悪役令嬢vsヒロイン
「ローズマリー・ヒューバートです。皆さんと仲良くなれたらと思っています。1年間よろしくお願いします」
ローズマリー様ははきはきと明るく自己紹介をしました。
うーん。さすがに私とは違いますね。素晴らしいです。
温かい拍手が起こり、私もつられて拍手しようとしましたが、慌てて手を下ろしました。私は悪役令嬢ですから、ヒロインに拍手を贈ってはいけないのです!
今日から授業が本格的に始まります!
ホームルームが終わりましたので、早速移動です!
治癒魔法の授業からです!やったー!
私がいそいそと準備をしていますと、
「キャス」
レオ様が話し掛けて来ました。
「あ、おはようございます」
「おはよう」
レオ様は挨拶を返しますと、「一昨日の事なんだが・・・」
「はい?」
立ち上がって、レオ様の方に体を向けますと、向こうにいるローズマリー様がこちらを見ている事に気付きました。
そうでした!
私はにっこりと笑いますと、
「レオ様。ヒューバート様に私を紹介して下さいますよね?」
その途端、教室中が静まり返ります。
「あ、ああ」
レオ様はローズマリー様の方を見ると、「ローズマリー」
と、手招きしました。
ローズマリー様は笑顔を見せると、
「はい」
と、言って、こちらにやって来ました。
ぎゃあっ!近くで見ると、更に美しいです!自分のしょぼさが際立ちそうなので、あまり近付きたくありませんが、悪役令嬢であるこの私、挨拶はきっちりしておきましょう!
「こちらが」
と、レオ様が私を手で示しましたが、
「私、自分でお話しますから、結構です」
失礼かとは思いますが、思いっ切り遮ってから、ローズマリー様に向かって、にっこりと笑いますと、「私、カーライル公爵家カサンドラ・ロクサーヌと申します。レオ様からヒューバート様のお話は聞いておりましたので、やっとお会い出来て、大変嬉しく思っております。あ、レオ様とは幼い頃からとても親しくしているんです」
『レオ様』と『とても』の部分を強調して言いました!
ちゃんと言えましたー!そりゃあもう、練習しましたからね!私もやれば出来るのです!
私はちらっとルークを見ました。
ルークが満足げに頷きます。
私も頷き返しました。
二人でどうやって挨拶をしようかと考えたのです!
上手く言えた私は万歳したいくらいでしたが、
「・・・」
ローズマリー様が言葉を失っている様子です。
ん?どうしましたか?
「あ」
ローズマリー様はハッと我に返りますと、「も、申し訳ございません。・・・レオンハルト様に女性のご友人がいるだなんて思っていなかったので・・・少し、驚いてしまって」
げっ!レオ様、私の事、話してないんですか?!
普通、こんなお友達がいて・・・とかなんとか話しませんかね?
あ、でも、ローズマリー様をわざわざ不安にさせる必要なんてないですね。
「そうですか。きっと、私の事なんて、ヒューバート様とお会いした瞬間、綺麗さっぱりと忘れてしまったんでしょうね。あまりにヒューバート様がお美しいから。おほっ、ほっ・・・げほっ、げほっ」
「キャス・・・大丈夫か?」
レオ様は心配と言うより、何かがおかしいとでも言うように怪訝そうにしていますが、私は気付かない振りをすることにして、
「はい。ご心配なく」
・・・高笑いしようと思いましたが、やっぱり出来ませんでした。難しい!
ですが!上手い切り返しだったのではないでしょうか?!
ゲームのカサンドラはたまにわざとへりくだった言い方をするのです。嫌味ったらしいったらないですよね。
「そんな」
ローズマリー様は赤くなりますと、「ロクサーヌ様の方がずっとお美しいです。私、金色の髪にずっと憧れがあって、羨ましいです」
まー!赤くなっちゃってますよ!何て可愛らしいんでしょう!
ですが、視力の検査をされた方がいいと思います。
誰が見ても、私の方がお美しいわけがないでしょうに。
私がローズマリー様の視力の心配をしていますと、
「あの、ロクサーヌ様。よろしければ、私と親しくしていただけたら・・・」
と、ローズマリー様が言いました。
げっ?!やばいです!
ここで面と向かって、嫌です!なんて、言えません!
「カサンドラ様」
私が声がした方を見ますと、シュナイダー様がドアから顔を出していました!
「シュナイダー様!おはようございます!」
「おはようございます」
と、シュナイダー様は言いますと、ローズマリー様に気付いて、驚いた顔をしました。ですが、シュナイダー様を良く知らない方だと驚いているとはとても見えないでしょう。
「あ、同じ授業ですもんね!」
「ええ。一緒に行こうと思いまして」
「ありがとうございます!」
私はノートやペンケースを持ちますと、「申し訳ございませんが、授業に遅れてしまいますので、失礼致します」
レオ様とローズマリー様にお辞儀をしますと、急いで、シュナイダー様の元へ行きました。
シュナイダー様、助かりました!ありがとうございます!
それから、いつの間にか、ついて来ていたルークと別れ(雑・・・)、私とシュナイダー様は二人で教室に向かっていました。
すると、
「驚きました。・・・リリアーナ王女のような方が本当にいるとは思っていませんでしたから」
と、シュナイダー様が言いました。
「・・・」
やっぱり、驚いていたんですね。私もシュナイダー様のことが分かってきました!「私は絶対いると思ってましたけどね!あ、ローズマリー・ヒューバート様とおっしゃって、レオ様がルークの御祖父様のところに行っていた時に出会ったそうですよ」
「ああ、なるほど」
「運命的だと思いません?これで、レオ様がローズマリー様と結婚の約束をすれば、完璧ですよ!」
ちょっと牽制しておきましょう!シュナイダー様、ごめんなさい!
私がシュナイダー様に心の中で謝っていますと、シュナイダー様が立ち止まりました。
「シュナイダー様?」
シュナイダー様は私を見ると、
「カサンドラ様はそれでいいのですか?」
「はい?何がですか?」
私がきょとんとしますと、
「カサンドラ様は殿下が好きなのではないのですか?」
シュナイダー様はとても真剣な表情をしていました。
私がレオ様を好き・・・?はいっ?!




