになったとか。うぅ。すみません・・・。


「僕もすごく心配したんだからね。夕食までベッドにいなきゃダメだよ」

 うぅ・・・。リバーにそう言われると仕方ないですね。

「分かったわ」

 私はふかふかのベッドに身を沈めます。

 そこでやっと、レオンハルト殿下のことを思い出しましたので、

「レオ、レオナード君は?」

「お父様が領地を案内するって。馬車で行ったよ」

「そう・・・」

 困りました。時間はあまりないと言うのに、鼻血を噴き出し、無駄にしてしまいました。トラウマ植え付けた(そうか?)と言っても、全くいじめてません。

「ねえ。キャス」

「なあに?」

「あの、レオナード君、ちょっと怪しくない?」

「・・・」

 さすがはリバーです!


「僕、施設がどういうところか分からないけど、亡くなったご両親は平民だったと言ってただろう?」

「・・・」

 そ、そうでしたっけ?

 リバーはじとっとした目で私を見て、

「聞いてなかったね」

「えへへっ」

 ここは笑って、ごまかしましょう。

 リバーはやれやれと首を振りましたが、

「まあ、いいや。それで、レオナード君に戻るけどさ。僕は領地の子たちと仲良くしてるけど、その子たちと比べると、違うって言うか、品があり過ぎるって言うか・・・キャスはどう思う?」

 平民の子供たちと仲良くしているリバーだからこそ分かるのでしょう。


 しかし、ここで私がレオナード君が本当はレオンハルト殿下だとばらすわけにはいきません。

「そ、そりは、も、持って生まるたもにょじゃないきゃしら(それは持って生まれたものじゃないかしら)」

「そこでどうしてキャスがどもったり噛んだりするの?」

 リバーがもっともなことを言います。

「う・・・」

 自分の上手く動かない口が恨めしいです。


 もうここはしょうがないです!

 私はわざとらしく欠伸をすると、

「リバー、ごめんね、私、眠くなっちゃったわ。お夕飯になったら、起こしてね」

 ちっとも眠くはありませんが、ここは寝たフリをしましょう!私はギュッと目を閉じました。

「うん、分かった。ゆっくりお休み」

 と、言ったリバーの声はとても遠くに聞こえました・・・。



 ええ、私はけして眠くなかったのですよ。

 ええ、だから、自分が夕食の時間が来ても、リバーや母に起こされても、起きなかったとは思いもしなかったです。


 私は自分のおなかの音で目が覚めました。

 辺りは暗く、ベッドの側にあるランプの明かりだけでした。

 時計を見ると、もう深夜と言っていい時間でした。・・・自分、寝過ぎです。

 サイドテーブルには水が入ったガラス製のピッチャーが置いてありました。とりあえず、喉が渇いていたので、水をグラスに注いで飲みました。

 喉は潤いましたが、水でおなかが膨れることはありません。

 私はしばらく迷いましたが、

「ええいっ、起きてやりますっ」

 と、自分に勢いづけるようにそう言うと、体を起こしました。

 台所に行って、何かおなかに入れることにしましょう。


 それから、静かに部屋のドアを開け閉めし、廊下に出ました。

 今日は満月です。廊下を仄かに明からせています。

 私は窓の向こうの満月を見ながら歩いていましたが、


「カサンドラ様」


 私はハッとして、声がした方を見ました。


 満月の光を浴び、幻想的な空気を纏ったレオンハルト殿下がいたのです。



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