クラスは重要です
『自転車ごと川に落ちて、風邪を引いた』
ヒロインであるローズマリー・ヒューバートの入学式欠席の理由を最後の攻略対象キャラである、アーロン・ディアボルトが説明しました。
「くはっ」
レオ様は吹き出すと、「ローズマリーも相変わらず面白いな!」
と、言って、大笑いしました。
・・・『も』って、私も入るんですかね?
「15にもなれば、落ち着くと思っていたんですけど」
アーロンは苦笑いしました。
「あ、病気なのに、笑うのは良くないな」
レオ様は笑うのを止めると、「ひどいのか?」
「いいえ。でも、周りに移してはいけないので、もう何日か休むそうです」
「そうか」
「ローズはレオンハルト様との再会をとても楽しみにしていたので、とても残念がっていましたよ」
そのアーロンの言葉を聞いたレオ様は柔らかく微笑んで、
「私も残念だが、これからは毎日会えるしな。後で鳥を飛ばすことにすふよ」
「ローズ、喜びますよ」
・・・そうですね。これからレオ様はローズマリー様と薔薇色の日々を送るんですからね!幸いひどく具合が悪いわけではないようですし、楽しみがちょっと延びたと思えばいいのです!
早く良くなって下さいね!ローズマリー様!
入学式の後は早速、自分たちが所属する事になるクラスを確認し、移動となるのですが・・・。
「うっうっ」
私、泣いています。「リバーと離れるなんて、耐えられない・・・」
リバーとクラスが離れてしまいました!私とリバーを引き離すなんて、酷いです・・・。何かの陰謀ではないでしょうか・・・ううっ。
リバーは私の髪を撫でながら、
「しょうがないよ。僕たち、双子なんだから、ロクサーヌが二人いると面倒だよ」
そこの辺りは、男女の違いがありますので、『男性の方の』とか、『残念じゃない方の』とかで何とかなりませんかね?だって、3年間リバーと一緒になれないって事ですよね?
おまけに・・・。
「うー・・・シュナイダー様とも離れるなんて・・・」
私が恨めしげに言いますと、
「私もカサンドラ様と一緒でないのは残念です」
シュナイダー様!ありがとうございます!
「私も本当に残念です・・・ううっ」
私がめそめそしていますと、
「おい。私と一緒じゃ不満か?」
と、レオ様が眉をしかめつつ言いました。
「・・・」
私はちろりとレオ様に目を遣って、「嬉しく思ってますよー。ははー。あー。嬉しいー。あははー」
「何だその溜め息は!何だその棒読みは!」
レオ様は怒ってますが・・・どうせ、レオ様はローズマリー様のことしか見えなくなりますよ。私のことなんか、同じクラスだって事も忘れますよ。ちぇ。
「カサンドラ様!」
と、ルークが満面の笑みで、「カサンドラ様の専属騎士である自分は一緒ですよ!安心して下さい!」
「そうよね!ルーク!頼りにしてるわ!」
涙はすっかり乾いてしまいました!
「おいっ!私とルークの扱いが違い過ぎないか?!」
と、レオ様が文句を言いますが、無視です。無視。後でローズマリー様と鳥さんを飛ばし合って、喜び合えばいいじゃないですか。
この学園は一学年10クラスあります。一クラスにつき、32〜36名くらいです。
ですが、この学園は選択授業ばかりなので、毎日揃ってする事と言えば、朝と放課後のホームルームくらいになります。
後は週に1回、2時間続けて、課外授業なるものがありますので、それくらいですかね。
そして、クラスがどうなったかと言いますと、リバーがシュナイダー様、アーロンと同じクラスで、私はレオ様、ルーク、そして、ローズマリー様と一緒なんです!
やばくないですかー?!レオ様は前に私とローズマリー様、アーロンと仲良くなって欲しいとかどうとか言ってましたが、アーロンは構わないとして、ローズマリー様ですよ!悪役令嬢とヒロインが仲良くなるなんて、以っての外です!
どうすればいいのでしょうか?!
うーん。どうしよう?と、私はあれこれと悩んでいる内にレオ様とルークに引っ張られ、教室に入ってしまいました。
すると、教室中がしいんとなります。
ん?私たち、注目されてませんか?
他の生徒の皆さんの視線が集中しているようです。
「ぼーっとしてないで、座れ」
レオ様が椅子を引いて・・・。
「ここ、私の席ですか?!」
と、私は驚きました。
いつの間にかルークが私の席を確認してくれていたようです。
レオ様は笑って、
「他人の席に座らせるわけがないだろう」
すると、
「笑った」
「笑わない方だと思ってた」
「いや、さっきの会場でも笑ってた」
なんて言う声が聞こえて来ました。
あ、皆さん、レオ様を見ていたんですね。そりゃそうですね。
それにしても、レオ様は笑わない人だと思われているようですね。
ちなみに後で分かる事なのですが、レオ様はジャスティン殿下に王位継承権を放棄するよう迫ったとされ、冷酷な氷の王子だと陰で言われているそうなんです。
貴族の皆様はゴシップネタ好きなんですよねー。特に王族方のネタが。
話を大きくしたり、湾曲させたりと、元が何の話だったか分からなくなっちゃう事もありますからね。
レオ様も大変ですねえ。きっと、嫌な思いをする事がこれからもあるんでしょうね。
でも、ローズマリー様がいますからね。支えになって下さいますよ。
ちなみに、10クラスもあるのに、何故、都合良く、私とルークがレオ様と同じクラスになったかと言いますと、カーライル公爵である私の父が、学園側に頼んだんですよね。レオ様の闇の力を心配しての事です。
お父様ったら、何だかんだでレオ様の事を心配してるんですねー。仲良しさんですねー。
ですが、レオ様を甘やかしているわけではないのです。王族が学園に通う場合、1年生時は五大公爵家の人間か、前から親交のある方と同じクラスにさせる事が元から決まっているんですよ。
やっぱり王族だと周りが遠慮して、声を掛けるなんて出来ませんからね。
特にレオ様は独特なオーラがありますからねー、皆さん、しばらくは遠巻きから眺めているだけでしょうねー・・・。
なんて事を私はぼんやり考えていましたが、
「聞いてますか?貴女の番ですけど?」
前の席の方が私の机をトントンと指先で叩いていました。
「はい?」
我に返った私は前の席の方を見ました。
私の目にまず入って来たのは、知的さを思わせる銀色がかった灰色の瞳でした。あれ?この瞳はどこかで・・・あっ?!
「ぎゃあっ!」
私、びっくりして、声を上げてしまいました。
私の前の席に座っていたのは、バドレー公爵令嬢、マーガレット・フォスター様だったのです!




