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ぼっちだからこそ、出来ることもあるのです

「えっ!ルーク、お休みなのっ?!」

 朝、私は女子寮の玄関前で声を上げました。

 リバーがお迎えに来てくれましたが、ルークはいません。何故なら・・・。

「そう。今日、写生会なんだよね?外に行くから、キャスを守るために、力をつけるとかなんとかで、昨日から馬鹿みたいにたくさん食べててさー、おなか壊しちゃったんだよ。馬鹿だよねー」

 リバーはそう言って、笑ったものの、「ルークは這ってでも行くって言ってたけど、さすがに止めた」

「そ、そう。それはしょうがないわよね」

「大丈夫?」

 リバーは心配そうに・・・「写生会は2、3人で組んで、一緒に行動しないといけないんだよ?」

「う、うん」

「参ったね。レオ様と仲直りしてないんだろう?」

「・・・」

 そうでなくても、レオ様とローズマリー様の仲間に入れてもらうわけにはいきません。「だ、大丈夫よ!何とかなるわ!それより、リバーのクラスはもう写生会は終わったんでしょう?絵はどうだったの?」

 と、リバーを安心させようと無理して明るく言いますと、リバーはこれでもかと眉をしかめて、

「僕、どうしてあそこまで絵の才能がないんだろうね」

 ・・・しつこいようですが、私とリバーには芸術的才能が全くありません。もう自分でもゾッとするくらいです。

「だ、誰にも見られてない?」

 信奉者の皆さんでさえ、いなくなってしまうかもしれません!

「シュナイダーが上手く隠してくれたよ。ただ、シュナイダーは思いっ切り見てるのに、相変わらずの無表情なんだよねえ。笑ってくれた方が何だか救われると思うんだけどねえ・・・」

「・・・」

 分かるような気がしました。


 週に1回、2時間続けてある課外授業ですが、今回は写生会が行われます。

 絵を描くことで、イメージ力を向上させることが目的のようです。魔法はイメージすることも大事ですからね。

 写生会は学園の敷地内にある湖とその湖が見下ろせる丘で行われます。

 そして、困ったことに、2人1組か、3人1組で行動することになっているのです!

 普通ならルークがいるので、何の心配もなかったのですが、ルークは体調不良でお休みなのです!

 何故こんな時にー!と、叫びたいくらいですが、仕方ありません。

 ルーク、早く良くなって下さいね!


 『誰かと組んで何かをする』、『グループに入れてもらう』・・・これらはぼっちにとって非常に難しい問題なのです!だって、誰も私と組みたがらないのですからね!

 前世では、先生が『誰か野崎さんと組んであげなさい』や『野崎さんを入れてあげなさい』と、言ってくれてたんです・・・。

 私、恥ずかしさと情けなさでいっぱいでした・・・。辛かったです・・・。


 ぼっちはこういう時に困りますよ・・・と、思いつつ、歩いていますと、

「おはようございます」

 私の隣をマーガレット様が颯爽と通り過ぎて行きます。

「お、おはようございます」

 と、私は挨拶を返しました。

 私はまたとぼとぼと歩いていましたが・・・ハッとしました。


「ま、マーガレット様!!」


 マーガレット様はびっくりしたらしく、体をびくりと大きく震わせますと、振り返って、

「な、何ですか?そんな大声を上げて・・・レディとして」

 と、私に注意をしようとしましたが、私はマーガレット様の前まで歩いて行きますと、


「し、しゃ、写生会、わ、私とご一緒してくれませんか?!」


 マーガレット様は目をぱちくりとさせました。

「お、お願いします!」

 私は頭を下げました。

「・・・」

「・・・」

 う・・・。反応がありません。

 やっぱり私みたいな挙動不審女は嫌ですよね。一人でどこかに隠れていましょうか・・・。なんて思いながら、顔を上げますと、「?」

 マーガレット様は真っ赤になっています。

「あの、顔が赤いですよ?熱でもあるんじゃないですか?」

「あ、赤くなんかありません」

 マーガレット様はそっぽを向きました。

「はあ・・・なら、いいのですが・・・あ、さっき言ったことは忘れて下さい。すみませんでした」

 と、私が頭を下げて、行こうとしますと、

「な、何故忘れて下さいなんて言うのですか?」

「え・・・マーガレット様が嫌がっていると思いまして・・・」

「べ、別に嫌だなんて言っていないではないですか」

「えっ」

「ま、前の席のよしみでご一緒してあげてもいいですよ」

「ま、マーガレット様・・・」

 私、感激しました!「あ、ありがとうございます!」

「・・・別に礼を言われる程のことでは。さあ、教室に行きますよ」

「は、はいぃっ・・・うっ、ううっ」

 私、感激のあまり泣いてしまいました。

 マーガレット様はギョッとして、

「貴女、何を泣いているんですか!」

「す、すみませんー・・・嬉しくてー・・・」

「貴女は本当に大袈裟です!」

「す、すみませんー・・・ううっ」

「もう!私が泣かしているみたいじゃないですか!」

「うー・・・泣かしてるんですー・・・」

「違います!ああもうっ!早く泣き止んで下さい!」

 マーガレット様にはきゃんきゃん吠えるように叱られましたが、私の嬉し涙はなかなか止まりませんでした。



 そんな私とマーガレット様の後ろをローズマリー様と一緒に歩いていたレオ様が自分のことのように嬉しく思いながら、笑顔を見せていたことには気付きませんでした。



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