ヒロインを避けましょう
「はー。疲れましたー」
私は教室の自分の席に戻って、ぐったりとしました。
やっと、お昼休みです。
魔法学園の授業時間は一時限につき90分です。一日、四時限です。
お昼休みは60分、休み時間が10分、三時限目と四時限目の間にお茶の時間が、40分あります。午後は楽だと思われそうですが、午後は攻撃魔法の実技訓練が多く組まれていますので、体力の回復の為にお茶の時間があるんです。・・・私、何にも出来ないので何だか申し訳ないです。
「キャス。ルーク。一緒に食事をしよう」
と、レオ様がローズマリー様と一緒に来ました。
「あ、ではっ!自分とカサンドラ様は先に行って、席を取っておきます!」
と、ルークが言いました。
「それなら、私が」
と、ローズマリー様が言いかけましたが、
「いえっ!自分とカサンドラ様が何が何でも行きますので!」
と、ルークは言い張りますと、「カサンドラ様、行きますよ!走らず、急げです!」
「了解です!」
と、私は言いますと、先に教室から出て行き、
「お二人はゆっくり来て下さいね!」
ルークはそうお二人に声を掛けてから、私の後に続きました。
「あー、疲れちゃう。レオ様もローズマリー様と二人きりでいちゃいちゃしてくれればいいのにー。いちいち誘わなくてもいいのにー」
と、食堂に向かいながら、私が言いますと、
「あのー、カサンドラ様。ローズマリー様と仲良くしてはいけないと言うのは分かりますが、毎日これが続くんですか?」
「大丈夫よ」
私はぐっと親指を立てると、「ちゃんと対策は考えてるから!」
「はあ・・・」
ルークったら、疑ってますねー。大丈夫ですよ!
「すみません!隣り合ったテーブルが空いてなくて!ですから、殿下とローズマリー様とアーロンはこちらで」
ルークが4人用のテーブル席を手で示して、「それから残りはあっちですので!」
と、言ってから、やや離れたテーブル席を指差しました。
総勢7人が座れるテーブル席はありません。
一昨日までは4人用をくっつけてましたが、今日はわざと離れるように仕向けました!
リバーに食堂に向かうレオ様とローズマリー様を足止めしてもらうよう頼んでいたのです!
リバーはシュナイダー様、アーロンと共にレオ様たちを待ち構え、ローズマリー様を紹介してもらいました。
その間に私とルークでテーブルを確保しておいたのです。
リバーとシュナイダー様にローズマリー様の第一印象を聞きたいと言うのも理由ですが。
レオ様が何か言いたげに私を見ていますが、気付かない振りをしました。
レオ様!ごめんなさい!
悪役令嬢として、何も出来ていない私ですが、せめて、ローズマリー様と仲良くなることは全力で避けたいのです!
私が変な女だと知れば、ローズマリー様ももしかしたら自分から避けてくれるかな?とは思いましたが、心の優しいローズマリー様は我慢して、付き合って下さるかもしれませんからね。やはり、私から避けるしかないのです。
リバーがレオ様たちの方を見ながら、
「びっくりしたな。ほんとにいるなんて」
「必ずいるって言ったでしょう?」
私は鼻高々になって言います。
「まあ、いるいないは別にして、僕は伝説とかって、馬鹿らしいと思ってたし」
私はショックを受けると、
「ば、馬鹿らしい?」
リリアーナ様の伝説を信じてる方はたくさんいるのですよ?!リバーは何を言うんですか?!
「確かに、アルバーダ国も大国になったし、他にもあったっけ」
「2ヶ国ありますね」
と、シュナイダー様が答えます。「その2ヶ国も目覚ましい発展を遂げましたね」
「ほらー」
「でも、僕は国を発展させるのは伝説なんかじゃなくて、国王はもちろん、国民全ての人の努力が必要だと思うんだよね。それがなくて、発展することの出来る国なんてあるわけがないよ」
「・・・」
た、確かに、その通りですね。
「レオ様がそんな伝説に頼る人だとは思わなかったけど、まあ、レオ様は伝説と言うより、リリアーナ王女みたいな女性が理想だから、それがローズマリーさんを好ましく思ったきっかけでも、今は純粋にローズマリーさんが好きなんじゃない?とても綺麗な人だし、僕みたいに何か腹に抱えてそうじゃないし」
私はドキッとしてから、
「り、リバーもローズマリー様のこと・・・そ、その、やっぱり綺麗って思うのね」
と、言いますと、リバーはにっこり笑って、
「でも、僕はもっと綺麗な人を知ってるよ
私は首を傾げますと、
「誰?」
「僕の目の前にいる人」
「え?」
私がきょろきょろと周りを見ていますと、リバーは楽しそうに笑って、
「キャスに決まってるじゃないか」
「?!」
ぎゃああああーっ!
私は真っ赤になりますと、
「あ、姉をからかうものではありません!」
まったくもうっ!この弟はお姉ちゃんをいい気にさせてどうするんでしょう!
私は赤くなった顔を手で覆っていましたが、
「キャス。次の休みは野鳥を見に行こうか?」
「!」
私はすぐに顔を覆うのを止めて、「うん!」
私の弟は最高です!お姉ちゃん、幸せです!
すると、
「自分も行きます!」
ルークが手を挙げました。
「僕とキャスの邪魔をするなよ」
リバーがしっしと手を払います。
「行く!」
「嫌だ。来るな」
「ずえったい行く!森に行くなんて、何があるか分からないんだしっ!」
と、ルークは言い張りました。
「リバー、いいじゃないの。ルークも言い出したら、聞かないんだから。・・・シュナイダー様もどうですか?」
と、私が言いますと、シュナイダー様は頷いて、
「行きます」
「・・・二人が良かったのに」
リバーはむくれていましたが、「あ、じゃあ、お菓子とお茶を持って行こうか」
「私がお茶を用意しますよ」
と、シュナイダー様が言いました。「ですが、ティーセットを持って行くわけにはいかないし・・・」
「私、水筒持ってます。あ、でも、やかんがない・・・」
「じゃあ、前の日に持って来てくれますか?」
「了解です!じゃあ、お茶はシュナイダー様だから、お菓子は残りの3人で用意しましょう!」
「うん」
「はい!」
次のお休みが楽しみです!
リバーがローズマリー様に一目惚れした様子はないので、とりあえず、安心しました!
油断は禁物ですけどね!




