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悪役令嬢の敵は誰?

 レオ様が帰った後、私とシュナイダー様はランチタイムとなりました。

「シュナイダー様はどうやってこの池を知ったんですか?」

「土の授業の先生と犬の話で盛り上がりましてね」

「・・・」

 シュナイダー様でも話が盛り上がることってあるんですね。

「先生は動物全般が好きなようで、この深い森に良く探索に行くそうなんですよ。その話を聞いていた時に、池に小さな銀色の魚がいると言っていたので、もしかしたらと思いましてね」

「そうなんですか・・・連れて来て下さって、ありがとうございます。レオ様と仲直り出来ましたし、めだかさんと会えて、元気になれました。シュナイダー様。本当にありがとうございました」

 私は深々と頭を下げました。

 シュナイダー様は首を振って、

「めだかさんのことはともかく、殿下のことについては、元々、お二人が仲直りをしたいと言う気持ちがあったから出来たのですよ。私はちょっとお手伝いをしたに過ぎません」

「シュナイダー様・・・」

 私は感激しますと、「もう本当に前から思っていましたが、シュナイダー様はとっても素敵な方ですね!」

「!」

 シュナイダー様はびっくりしたように、目を見開くと、私から顔を反らして、「あ、いえ、そんなことは、ないかと・・・」

「・・・」

 うわー。赤くなったー。と、私が思ってますと、

「カサンドラ様こそ、素敵ですよ?」

 シュナイダー様は早くも無表情に戻って、「何か違うなと思っていましたが、髪型だったんですね。良く似合っていますよ」

「!」

 今度は私が赤くなる番でした。「し、シュナイダー様、わざと言っていません?」

 シュナイダー様はやっぱり無表情のまま、

「本当に素敵ですよ」

 ・・・でも、内心面白がっていると思います!


 それから、私はシュナイダー様にレオ様と仲直りしましたが、距離を置いたままにすることをお話しました。

「それで良いのですか?」

「レオ様とローズマリー様の邪魔をしたくありませんから。・・・私、子供の頃はずっとレオ様と一緒だと思っていました。シーア様のことがあったから、余計にそう思っていたのですが、レオ様は私がいなくても、もう大丈夫だと思うのです」

「・・・」

「シュナイダー様とリバーは将来の五大公爵として、ルークは騎士として、レオ様と関わり続けるのでしょうが、私はそうはいかないのです。私も男性だったら良かったのですが・・・」

 私はそう言って、苦笑いしますと、「まだ入学したばかりなのに、卒業した後のことを考えるなんておかしいですね。でも、卒業すれば、どのみち私は皆さんとは道が別れてしまうんですよね。いつまでも子供の頃のようには・・・」

 そう言いかけた時、シュナイダー様が私の手を握りました。


 私が驚いて、シュナイダー様を見ると、

「あ」

 シュナイダー様自身も驚いたようでしたが、慌てて、私の手を離すと、「す、すみません。カサンドラ様がどこかに行ってしまうような気がして・・・つい・・・」

 私は何故シュナイダー様がそんな気になったのか分かりませんでしたが、安心させるように笑って見せますと、

「私はどこにも行きませんよ。変なシュナイダー様」

 シュナイダー様は後頭部をさするようにしながら、

「そ、そうですよね。すみません」

「いえ」

「・・・ですが、カサンドラ様」

「はい?」

「確かに卒業して、殿下が王太子となり、ローズさんと結婚すれば、今のままと言うわけにはいきません。カサンドラ様の状況も変わっているかもしれません。ですが、あまり難しく考えず、カサンドラ様は今を楽しんでも良いのではないですか?一度きりの学園生活なのですから、後悔することがないように。私は貴女が無理をしているところは見たくありません」

「シュナイダー様・・・」

 シュナイダー様はどこか遠くを見るように目を細めて、

「私は殿下とカサンドラ様の仲の良い様子を見ることが子供の頃から好きだったんです。それに腹を立てたり、邪魔しようとするリバーの様子も、面白くて好きでした」

 私は笑ってしまうと、

「そうなんですか?」

「ええ。ですから、全く見られなくなるのは、やっぱり寂しいです」

「・・・そうですね」

「それに、ローズさんにそこまで気を使う必要はないと思うのですが」

「は?」

「ローズさんは殿下とカサンドラ様が思い合っているのではないかと心配していたんですが、リバーが『あの二人が思い合う?この世界がひっくり返ってもないよ。馬鹿の一つ覚えみたいに生涯の友、生涯の友って、言ってるんだから。あははっ』だとか、『あれでくっついたら、詐欺罪で訴える』とか、『僕と父で全力で邪魔するから、絶対ない』とか・・・ともかく、リバーがローズさんの心配の種を残らず取り除いていますからね。まあ、ローズさんのためと言うより、自分のためでしょうが」

「・・・」

 リバー、何てことを!そこまで否定されたら、悪役令嬢の立場がないでしょう!悪役令嬢の敵は身内にいましたよ!くっ!


「それに、ローズさんは殿下にカサンドラ様と仲直りしてはどうかと言ってたんですよ。殿下はほぼ無視していましたが。リバーが『くっだらない子供の喧嘩は放っておけ』と、言ったのは、ローズさんに対してなんですよ」

「そ、そうなんですかー・・・」

 ・・・それにしましても、シュナイダー様はリバーの真似が上手ですね。


「ローズさんは『お二人は子供ではないから、なかなか仲直り出来ないのです。リバー様だって、レオンハルト様の憂いの原因が何か分かっているでしょう。なのに、何故、何とかしてあげようとしないのですか。お姉様を独り占めしたいからとしか思えません』と、言い返してましたよ」

 シュナイダー様はそう言って、苦笑いしました。

「まあ。ローズマリー様は意外にきっぱりと言うんですね。リバーはなんて?」

「『そうだけど、悪い?レオ様、邪魔だったし』・・・です。ローズさん、絶句していました」

「り、リバー・・・」

 ローズマリー様、私の弟が何だかすみません!

「まあ、半分冗談でしょうけどね。リバーは自然に仲直り出来ると思っていたでしょうから」

「・・・」

 リバー、自分たちで仲直り出来ない、駄目なお姉ちゃんでごめんね!


「ローズさんは自分の感情より殿下のためになることを優先させています。それが無意識のうちに出来ています。ですから、無理に殿下と距離を置く方がローズさんのためには良くないと思うのです」

「シュナイダー様はローズさんを認めつつあるようですね」

「いえ。そういうわけでは全くないです」

「・・・」

 ・・・厳しいー。


「ただ、再会して、それほど時間が経っていないにしては、殿下のことを良く理解しているように思います」

「ローズマリー様はレオ様の心に添おうと精一杯頑張っているのでしょうね」

 私は頷きましたが、溜め息をついて、「私が気にしすぎなんでしょうかね。それほどレオ様と上手くいっているなら、私がレオ様の側にいたところで、ローズマリー様が気に病むことはないかもしれません。でも、レオ様は距離を置こうと言うことに賛成しましたし、レオ様の方は私と近すぎることが、やはり良くないと思っているんだと思います」

「・・・ある意味、良くないんでしょうね」

「?」

 ・・・この後で、どういう意味ですか?と、私は聞きましたが、シュナイダー様は答えてくれませんでした。うーん、今日はちょっと変なシュナイダー様です。


 ランチを終えた後、シュナイダー様と一緒に池の中のめだかさんを数えていましたが(何それ・・・)、

「あ、風が出て来ましたね。」

 シュナイダー様が顔を上げて言いました。「雲も出て来たし、そろそろ帰りましょうか」

「あ、はい」

 もう少しここに居たいなあと私は思いつつ、腰を上げましたが、

「ちょっと遠回りしましょうか。珍しい花が咲いているところがあるんです」

「はい!」

 私は笑顔になって、言いました。


 それから、私はシュナイダー様の後に続いて、歩いていましたが、 

「あっ・・・」

 足を滑らせてしまいました。何とか転ばずに済みましたが、

「すみません。早かったですか?」

 シュナイダー様が振り返って言いました。

「あ、いえ。濡れた落ち葉で足を滑らせただけですから」

 と、私が言いますと、

「・・・では」

 シュナイダー様が手を差し出しました。

「え?え?」

 私はシュナイダー様の顔と手を交互に見ていましたが、

「行きますよ」

 シュナイダー様は私の手を取って、歩き始めました。

「は、はいっ」

 私は赤くなりながらも、手をきゅっと握ると、シュナイダー様も握り返してくれました。

 シュナイダー様の横顔を見上げると、耳まで赤くなっていたので、私も更に赤くなってしまいました。


 それから、深い森を出るまで、ずっと、手を繋いでいました。


 ふわふわした気分で、森から帰って来た私は着替えをしますと、すぐにメグの部屋にお邪魔しました。

 そして、シュナイダー様(+レオ様)と、お出かけした様子をお話しました。

 手を繋いだことは話さないことにしました。ぎゃっ!メグ、ごめんなさい!

 すると、

「何それ」

 メグが鼻を鳴らして、「つまんない」

「・・・」

 な、何を期待していたのでしょう。

「おまけに」

 メグは椅子に座っている私の前に仁王立ちになりますと、「レオンハルト殿下とせっかく仲直りしたのに、距離を置きましょうって、言ったですってぇ?貴女、ローズマリーさんの恋敵役、やる気あるの?!」

「あっ!そうでした!」

「あっ!そうでした!じゃないわよ!全く、お馬鹿さんね!だいたい、キャスは考えなしなんじゃないの?具体的な計画はしているの?行き当たりばったりなんじゃないの?そもそも恋敵の意味を分かってるの?」

 ・・・それから、しばらくメグに説教されてしまいました。



 レオ様に『距離を置きましょうと言いましたが、やっぱりやめたいです』と、言ってもいいんでしょうかね?


 このままでは悪役令嬢の立場がないですからね!



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