金髪のハンサムさん
魔法学園の図書室はとーっても広いのですが、
「あんまり人がいないですね」
図書室は校舎の奥の奥にありまして、何か調べたいことがない限り、生徒はあまり来ないのです。
「そうですね。昼寝するのにちょうど・・・」
と、ルークが言いかけて、
「昼寝?!この神聖な場所でそんなこと許しませんよ!」
メグが目を吊り上げます。
「す、すみません・・・」
ルークが首を傾げるようにして謝りました。
「この図書室は素晴らしいのです。恋愛小説の宝庫なんです。既に絶版になっていた物もここにはあるのです」
メグはせかせか歩きながら、「何とか、1年生時に全て読み終えて、2周目、3周目といきたいわね」
「・・・」
メグいわく恋愛小説は一度読んだだけでは、ダメなんだそうです。繰り返し読む度に新しい発見があるそうなんです。恋愛小説を何度も読み返す必要なんてあるのでしょうか?誰と誰がくっついたか分かればいいと思うのですが。
「じゃあ、私は何か歴史の本を探しに・・・」
「自分は効果的に体を鍛える方法を調べたいので・・・」
と、私とルークがそれぞれ行こうとしましたが、
「待ちなさい!そこのへっぽこ恋敵とそっちの全くアテにならない協力者!」
「へ、へっぽこ」
「全くアテにならない・・・」
私とルークがショックを受けていますと、
「戻って来なさい」
メグが手招きしました。・・・私たちは猫さんではないですよ?
「へっぽこって、レディが遣う言葉としてはどうかと思いますけど・・・」
「だいたい図書室で大きな声を出してはいけないと思うのですが・・・」
私とルークはぶつぶつ言いながら、椅子に座りました。
メグはそんな私とルークの声をまるっきり無視して、
「じゃあ、この本を読んで下さいね」
私とルークの前に1冊ずつ本を置きました。
「・・・」
「・・・」
どう見ても、恋愛小説のようですが・・・。
「こ、これは一体・・・」
と、ルークが戸惑いつつ、「ま、まさか、これを自分に読めと・・・」
「読んで下さいと言ったでしょう。今。同じ事を二度も言わせないで下さいな」
と、メグは腕を組みながら、座っているルークを見下ろして言います。すっごく威圧感があります!
「いや、でも・・・」
「貴方、主君の為にこれくらいのこと出来ないんですか?」
「こ、これを読んで勉強しろってことですよね?でも、本を読んだくらいで・・・」
「何ですって?」
メグがルークをジロッと睨みました。
ですが、ルークも負けじと、立ち上がってから、
「これは空想の世界の物でしょう。実際の恋愛とは違います」
逆に見下ろされる形となったメグでしたが顎をツンと上げて、
「じゃあ、ルークさんは今までにレオンハルト殿下とローズマリーさんの為に何かしましたか?」
「そ、それは」
ルークはぐっと詰まります。
「る、ルークはいつも私の側にいるから、しょうがないんですよー」
と、私はフォローしようとしましたが、またしても、メグはまるっきり無視して、
「貴方って、男同士でじゃれあっている方が楽しいと思うタイプでしょう?そんな人が恋愛の何を知ってるって言うんですか?」
「それはそうですが、自分は」
と、ルークが反論しようとして、私、思い出しました!
「あっ!そうです!ルークの初恋のお相手は牧師館の娘さんなんです!ですから、恋愛はおてのものなんです!」
と、私が言いますと、
「カサンドラ様?!」
ルークは真っ赤になりました。助けてあげたんですよ!
すると、メグの瞳がキラッと光って、
「貴方、伯爵家の方よね?!」
「じ、次男ですが・・・」
「まあ!伯爵家と牧師館の娘さんじゃないの!ちょっと話を聞かせてちょうだい!」
メグがルークに詰め寄ります。
「は、話すことなんて・・・ちょっ、襟を掴まないで下さい!カサンドラ様ー!マーガレット様を何とかして下さいー!」
ルークは助けを求めましたが、平和っていいですねー。と、私が思っていますと、
「おや。お一人で寂しいのではないですか?よろしければ、お相手致しますよ?」
と、背後から声がしました。
「はい?」
私は振り返って、「ぎゃっ」
超至近距離に金髪のハンサムさんの顔がありました!
驚きのあまり、のけ反った私でしたが、そんな私の手を金髪のハンサムさんが取って、手の甲にキスしました!ぎゃあああっ!
「な、何やってるんですか?!」
ルークが飛んで来て、私と金髪のハンサムさんの間に体を入れますと、「あんた!何なんですか?!」
金髪のハンサムさんは前髪をかき上げて、
「何って、美しいカサンドラ嬢にお近づきになりたいだけさ。ようやくチャンスが訪れた。私は何て幸運な男なのだろう。後は、女神に微笑んでもらえたら、私は天に召されたとしても、文句はないさ」
と、言って、私に向かって、ウインクしました。
「・・・」
「・・・」
キザな方の登場に私とルークが唖然としていますと、
「やっぱり来たわね。アレックス」
と、メグが言いました。
アレックスこと、メグの従兄弟さんである、セントクロフト伯爵家アレクサンダー・ラングトリー様はメグに向かって、にっこりと笑って、
「メグがカサンドラ・ロクサーヌ嬢と友達になったって言うじゃないか。これはチャンスだと思ってね。いやー、普段はあのおっかない弟の目があるだろう?どうやって、近付こうかと考えていたんだよね」
「お、弟はいつも私を見張っているわけでは・・・」
「貴女の弟には支持者?いや、信者がたくさんいるでしょう?あの熱狂振りはちょっとおかしいよね。何か黒魔術でもやってるのかな?」
「ま、まさか」
実は私もちょっと疑ってますけどね。
・・・それにしましても、色気のある方ですね。リバーは色気がありながも、もう少し少年ぽさが残ってますが(そこがいいんですけどね。ふっ)、アレクサンダー様はもう大人の色気を放っています。・・・鼻血が出そうです。
「リバーの目がなくったって、カサンドラ様には自分がついてますんで!」
と、私を背にして、両手を広げながら、ルークは言いましたが、
「ふっ」
アレクサンダー様は鼻で笑いますと、「だって、あんた、ちょろそうだもん」
ぎゃー!
ルークは顔を真っ赤にして、
「ちょろい言うな!いいか?!今後、カサンドラ様には指一本触れさせないからな!」
と、声を上げました。
ところが、アレクサンダー様は妖艶な笑みを浮かべて、
「なら、カサンドラ嬢から触れる分には構わないんだよね?」
「「はあっ?!」」
私とルークが仰天しますと、
「きっと、カサンドラ嬢から俺に触れたくなると思うよ?」
アレクサンダー様は上着を脱ぎ捨て、シャツのボタンに手をかけましたが、
「レディの前で何をしているの!!この女ったらし!!」
メグからげんこつを落とされました・・・。
何故、脱ごうとしたんですか?




