入学式。その2
私は皆さんとこれから毎日会える事が嬉しくて、にこにこしていましたが、
「?」
視線を感じます。私が辺りを見渡すと、同じ新入生の方々が私たちを遠巻きに見ていました。
あっ!そうか!リバーたちは超絶イケメンですからね!おまけに王子様がいますからね!そりゃ、目立って、当然ですよ!
うーん、私、ちょっと離れていましょうかね。
私はちょっとずつ皆さんから離れていましたが、
「おい」
レオ様が私の手を掴みました。
その途端、黄色い声が上がります。えっ?
レオ様はそれに気付かないのか、
「キャス。ふらふらするなよ」
「ふらふらなんてしてませんよ」
ちょっと離れていようかなと思っただけなんですよ。
皆さんの中にいては、平凡な私が変に目立ってしまうかもしれません。
あんなしょぼい女があんなイケメンたちと親しいなんて、おかしいと思われるに違いありません。
ですが、悪役令嬢のこの私。目立つのを怖がっていいのでしょうか。
と、言うことで、しばらく考えてみました。
「・・・うっ」
ううっ・・・。やっぱり目立ちたくないです・・・。悪役令嬢どうこうより、この残念な性格を何とかしなければなりません・・・。
入学式は特に席が決まっていないので、目立つのは嫌なのですが、リバーたちと一緒にいる事にしました。一人よりましですからね。まあ、私なんて空気のようなものですからね。私が目立っているわけではありませんから、気にしなくていいですよね。こうなったら、開き直るしかありません。
私、女の子のお友達一人もいませんから、今日、入学式の会場に行く前に一人でいる方に話し掛けようとしましたが・・・ダメでした。どうしても、声が出ませんでした。
はー・・・卒業までに一人はお友達が出来たらいいのですが・・・。
入学式が始まりました。
長々と学園長さんのお話が続きます。
「・・・」
やばいです。眠くなって来ました。
昨日、眠れなかったせいですね。
どのみち学園長さんが何を話してるんだか、分かりません。
周りにも欠伸を噛み殺している方がいます。
きっと、私と同じで寂しくて眠れなかったんですよ。
お父様も寂しがってくれてますかねー。お母様はもう泣いてませんよね。めだかさんは元気でしょうか・・・。それから、ええと、眠い・・・。
「キャス。寝たらダメだよ」
リバーが私の肩を揺すりました。
「うん・・・?終わった?」
私、目をこすりながら、聞きました。
「まだ。それから、シュナイダーにもたれない」
リバーが怖い顔をしています。えっ!
私、隣のシュナイダー様の肩にもたれてしまっていました!ぎゃあああっ!!
「す、すみません」
私、真っ赤になりながら、謝りました。
「・・・いえ」
シュナイダー様が前を見たまま言いました。
「シュナイダーも起こしたら、いいじゃないか」
と、リバーが文句を言います。シュナイダー様はそんなリバーをちらっと見遣ってから、
「良く眠っていたもので・・・」
「だからって」
「ちょっと、リバー。止めてよ。私が悪いんだから、シュナイダー様に文句を言っちゃダメよ」
と、私はリバーに注意しました。
「・・・」
リバーはむくれると、「はいはい。寝たキャスが悪いよね。はいはい。キャスが悪い。はいはい」
と、言いますと、そっぽを向きました。
まあー!お姉ちゃんに対して、何て可愛げのない言い方でしょう!
「・・・」
私もむくれますと、じっと前を見つめました。
入学式はまだまだ続いています。
「ねえ。キャス」
と、リバーが小声で話し掛けて来ました。
私たち双子は険悪な空気が漂ったとしても、不思議とあっという間になくなってしまうんです。
「なあに?」
と、私が聞くと、
「レオ様だよ。何か珍しく落ち着きがないと思わない?」
私はシュナイダー様の隣の席に座っているレオ様をちらりと見ました。
そうなんです。レオ様は時折、きょろきょろと辺りを見渡しています。
ですが、実は私もなんです。
だって、ローズマリー様の姿が見当たらないんですよ!
一体、どうしたんですか?!ローズマリー様は目立って当然の方なんです!なのに、見当たりません!この会場に来ていないようです!
レオ様はとても心配そうな顔をしています。当然ですよね。愛するローズマリー様がいないんですからね!
一体、どうしたんですかー?!ローズマリー様ー!!
入学式は滞りなく終わりました。滞りなくですが、何だかとても長かった気がします。ふぅ・・・。
生徒の皆さんがぞろぞろと会場から出て行きます。
そんな中、私はレオ様にこっそりと、
「ローズマリー様、いませんでした?」
と、聞きました。
ひょっとしたら、愛の力でレオ様はローズマリー様の姿を見つけていたかもしれませんからね!
レオ様は首を振って、
「いや、いなかった」
とても残念そうです。
「そうですか・・・おかしいですね」
病気とか?まさか入学して来ないなんて事はありませんよね?!
その時、
「殿下ー、カサンドラ様ー。行きましょー」
と、ルークが呼びましたので、私がはーい。と、答えようと口を開きましたが、
「アーロン!」
と、レオ様が声を上げました。んっ?!
レオ様の視線の先には、最後の攻略対象キャラであるアーロン・ディアボルトがいました!
ぎゃあっ!いきなり登場です!




