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王子様の決意


『私は国王になる』

 レオ様はそう言いました。


「え、今、何て・・・」

 私は聞こえていましたが、思わず聞き返してしまいました。

 だって、レオ様は国王陛下になるジャスティン殿下を支えていきたいと言っていたのに、どうして、レオ様自身が国王陛下になるだなんて・・・。


「ダンレストン公爵家を襲った首謀者が捕まり、首謀者である魔術師の出身国には経済的制裁を与え、更にカーライル公爵家に伝わる魔法を研究していた証拠も掴み、この国に攻め込む意志があったとして、無期限で監視下に置く事にした。つまり、事件は完全に終結した」

 レオ様は淡々と話していきます。 

「・・・」

 私は黙って頷きました。

「それでも、犠牲者が出てしまった。誰かがその責任は取らなくてはならない。だから、ダンレストン公爵家は五大公爵家から除外されることになった」

「ー・・・」

 私は驚いた弾みで手を引こうとしましたが、レオ様は私の手を離しません。

「そして、そのダンレストン公爵家の令嬢であるサラ嬢は兄上の結婚相手として、相応しくない」

「な、何を言ってるんですか!そんなことありません!サラ姉様とジャスティン殿下はとっても思い合っていて・・・」

「だから、なんだ?」

 レオ様は冷たい声で言いました。

「え・・・」

「思い合っているからと、許してもらえるのか?・・・自分の家族が死ぬ原因を作った人間の娘を王妃として認める事が出来るか?」

「でもっ」

「ダンレストン公爵の息子はサラ嬢が兄上の婚約者となった事に浮かれ、傲慢な態度を取るようになっていたのは前から知られていた。・・・ダンレストン公爵やカーライルが再三注意したが、改めなかった。今回の事件は起こるべくして、起こったんだ。庇いようがない」

 レオ様はそこまで言ってから、私を見ると、「キャスはカーライルがあんな失態を犯すと思うか?」

 私は俯きましたが、

「思いません・・・」

 娘だからではなく、あの父が間違いを犯すとは思えないのです。


「カーライルや他の公爵と違って、そもそも五大公爵となる資格のない男だった。もし、事件が起こらなかったとしても、何かしらの問題を起こしただろう。・・・サラ嬢には確かに何の罪もない。だが、親は親。子は子。と、関係がないで済ませる事は出来ないんだ」

「・・・」

「私は犠牲者が出る前から、ダンレストン公爵家の五大公爵家の除外は考えていた。・・・そして、私は父上に失望していた」

 私はレオ様を見て、

「失望・・・?お父様を?」

「アンバーのじいさんがあんな風に亡くなった原因の一端は父上にもあると思っている」

「でも・・・ご病気だったのに・・・」

 レオ様は首を振ると、

「父上は五大公爵をただの駒としてしか見ていない。子供の頃から交流会には全く顔を出していなかったし、今も母上に頼まれて、仕方なく参加しているだけに過ぎない。それから、普段の執務は対話をせずにほとんどを書面のみで済ませてしまっている。だから、互いに信頼関係が全く出来ていない。・・・これはリバーやシュナイダーも知らない。私は恥だとも思っていたし、申し訳なくて言えなかった」

「どうして、国王陛下は・・・まるで、五大公爵様方を嫌っているようですね」

「そうだ。嫌ってるんだよ。特にカーライルと今のアンバー公爵を嫌っている」

 私は唖然としてしまいましたが、

「アンバー公爵様は別として・・・父・・・態度が大きいとかって思われたりして・・・?」

 レオ様は苦笑いしながら、首を振ると、

「単純に自分より優れているからだ。父上はカーライルより二つ、アンバー公爵より一つ年上になるが、父上は子供の頃から、何一つ敵うものがなかったらしい。だから、二人に対する劣等感から、余計に五大公爵を嫌い、ただの駒だと見下す事で自分を保ってるんだ。アンバー公爵と自分の妹の結婚だって、今だに良く思っていない。・・・ただの嫉妬なんだよ」

「嫉妬・・・」

 あまりに意外な話に私は驚きました。


「前国王である、私の祖父は皆の尊敬を集め、民からの人気も高かった。父上はどうしたってああはなれないと思っているのかもしれない。前国王は五大公爵をとても大事にしていた。その意趣返しもあって、父上は五大公爵を軽視するのだろう。誰でも、人を羨んだり、妬んだりする事はある。だからって・・・」

 レオ様はそこまで言って、唇を噛むと、「自分の個人的な理由で五大公爵を軽んじる国王なのに、五大公爵はそれでも盾として、尽くしてくれている。・・・だから、私がそんな彼等の為に、行動を起こしたいと思った。・・・そうなると、兄上は私と父上の板挟みになってしまう」

「ジャスティン殿下が苦しむと思ったから・・・」

 と、私は言いかけましたが、レオ様は首を振って、

「兄上には無理だと思った。優し過ぎるくらいの人だから。だから、代わりに私がやろうと思った。私は何より力が欲しいんだ。何かを成し遂げる為には力が必要なんだ。ただの第二王子ではダメなんだ。だから、兄上にサラ嬢と結婚したければ、王位継承権を放棄しろと迫った。ダンレストン公爵家に代わる新たな公爵家を兄上に作って欲しかったからだ。何故なら、五大公爵家に相応しい貴族家は、今現在、存在しない。不満を持ちながらも、権力を得たいがばかりに、取って代われるなら、代わりたいと思っている考えの浅い連中ばかりだ。どれ程の覚悟が必要なのか全く分かっていない。また同じような事件が起こるかもしれない。だが、兄上なら、魔力量も高いし、すぐにダンレストン公爵家の魔法を我物に出来るだろう。そして、王族だった人間が新たな五大公爵となるのなら誰も反対しないはずだ」

 レオ様は私の手を握る力を強めると、「・・・私はあんなに慕っていた兄上を自分の思う通りにしてしまった」

 ・・・そう言った声は震えていました。

「・・・レオ様」

 私はもう一方の手をレオ様の手に重ねました。

「ダンレストン公爵家も非難の的になるからと、切り捨てた」

 レオ様はそこまではやや俯いていましたが、「そして」

 顔を上げました。


「今後、態度を改める気がないのなら、父上を退位に追い込む」


 そのレオ様の声はもう震えておらず、眼差しには全く迷いがありませんでした。



 しばらく、レオ様も私も黙っていました。


 私は突然、色々な事を聞いたので、頭の中が整理出来ずにいました。


 すると、レオ様は私を見て、

「キャスはこんな私をどう思う?怖くないか?」

 と、聞きました。


 レオ様の瞳は不安に揺れていました。





 男の嫉妬も怖いなあ。と、思った事があり、このお話に取り入れてみました。


 実はレオ様は前国王に似てきています。

 ですから、現国王はレオ様にもやや複雑な感情を持っています。

 レオ様だけはそれを感じているので、どうしても王太子になる必要があると思ったのです。

 


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