表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/216

最恐にして最悪の問題児とは

 マーガレット様こと、メグが私のお友達になって下さいました!


「・・・」

「・・・」

 リバーとメグが見つめ合っています。ん?お互い一目惚れですか?

 私が二人を交互に見ていますと、いきなり、リバーがメグに向かって、がばーっと頭を下げて、

「ありがとうございます!こんな姉の友達になってくれるなんて、なんて物好きなんでしょう!ですが、その物好きに感謝します!本当にありがとうございます!」

 それから、リバーは何度も頭を下げました。ち、ちょっと大袈裟じゃありませんか?


「良かったですねー!こんな物好きな方がいらっしゃって!自分、嬉しいです!」

 ルークが袖で目元を拭いながら言いました。何故、泣くんですか?!


「キャスの弟さんと護衛さんて、貴女と一緒で変わってるの?」

 と、メグがヒソヒソと私に言いました。私とルークはともかく、リバーは普通ですよ!


「是非、カーライル家に遊びに来て下さい。両親もお会いしたいと思いますので」

 と、リバーが言いますと、メグは真っ赤になって、

「え、ええ。是非。必ずご両親が揃ってらっしゃる時にお伺いさせていただきます」

 ・・・メグが真っ赤になったのは、リバーに誘われたせいではありません。


 お気づきになっている方もいるかもしれませんが、メグは恋愛小説が大好きなのです。・・・ええ、若干引くぐらい好きなんです。

 特にメグは放蕩者が真実の愛に目覚めるお話が大好きなんです。

 放蕩者で、真実の愛に目覚めた・・・誰か思いつきませんか?


 そう!学園始まって以来、最恐にして、最悪の問題児と言われていた現カーライル公爵こと、私の父、アンドレアス・ロクサーヌです!



「ぎゃああああっ!」

 私はメグの部屋に入るなり悲鳴を上げました。

 なんと、私の父の等身大の姿絵が壁に貼ってあるのです!ぎゃあっ!

「いいでしょう?あなたのご両親の実体験を元にした小説の初版特典の姿絵よ!」

 メグは自慢げに言います。


 実は私の両親の学園時代を元にした恋愛小説が出版されているのです!

 メグは放蕩者が真実の愛に目覚めるお話が前々から好きで、それを地で行く私の両親はメグにとって、憧れのカップルなのです。

「シーア様のお誕生日パーティーでお会いした時は本当に嬉しかったわー」

 そんな風には見えませんでしたが・・・。

 ちなみにメグのお父様であるバドレー公爵様を私の父がこてんぱんにやり込めたことがありましたが、その時にメグは本格的に父のファンになってしまったのです。

「シーア様とお友達になったのも、カーライル公爵様の話で盛り上がったからなのよ。シーア様もこの姿絵を持っているわよ」

「し、シーア様・・・な、何を・・・」

 シュナイダー様がいながら、何をやってるんですかー?!


 それにしましても、

「この姿絵も小説も、父は許可を出しているんですか?小説は名前を変えてはいますけど、誰でも父のことだと分かると思うのですが・・・」

 と、私がメグに疑問をぶつけますと、

「そ、そうじゃないかしらー?」

 メグは思いっ切り、私から目を反らしました。

 許可してないようです!(本の存在すら知りません)


 ちょっと照れ臭いなー。と、思いつつ、私はその小説を読ませてもらいました。

 ですが、衝撃的な内容でした!

「酒、タバコは当たり前。喧嘩も日常茶飯事。無断外泊もしょっちゅう・・・これって、本当に私の父の話ですか?盛ってません?」

 メグは首を振って、

「カーライル公爵様の学園時代の悪友がお金欲しさに情報を売ったらしいわ。五大公爵様の情報は高値で買ってくれるそうよ。・・・だから、真実に近いと思うわよ」

 私は唖然としていましたが、

「よ、良く退学になりませんでしたね」

「喧嘩に負けた人は学園側に話したら、殺されるかもしれないと恐れて、黙っていたらしいわね。ちなみにカーライル公爵様は一度も喧嘩に負けたことがないそうよ。涼しい顔をして、相手の腕の骨を折っていたらしいわ。まあ、殺されると思っても当然ね」

「ひぃっ」

「お酒とタバコ、無断外泊については、ばれないように上手くやっていたんでしょうね。それに、当時は寄付金が物を言う時代だったし、カーライル公爵様は全教科でトップだったから、先生は誰も強く言えなかったのよ。・・・噂だけど、カーライル公爵様は学園長の弱みを握って、脅してたらしいのよ。『裏の学園長』と呼ばれていたそうよ」

「ひぃーっ」

 リバーの腹黒さが可愛く思えます。


 更に・・・。

「俺に落とせない女はいないと公言して、落とせるか落とせないかで、お友達と賭けをしていた?!」

「学園の先生も口説き落としたらしいわよ」

 更に、更に・・・。

「ぎゃー!お父様って、学園時代に未亡人の愛人さんがいたんですか?!おまけにその愛人さんとお母様が対決したんですか?!」

「ああ・・・未亡人の愛人とは、学園入学前からの関係だったそうよ。さすがね。並の放蕩者ではないわよね」

 そんなことで感心しないで下さい!


 ショックです!お父様は言わば、中学生の時に愛人さんがいたと言うことになります!私、もうファザコンやめます!(キャスはそもそもファザコンではありません)


「でも、本当かどうかは分からないからね。キャス。ちょっとご両親に確認してよ」

 そんなこと出来ませんよ!私が『お父様は学園時代に未亡人の愛人さんがいたんですか?お母様はその愛人さんと対決したんですか?』なんて聞いたら、両親は卒倒するかもしれません!


 私は読む気力がすっかりなくなってしまったので、小説をそっと閉じますと、

「この姿絵はいつの時なんでしょうか?」

「何年か前のパレードの時よ」

 と、メグは言ってから、むすっとした顔になると、「一昨年も去年も五大公爵様はパレードに参加しなかったから、私、とっても残念だったわ」

 あ、パレードについて説明します。

 この国には初代国王陛下であるアルルスタン様の誕生を全国民で祝うお祭り(生誕祭)があります。

 生誕祭は8日間ありまして、その間は祝日となり学園もお休みです。

 もうクリスマスとお正月とお盆が一緒に来たようなとっても賑やかな日が8日間続くのです。

 その初日と最終日に王族方と五大公爵様方がパレードを行っていまして、王都の皆様は毎年それはそれは楽しみにしておりました。

 五大公爵様方は普段あまり表には出ませんので、そんな五大公爵様方を確実に見ることが出来るパレードは大人気なのです。

 更に五大公爵様方が得意な攻撃魔法をアレンジし、皆様の前で披露します(私の父は嫌がってますが)。まるでマジックショーのようなんですよ。それも楽しみにされていました。

 ところが、ダンレストン公爵家の一件での連帯責任で、公の行事に参加する事を五大公爵家は禁止されましたので、当然、パレードにも参加出来なくなりました。

 王都の皆様は、とてもがっかりされたそうで・・・。


 そうなんです。それが、国王陛下の人気を下げたもう一つの理由なんです。

 貴族院の議員からもパレードくらいは参加させてはどうかとの声があったそうですが、国王陛下は首を縦には振らなかったそうです。


「去年のパレードなんて寂しいものだったわ。国王陛下と王妃様だけだったから」

「そうなんですか。私は毎年領地であるお祭りしか知らないので・・・」

「王族方は15歳になるまでは国民の前には出ない事になっているし、ジャスティン殿下も参加されなかったから」

 もう五大公爵となる事が決まっていたジャスティン殿下は参加を見送ったのです。


「一昨年は前アンバー公爵様の喪に服していたから仕方ないけど、去年は新しいアンバー公爵様のお披露目にもなるはずだったから、余計に残念に思っていたのよね」

 ちなみにアンバー公爵様はさすがシュナイダー様のお父様なだけあって、とても美形です。

「今年はどうなのかしらね。ダンズレイ公爵様のお披露目にもなるし」

「うーん。厳しいと思いますよ」

「そう・・・でも、レオンハルト殿下が初参加されるから、楽しみね」

「そうですね!私も今年は王都にいますから、とっても楽しみです!」

「まあ、キャスはその前に仲直りしなさいよね」

「うっ・・・」

 ・・・私とレオ様はまだ仲直り出来ていません。


「そんなことで、ローズマリーさんの恋敵になるなんて、良く言えるわね。喧嘩してたら、意味ないじゃないの」

 と、メグが呆れたように言いました。お、おっしゃる通りです。

 私は肩を落としてしまいましたが、

「それで?明日、シュナイダー様とデートなんでしょう?」

 メグがにやりとしました。

 私は真っ赤になりますと、

「で、デートじゃないですよ!二人だけで会うだけで・・・」

「それって、デートじゃないの」

「で、でも、シュナイダー様はそにょ・・・あにょ・・・」

 私が右と左の人差し指をくっつけたり、離したりしながら、もじもじしていますと、メグは笑って、

「余計なことを考えないで、楽しんでらっしゃい!」

 と、励ますように言ってくれましたので、


「はい!」


 私は笑顔で答えました。


 ちょっと緊張しますが、楽しみです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ