シュナイダー様と内緒話
あるお休みの日・・・。
今日はリバーたちと野鳥さんを探しに行くのです。何回か行っていますが、今日は朝からで、お弁当も持って行きます。
楽しみで早く起きてしまった私は早めに玄関にやって来ました。
リバーたちが迎えに来てくれる事になってます。
私が寮の玄関脇にある花壇を見ていると、何となく気配がしましたので、そちらに顔を向けますと、
「あ・・・」
レオ様がやって来ました。「おはようございます」
私は頭を下げました。
「・・・おはよう」
「・・・」
「・・・」
「失礼します」
と、私は言いますと、駆け出しました。
レオ様とは相変わらずです。挨拶は一応しますけどね。ふぅ。
私が男子寮まで来ますと、リバーとルークが男子寮の玄関から出て来ます。
リバーが私に気付いて、
「あれ、キャス。来たの?」
「うんっ!楽しみで早く起きちゃったから!」
ところがルークは血相を変えると、
「カサンドラ様!一人でこんなところまで来たら、ダメですよ!」
「もー、大袈裟よー」
「それより、キャス。レオ様に会った?」
「ええ。・・・挨拶だけで、話さなかったけど」
と、私が言いますと、リバーは溜め息をつきました。うっ。「ろ、ローズマリー様とデートみたいね」
「レオ様、意外にマメだよね。休みの日はほとんどデートしてるよね」
愛ですよ!愛!
「そりゃあ、将来のお妃様と」
と、ルークが言い掛けましたので、私は慌てて、ルークの口を塞ぎました。
シュナイダー様と一緒にアーロンがやって来たのです。
レオ様がローズマリー様を妃にしたいと思っているなんて、アーロンが知ったら、さすがにショックを受けるに決まってます!
「おはようございます!シュナイダー様、アーロン」
結局、アーロンと呼び捨てにするようになりました。この間、『ずっとアーロンって呼んでるね』と、リバーに指摘されたのです。私もアーロンも気付いてませんでした!
「キャス様。おはようございます」
私が呼び捨てにする代わりに、アーロンには『キャス様』と呼んでもらってます!
アーロンとは仲良しになりました!歴史好きと言う共通点がありますから、話が合うのです!
リバーもアーロンは笑うとお父様に似てるね。と、言ってました。
やっぱりそうなんですね!と言うことは、私、ファザコンです!もう決まりです!ぎゃっ!恥ずかしい!
私が内心恥ずかしがっておりますと、
「キャス・・・ルークが死ぬよ?」
リバーが言いました。
「え?」
ルークが真っ赤な顔で私の腕を叩いていました。「あっ!」
ルークを窒息させるところでした!
私は慌てて、手を離しました。
「ぜー、ぜー、し、死ぬかと・・・」
ルークは本当に苦しそうです。
「ルーク、ごめんなさい!」
「い、一体、な、何なんです?」
ルークは口を塞がれた理由が全く分かっていないようです。
「・・・」
うーん。ルークには口止めしておく必要がありますね。
とりあえず、森に向かいます。
「それにしても、双眼鏡はとても高価でしょう?」
と、シュナイダー様が言いました。
「そうなんですよー。長年おこづかいを貯めてたんですよー」
なのに、危うく、没収されるところでした!
「何の為に買ったの?」
と、リバーが聞きます。
「だから、野鳥さんの為よ」
はぁ。双眼鏡は校舎に持ち込めないんじゃ、意味がありません。
私、最近気付きましたが、攻略法以外ほとんど忘れてしまっています。イベントなんて、いつ何時起こっているやらさっぱり状態です。何故、メモにしておかなかったんでしょうか。あ、私、学園に入れば、自然に思い出すと思っていたせいですね。当てが外れました。
リバーやシュナイダー様にローズマリー様と何かありましたか?なんて、聞けないし・・・私、ほんとにポンコツでしたよ。
悪役令嬢関係なく、レオ様とローズマリー様は上手くいってますし・・・私、何のために存在しているのでしょう。はぁ。
「キャス。あの木の上・・・鳥の巣があるよ」
リバーが私に双眼鏡を持たせて、「そのままの位置で覗いてみて」
「うん」
私が双眼鏡を覗きますと、「あ、雛鳥さんがいます!可愛い!親鳥さんがいないので良く見えますね!」
すると、ルークが目を凝らしながら、
「三羽いますねー」
「えっ。見えたの?」
リバーが驚きの声を上げます。
「うん。視力いいから」
「良すぎだろう!」
「えー?そうかなー」
「・・・」
・・・双眼鏡でやっと見えるくらいなのに。野生児ですか?「あ、アーロン、雛鳥さんよ。見て見て」
「ありがとうございます」
私はアーロンに双眼鏡を渡しますと、
「あれ、シュナイダー様は?」
「ちょっと歩いて来るって言ってました」
「そう・・・でも、一人でなんて危なくないかしら?迷子にならないかしら」
と、私が心配すると、リバーが笑って、
「キャスとは違うから大丈夫だよ。・・・あ、でも、迷子になって、焦っているシュナイダー、見てみたいなー。あはははっ!」
色々と失礼です!
ちょっと疲れた私が敷物の上に座っていますと、
「カサンドラ様」
シュナイダー様がふらりと戻って来ました。
「あ、シュナイダー様。どちらに行ってたんですか?」
「ちょっと・・・」
シュナイダー様は言葉を濁しつつ、大木に向かって逆立ちしているルークとそんなルークを見て笑っているリバーとアーロンに気付くと、「あれは何でしょうね」
私は笑ってしまいますと、
「何でしょうねえ?それにリバーもアーロンも何がそんなに可笑しいんでしょうね」
「まあ、楽しそうで何よりです」
と、シュナイダー様は言いながら、私の隣に座りました。そして、「カサンドラ様」
「はい?」
私は隣にに顔を向けて、「!」
思ったより、シュナイダー様が近くにいて、驚いた私はのけ反りそうになりましたが、
「次の、あ、いえ、次の次のお休みのことなんですか」
「は、はい」
「私のために時間を作ってくれませんでしょうか?」
シュナイダー様はいつもより柔らかい表情でそう言いました。
「え・・・」
「ダメですか?」
「いっ、いいえっ」
私は何度も首を振りました。
「では、決まりですね」
そう言って、シュナイダー様は今度は、な、何と!微笑んだのです!ぎゃあっ!超至近距離です!
シュナイダー様は話は終わりとばかりに立ち上がると、
「このことはリバーはもちろん、他の誰にも内緒で」
と、言って、唇に人差し指を当てました。私が何度も頷きますと、シュナイダー様も頷いてから、リバーたちのところへ行ってしまいました。
ま、まさか、シュナイダー様からデートのお誘いですか?!
ぎゃああああっ!
シュナイダー様とのデート(?)はちょっとだけ先のお話になります。
次話の展開は急にどうした?と、思われそうですが、重要な出来事に繋がっていくお話になると思います。




