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無意識

「じゃあね」

 土の属性の授業が終わり、リバーと別れて、私とルークは教室に戻っています。

「ルーク。雷の核をずいぶんスムーズに出せるようになったじゃない」

 と、私が言いますと、ルークは嬉しそうに笑って、

「ですよね!今日はとても上手く行きましたよ!」

 攻撃魔法があまり得意な方ではないルークはこれまで雷の核を出すだけでも、悪戦苦闘してました。ですから、リバーやレオ様からアドバイスを貰って、密かに練習を重ねていたのです。ルークは頑張り屋さんです。

「いつか雷どーん!を見せてね!」

「はい!」

 と、ルークが元気良く返事したところで、

「あ。ゴードン様」

 こちらに向かって歩いて来るマーカス・ゴードン様に気付きました。

 ゴードン様も私に気付いて、

「こんにちは」

 穏やかな笑みを浮かべながら、挨拶をして下さいました。

「こんにちは」

 と、私も挨拶を返しました。


 ゴードン様とは挨拶をするくらいです。前に一度お茶に誘われましたが、人見知りの私にはハードルが高いので、丁重にお断りしました。

 でも、ゴードン様は残念そうにしながらも、何度も謝る私に気にしないで下さい。と、優しく言って下さいました。とても良い方です。

 ・・・ですが、プレーボーイで顔を合わせれば、挨拶代わりに口説いてくるアレックスの方が・・・何て言いますか、ゴードン様より気を許せているような気がするのです。・・・どうしてでしょうか?おかしいですね。アレックスはメグの従兄弟だからかもしれません。


 私がそんなことを考えていますと、

「あいつ、誰ですか?」

 ルークが後ろを振り返りながら言いました。

「え?」

 私はきょとんとしましたが、「あ、ルークは初めてだったのね」

「はい」

 そうでした。ゴードン様は確かアーロンと一緒の時に良く会っていましたね。

 ゴードン様はアーロンにも話し掛けます。

 同じ学園の生徒でも、高い位の家の令息、令嬢は平民の方々を見下しています。同じ人間扱いをしないのです。腹立たしく思いますが、

『しょうがないことなんですよ。生まれの違いはどうしようもないことですから。その場で苦言を呈したところで、何も変わらないでしょう。意識を根底からひっくり返すことは容易なことではありません。ですから、僕らのためにわざわざ争い事になるようなことはしないで下さいね』

 と、アーロンは言っていました。

 ・・・私なんかよりずっと大人です。

 でも、メグはアーロンと普通にお話をしますし、アレックスは平民の方々と良く一緒にいます。皆が皆、差別するわけではないのです。

 ゴードン様も侯爵家の方ですが、威張っていません。うん。とても優しい方です。うん、うん。


 私がそんなことを思いながら、頷いてますと、

「カサンドラ様。ですから、あいつは誰なんですか?」

 ルークが苛立ったように言いました。

「あ、ごめんなさい。また自分の世界に入ってた」

「この短時間ですごいですね・・・」

「あ、あの方はマーカス・ゴードン様よ。あいつなんて言ったら、ダメよ。とても良い方なんだから。ストレーゼン侯爵家の方よ」

「へえ・・・」

 ルークはもう一度振り返りますと、「どうやって知り合ったんです?」

「えっと」

 私はあの3人組のことを思い出したくなかったので、「ペンケースの中身をばらまいた時に一緒に拾って下さったのよ」

「そうですか・・・」

「ええ」

 あの3人組はあれから一度も近付いて来ません。ゴードン様がきっぱり言ってくれたお陰だと思います。ですから、ルークにあの3人組の事をわざわざ話す必要はないですよね。



 お昼休みになりました。

 今日は私、ルーク、メグ、アーロンの4人で裏庭にてランチです。

 アーロンはレオ様とローズマリー様の邪魔をしないよう遠慮しているようです。

「まあっ。アーロンさんの御祖母様のコレクションは素晴らしいわね!」

 と、メグが感嘆の声を上げました。

「・・・」

 だいたいの予想は出来ますが、「メグ、何の話ですか?」

「聞いて驚きなさい」

 何故かメグが自慢げに、「アーロンさんの御祖母様はリリアーナ様とフェリクス様の恋話全集を持っているんですって!」

「な、なんですってー!」

 あの歴史に残るじれじれ展開の全貌が書かれてあるという恋話全集ですかー!羨ましいですー!

 アーロンは照れながら、

「祖母いわく家宝だそうです」

「ええ!もちろん、家宝ですよ!間違いなく!再版の予定がないんですもの!羨ましいわ!」

 メグが興奮しています。

「歴史好き、恋愛小説好き、どちらも納得出来る素晴らしい物ですよね!」

 私も興奮します!


「はー・・・リバーとシュナイダーがいればなあ・・・」

 ルークがうんざりしたように言いました。残念ながら、ルークは恋愛小説にはまらなかったようです。

 ちなみにメグはリバーとシュナイダー様がいると、恋愛小説?何それ?何て風に澄ました顔をしています。


 それから、食べ終えた私たちがまったりしていますと、


「あ、あのー・・・お邪魔して、よろしいでしょうか・・・」

 いきなりローズマリー様が現れました。


 「「「?!」」」

 私、メグ、ルークはギョッとしました。

 

 ローズマリー様の後から来たレオ様は私たちまでいるとは思ってなかったようで、驚いた顔をしていましたが、

「お邪魔して、申し訳ございません」

 ローズマリー様が頭を下げました。

「いえ。お気になさらなくて、結構ですよ。私たちがいても平気かしら」

 と、メグが言いました。

「もちろんです。お気遣いしていただいて、ありがとうございます。私の家から届いたお菓子をアーロンに持って来ただけですので、すぐ失礼しますから」

「そうなんだ。わざわざありがとう。・・・あ、ローズの御祖母様とお母様はお菓子作りが得意なんです」

 と、アーロンが私たちに説明します。

「その影響もあって、私もお菓子作りをしていたのですが、しばらくやめることにしたんです」

 と、ローズマリー様がややしょんぼりして言いますと、

「その方がいいよ。ローズは10回に9回は失敗するからね」

 アーロン?!意外に遠慮なしー?!

「そ、そうよね・・・」

 ローズマリー様は肩を落としましたが、

「ローズは高貴な家に嫁ぐ可能性があるんだから、料理よりもっとしなきゃいけないことがあるよ」

 と、アーロンは言いました。


 私とメグは顔を見合わせます。


 アーロンはレオ様がローズマリー様を妃にしようと思っていることを分かっていたようです・・・。


「そうだ。せっかくですから、皆さんでお菓子を食べませんか?」

 アーロンは明るくそう言って、ローズマリー様から受け取った紙袋から箱を出します。

「あ、アーロン、申し訳ないわよ。それにお昼を食べたばかり・・・」

 と、私は言いかけましたが、


 ぐーきゅるるるー・・・と、おなかが鳴りました。


 ぎゃあああっ!一体、何回やれば気が済むんですか?!


 もう嫌です!おなかを誰かと交換して下さい!



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