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秘密の場所

 私とレオ様は池の側に移動して、泳ぐめだかさんを眺めていましたが、

「それでキャスはローズマリーと親しくする気は本当にないのか?・・・もしかして、嫌っているのか?」

「・・・」

 うわ。キター。・・・私はちょっと動揺しつつ、「ローズマリー様は素敵な方ですから、嫌うなんて有り得ませんよ。・・・あ、リバーとシュナイダー様は厳しいんじゃありません?」

 レオ様は苦笑いして、

「まあ、優しくはないな。私も気付いたことは遠慮なく言ってるしな」

「で、でしょうね・・・」

「ローズマリーはサラ嬢とは違って、子供の頃に王族との結婚が決まっていたわけではないし、もちろん、現時点で完璧な令嬢だとは思っていない。サラ嬢のようになるには時間がかかるだろう。でも、リバーとシュナイダーに意見されれば、素直に受け入れるし、失敗をして、注意をされたら、失敗を二度と繰り返さないよう、次に活かせるよう、努力をしている。ローズマリーはとても前向きな女性だ。私は今はそれでいいと思っている。卒業までは3年近くある。ローズマリーの良さをなくさないように、少しずつ、王妃に相応しい女性になってくれたらと思っている」

 レオ様はとても優しい表情でお話されています。こんな表情は初めて見ます!


「それに最近は二人に対して、自分の意見を言えるようになった。最初は怯えていたが」

「で、でしょうね・・・」

「リバーは甘やかされた令嬢と違って、骨があると言っていたな」

「リバーが褒めるのは珍しいですね」

 ・・・リバーは私のことを恥ずかしいくらい褒めそやす以外は基本人を褒めませんしね。

「ああ。それに、二人で良く話をしているし、リバーとはもう打ち解けたようだな。ただ・・・シュナイダーが・・・ローズマリーは打ち解けたいようだが、上手くいっていないな」

 と、レオ様は苦笑いしました。「リバーとは違って、あえて、一歩引いている気もするし・・・」

「でも、シュナイダー様と打ち解けるには、私も時間がかかりましたから、しょうがないですよ」

「そうだな。・・・焦ることはないな。何もかも長期戦だな」

 私は頷きますと、

「ローズマリー様なら必ずレオ様の期待に応えてくれますよ。あの、でも、せめて、その」

「うん?」

「ろ、ローズマリー様の心構えが出来るように、早めに、その、ええと、婚約されたらどうかと・・・それか、レオ様の気持ちをローズマリー様に伝えるだけでもいいと思うのですが・・・」

 私はとても遠慮がちに言いました。

「・・・」

「あ、あの、もちろん、無理にとは言っていませんが・・・」

「そうだな。考えてみるよ」

 と、レオ様は特に機嫌を損ねた様子もなく言いました。

 私はホッとしました。


「だが、ローズマリーが私をどう思っているか、まだ分からないし、私の気持ちを押し付けるのもな・・・」

 レオ様は自信なさげに言いました。

 ・・・レオ様でも自信がなくなっちゃうんですね。ローズマリー様が誰を思っているか、リバーやシュナイダー様が気付いてるくらいなのに、恋って、難しいものなんですね。


 私は微笑みますと、

「大丈夫ですよ。レオ様を好きにならない女性はいませんよ。って、ルークが言っていましたから」

 レオ様は笑うと、

「ルークが言ってもなあ」

「私もそう思いますよ。レオ様はとっても素敵な方ですもの。好きにならない女性はいませんよ」

 と、私が言いますと、レオ様は笑って、

「だが、キャスは私を好きにはならないだろう?」

「え・・・」

「もちろん、私もキャスを好きになることはないが」

「・・・」

 ・・・ずいぶん、はっきり言うんですね。まあ、当然ですけどね。私は何となく胸がもやっとしましたが、それを無視しますと、「当たり前ですよ。レオ様と私は生涯の友ですからね!では、私はローズマリー様の邪魔をしたくないので、陰ながら応援させていただくことにします!私も頑張らないといけないことがありますから!」

「?何をだ?」

「そのうちお話します。実現するか分かりませんからね。リバーにだって、話してないんですから」

「気になるな」

 私は微笑んで、

「いつかお話しますから」

「分かった」

 レオ様は頷きました。


「それに・・・。レオ様とは仲直り出来ましたが、普段はお互い距離を置いた方がいいと思うのです」

 と、私が言いますと、レオ様は私の顔を見つめて、

「・・・何故だ?」

「私がレオ様の婚約者のように思われていたことは知っていますか?」

「・・・ああ。まあ、そういう風に思われても仕方ないな。私とキャスは距離が近すぎた」

 私は頷きますと、

「ええ。私がレオ様の周りをうろちょろしていたら、ローズマリー様も気にすると思うので。何より、学園は狭いですから、デマでもあっという間に広がってしまいます。ローズマリー様にはやらなくてはいけないことがあります。余計な心労を与えたくないのです。・・・レオ様だって、そう思うでしょう?」

「ああ」

「私とレオ様は離れていても、生涯の友だということは変わりません。だから、少し距離を置いても大丈夫だと思うのです」

「そうだな。その方がお互いにとっていいだろうな。・・・距離を置こう」

 私は頷きましたが、

「でも、たまにはこうやって、お話出来たらいいとは思いますけどね・・・」

 と、ぽつりと言いますと、

「じゃあ、休みの日にたまにここに来るか?」

 レオ様はにっこり笑って言います。「ここなら、他人の目も気にならないし、何よりめだかに会える。でも、ここに一人で来るのは危険だ。私と一緒の時だけしか行ったらダメだ」

「分かりました」

 本当は毎日行きたいくらいですが、ヘビさんが出るかもしれませんからね!

「ここは私とキャスだけの秘密の場所だ」

 と、レオ様は言いましたが、私は首を傾げますと、

「シュナイダー様も知ってますよ?だいたいシュナイダー様が・・・」

 レオ様はジロッと私を睨んで、

「はい。と、だけ言えばいいんだよ!空気を読め!」

 もー!そうやってすぐ怒るー!

「はいはい」

「はいは1回だ!」

「はーい」

「伸ばすな!」

「もー」

 私はむくれますと、「レオ様はうるさいですよー。ローズマリー様に嫌われても知りませんよ」

「リバーとシュナイダーのうるささで慣れている」

「それとこれとは違うような」

 と、私が言ったところで、


「私がなんですか?」

 シュナイダー様が戻って来ました!


「シュナイダー様!」

 私がシュナイダー様の元へ駆けて行くと、

「仲直り出来ましたか?」

 と、シュナイダー様が聞きましたので、私は大きく頷きますと、

「はい!レオ様が泣いて謝るので、許してあげました!」

「馬鹿!調子に乗るな!」

 と、レオ様が声を上げます。

「はいはい」

「はいは1回だ!」

「はーい」

「伸ばすな!」

「はいっ!」

 と、私は言ってから、シュナイダー様に向かって、頭を下げますと、「シュナイダー様、ありがとうございます!」

「いえ、とんでもない」

 と、シュナイダー様は言いますと、レオ様を見て、「殿下は何か言うことはありますかね?」

「・・・」

 レオ様はシュナイダー様と私に背を向けましたが、「・・・感謝する。あ、ありがとう」

「うわー。レオ様が素直です」

「珍しいですね」

「うるさい!!」

 レオ様の声は森に響き渡りました。 


「あ」

 レオ様は懐中時計を見て、「そろそろ帰らないと」

「ローズマリー様とお約束ですか?」

「いや。城に帰ることになってるんだ。戻りは明日の朝になる」

「そうなんですか。忙しいのに、何だかすみません」

 レオ様は苦笑いして、

「キャスが謝ることじゃないさ。じゃあ、帰るか」

「いえ。私はもうしばらくここにいます」

「は?」

 シュナイダー様は頷きますと、

「私がカサンドラ様と一緒にいますから、殿下はお一人で帰っていただいて結構ですよ」

 と、言って、帰り道の方向を手で示しました。

「シュナイダー様。私、お弁当を持って来たんです!一緒に食べましょう!レオ様の分はないので良かったです!」

 私がにこにこ笑顔で言いますと、

「そうなんですか。ありがとうございます。嬉しいです」

 シュナイダー様は微笑みました。


 レオ様はこれでもかと頬を膨らましてから、

「帰る!」

 と、言うと、さっさと歩いて行きます。

「また明日ー」

「お気をつけて」

 私とシュナイダー様は手を振っていましたが、

「レオ様!」

「なんだ!」

 レオ様が振り返ります。

「仲直りしてくれて、ありがとうございました!」

 と、私は声を上げました。

 レオ様は驚いたような顔をしましたが、すぐに笑顔になると、

「私こそありがとう!またな!」

 と、言うと、手を振りながら、帰って行きました。


 レオ様を見送っていたシュナイダー様がふと・・・。

「あれはどうしたんでしょう?」

「はい?」

「あの場所なんですが・・・」

 シュナイダー様が指差した先を見てみますと、

「あっ!」

 レオ様が座っていた周りだけ、ごっそりと草がなくなっていたのです!


 レオ様、どんだけ引き抜いたんですかー?!



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