取り巻き自然発生?
私、レオ様と喧嘩をしてしまいました!
正直、何故こうなってしまったのか、さっぱり分かりません!
「まあ、いいか。レオ様がローズマリー様と上手く行けば」
「ちっとも良くないですが」
ルークが目を吊り上げています。
「何ですか・・・?」
私とルークはサンドイッチを食堂で包んでもらって、人気のない裏庭でランチ中です。
あんな恥ずかしい喧嘩をしてしまい、皆さんに朝からずっと注目されていましたので、ランチくらい人目を気にせず食べたかったのです。
「何ですか?では、ありません。自分、土の授業で一緒でしたが、殿下の機嫌がとても悪くて、怯えている生徒さんもいたくらいです。ここままでは何かと支障が出るに違うありません。早く仲直りして下さい」
私はサンドイッチをちびちびと食べていましたが、
「・・・仲直りって、どうやってするの?私、誰かと・・・リバーとも喧嘩したことがないから、分からないんだもの。ルークは妹さんたちとどうしてるの?」
ルークは溜め息をつきますと、
「謝ればいいでしょう?リバー相手じゃないからこそ、謝らなければなりません。それから、妹たちは泣けば何とかなると思っていて、うるさくてかなわないですし、こっちが損するだけですので、喧嘩なんかしません」
「そうなの・・・兄弟も色々ね」
「ええ、色々あります・・・ではなくて!今はカサンドラ様と殿下の話です!」
「・・・でも、レオ様も悪いのよ?ほんとよ?」
ルークは眉をしかめて、
「自分、カサンドラ様だけが悪いなんて言ってません。ですが、カサンドラ様には全く非がないのですか?」
「確かに変態行為は言い過ぎました・・・」
と、私がぽつりと言いますと、ルークは頭を抱えて、
「自分も聞きましたが、何故そんなことを・・・」
「だって、膝枕を強要するなんて、変態さんじゃない」
「確かに・・・カサンドラ様に膝枕してもらって、嬉しそうにしていた殿下は見たくなかったです・・・」
ルークが遠い目になりました。
「レオ様、膝枕してもらえないから、苛々しているのかしら・・・ローズマリー様にしてもらったらいいんじゃないかしら」
「ローズマリー様、逃げませんかね・・・」
「今、膝枕をせがまれたら、ローズマリー様は確実に逃げるでしょうね・・・。でも、思いが通じ合ったらいいんじゃないかしら?そうよ!」
私は立ち上がりますと、「レオ様の心を穏やかにさせるためには、ローズマリー様の膝枕が必要じゃないかしら?!やっぱりローズマリー様とくっつける事が先決よ!」
と、声を上げました。
すると、
「何だかんだ言ってますけど、自分から謝りたくないだけでしょう」
うっ。ルーク。鋭い。
私はランチを終えると、ルークと別れ、お手洗いに行きました。
ルークにはお手洗いについて来るのだけはやめて欲しいとお願いし、ルークも何とか了承してくれました。
お手洗いから、教室に向かう途中、私は懐中時計を見ますと、
「もうちょっと時間がありますね」
・・・のんびりしましょうか。
私はぼんやりと窓の外を見ました。
・・・私、いくらローズマリー様と仲良くしてはいけないからって、あんなことをしてはいけなかったのではないでしょうか。だから、レオ様、怒っちゃったんでしょうか。
レオ様はお友達の出来ない私を心配してくれていたから、ローズマリー様と仲良くしたらどうかと言ってくれたのだと思うのです。なのに、私は・・・。
「はー・・・戻ろう」
私がとぼとぼと歩いていますと、
「貴女のせいよ」
と、言う声がしました。
ん?
私は階段を見上げました。この階段を上がっても、空き室やら物置しかないはずです。リバーとルークの三人で探検しましたからね。
気になった私は階段を上って行きました。
「貴女のせいで、カサンドラ様とレオンハルト殿下が喧嘩しちゃったんじゃないのっ」
え・・・。
「貴女が現れる前はとっても仲が良かったのよ?いつもお二人でいらっしゃったし、本当に楽しそうだったわ。私たちはその邪魔をしてはいけないと、カサンドラ様に話し掛けたいのを我慢していたのに」
ええっ。
「カサンドラ様は五大公爵家の令嬢よ。貴女のような田舎の小娘が敵うような方ではないの。レオンハルト殿下にはもう二度と近付かないでちょうだい」
えええー?!
な、何ですか?!何が起こっているんですか?!何故、取り巻きが自然発生しているんですか?!
一体誰ですか?!と、私が背伸びをしますと、顔だけが見えました。
壁を背にしているのはローズマリー様です。
そんなローズマリー様を取り囲んでいるのは同じクラスの方々でした。あれっ?私が声を掛けたら、逃げて行った皆さんではありませんか!
私が怖いのかと思ってましたが、違ったのですか?
「カサンドラ様はお顔に似合わず、いつもにこにこされていたのに、貴女が現れてからは、あまり笑わなくなってしまったわ。ああ。可哀相に」
顔に似合わずとは何ですか?!
「私はカサンドラ様が泣きながら、レオンハルト殿下から離れて行くのを見たわ」
いつですか?!
「いい?カサンドラ様は幼い頃から、レオンハルト殿下の婚約者と同然のように扱われて来られたの。レオンハルト殿下はそれはそれはカサンドラ様を大事にされて来られたわ。同じように幼い頃から交流があって、信頼されているシャウスウッド様をカサンドラ様の専属の護衛として付けられているのがその証拠よ」
ひぃーっ!ルークの事をそんな風に思ってたんですかー?!ほらー!ルークが専属騎士って連呼するからいけないんですよー!
「貴女なんか、その黒髪と黒い瞳があるから、ちょっと興味を持たれただけなのよ。いい気にならないでちょうだい。まさか、レオンハルト殿下の正妃になれるとでも思ってるの?」
「い、いいえ」
ローズマリー様は震える声で、「私はそんな恐れ多い事は思っていません。レオンハルト様は将来国王陛下となられる方ですから、私なんかとても・・・」
「分かっているならいいわ。・・・なら、レオンハルト殿下から離れてくれるわね?」
ま、まずいです!
私は辺りを見ました。ルーク?!いないのー?!
私は一人慌てておりましたが、
「私はレオンハルト様とはお友達ですので、離れる離れないではないと思うのです」
と、ローズマリー様は落ち着いた態度で、「私はレオンハルト様の幸せを何より願っています。その邪魔をするつもりはありません。ですが、ロクサーヌ様は婚約者でも、恋人でもないから気にしなくていいとレオンハルト様はおっしゃっていました。私はレオンハルト様の言葉だけを信じますから」
それは惚れ惚れとする程、堂々したものでしたが、
「何ですってえっ?!」
残念と言いますか、当然と言いますか、皆さんがヒートアップする結果となってしまいましたが・・・。
「何をなさっているんです?」
そこへ現れたのはマーガレット様でした。




