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いじめっ子への道は厳しいです

 ひ、ひど過ぎます。


 自分でも、この『ども噛み』っぷりにはドン引きです。


 ある意味凄いです。もう一度、同じことをしろと言われても、出来ません。



 しかし、この場にいる他の方たちの衝撃は計り知れません。特にレオンハルト殿下はびっくりでしょう。


 私は殿下の反応が怖くて、顔を上げることが出来ませんでしたが・・・。


「姉は、『お初にお目にかかります。カサンドラと申します』と言っています。初めての方には緊張してしまうのです。お許し下さい」

 リバーが素晴らしいフォローしてくれました!って言うか、良く分かりましたね!


 何と素晴らしい弟なのでしょう!私、リバーがいないと生きていけないのではないでしょうか!お礼の代わりに、一週間分の私のおやつは全てリバーのものです!


 私はリバーのフォローを無駄にしてはいけないと思い、スカートをつまんで、丁寧にお辞儀をし、

「お、お許しください」

 幸い、軽いどもりだけで済みました。ふぃー。


「じゃあ、ランチにしましょうか」

 なかったことにするのが一番と思ったのか、母はパンと軽く手を叩いてから、努めて明るく言いました。

「そうだね。レオナード君、おなかすいただろう。食堂に行こうか」

 父も朗らかにそう言うと、殿下を食堂のある方向へと促しました。

「はい。ありがとうございます」

 ・・・うーん。レオンハルト殿下の横顔は何とも読み難いです。


 そして、私は父と殿下の後をリバーと並んで歩いて行きます。

「リバー、ありがとう」

 私はこっそりお礼を言いました。

 リバーは微笑んで、

「大したことじゃないよ」

 大したことですよ!

「ねえ。私が言ってたこと良く分かったね」

「双子だもん。僕が分からなくて、どうするのさ」

 私は笑顔になると、

「リバー、大好き」

 と、言って、リバーの腕に抱き付きます。

「歩きにくいよ」

「いいじゃない」

 と、言ったところで、視線を感じ、そちらに目を向けますと・・・。


 私はどきっとしました。

 レオンハルト殿下があの例の値踏みするような目で見ているのです。

 こ、怖いです。



 それから、5人で、ランチの時間となりたした。

 父はレオンハルト殿下にカーライル公爵家の領地の話をしています。

 そんな中、私は粗相をしないよう、食事に集中していましたが、

「キャス、リバー。食事が終わったら、レオナード君に屋敷内や庭を案内してやってくれ」

 と、父が言いましたので、

「はい」

 と、リバーが答え、

「は、はい」

 私も答えました。

「仲良くするんだよ」

 ・・・それは無理な相談です。いじめてやるんですからね。



 ですが・・・食事後にリバーと共に屋敷内を案内しながら、私は考えます。


 カサンドラはどうやって、両親やリバーの目を盗んで、殿下をいじめたのでしょう?両親はともかく、リバーとはほとんど一緒です。

 何より悪役顔をして、殿下をいじめているところを可愛い弟には絶対に見せたくありません。


「じゃあ、庭に行きましょうか?」

 と、リバーが言うと、殿下は微笑みながら、

「是非、お願いします。カーライル公爵家のお庭は素晴らしいでしょうから、見てみたいです」

 ・・・うーん。施設がどんなところか分かりませんが、人物設定をもう少し何とかした方がいいのではないでしょうか。5歳の台詞とは思えません。リバーは賢い子です。父の『レオナード君』話に疑いを持つのではないでしょうか。



 私たちは2階にいたので、階段を降りて行きます。リバー、殿下、私の順です。

 そこで私、ひらめきました。

 殿下の背中をトーンと軽く押してみてはどうでしょうか。ちょっとヒヤリとさせてみるのです。ついでに私はあなたにいい感情を持ってませんよアピールにもなるはずです。そして、何より姉の悪役顔をリバーに見せなくて済みます。


 ・・・よし。


 決心した私は殿下の背中を押せるよう両手を上げました。

 変な汗が背中を流れます。

 力の加減を間違えてはなりません。軽くです。かるーく。

 リバーを巻き込んではいきませんので、リバーが階段を降り切ってからです。

 殿下に怪我をさせてはなりませんので、最後の段に片足を置いてからです。

 そんなことを考えながら、階段を降りていた私。当然、自分の足元は疎かになっています。


「ひゃっ?!」


 案の定、私は階段を踏み外してしまい、次の瞬間、体が宙に浮きました。

 私の声を聞き、振り返った殿下の横をそのまま通り過ぎ、見事に顔から床に着地してしまったのです。



 リバーも殿下も唖然としていましたが、

「キャス!」

 リバーが駆け寄り、殿下も私の傍にしゃがむと、

「カサンドラ様、大丈夫ですか?」

 と、聞きました。


 私は顔だけ上げ、

「だいじょ・・・」

 と、言おうとしましたが、

「うわあああぁっ!」

 と、殿下が怯えたような声を上げました。


 それも当たり前の反応です。顔から着地した私の鼻から盛大に血が噴き出したのですから・・・。



 殿下をヒヤリとさせる作戦には失敗しましたが、心にちょっとしたトラウマを植え付けることには成功したようです。


「ふふっ」

 満足の笑みを浮かべた後、私は気絶しました。


 その笑みにレオンハルト殿下が更に恐怖したとか、しないとか・・・。



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