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キャス、ふたたび王城へ

 カサンドラ・ロクサーヌ、まだ13歳です!すみません!

 レオ様のお誘いを受け、現在、王城へ向かっております!

 今回は日帰りです。私の父が王城へ向かう馬車に一緒に乗せてもらってます。リバーはお留守番です。

「リバーはどうして来なかったのかな・・・」

 と、私がつまらなそうに言うと、

「殿下が二人きりで話したいそうだから、遠慮したんだろう。キャス。もし、何かされたら、声を上げなさい。いいね?」

 向かいに座っている父が言いました。

「何かされたらなんてー、レオ様はそんなことしませんよー。もっと信用してあげて下さいよー。困ったお父様ですねー」

 私はへらへらと笑っていましたが、父は目をカッと開くと、私の両肩に手を置いて、

「誰が信用するか!キャスは警戒心がなさ過ぎる!男は皆、狼なんだぞ!もうすぐ14歳なんだから、そこのところをよーく肝に銘じておきなさい!分かったね?!」

 父がそう言いながら、私を揺さぶります。

「はひっ、はひっ、わ、かりまふ、たっ」

 お、お父様、酔います!酔います!


 そんなこんなで、王城へ到着です。

 父と別れ、お城の方の案内で居住棟に入りました。

 私、本当に一人になってます。お城で働く方は出会えば頭を下げてくださいますが、にこりともしません。前も思いましたが、これが普通なんでしょうかね。何だか全く歓迎されていないように思ってしまうんです。考え過ぎですかね・・・。

 私がびくびくしながら歩いていますと、

「キャス様!」

 と、私を呼ぶ声がしました!この声はシーア様です!

 私がどっち?ときょろきょろとしていると、シーア様が走って来て、どーんとぶつかるように抱きついて来ました。・・・うっ。朝食に食べた物が出そうです。

 シーア様はぎゅうっと私を抱きしめ、

「お元気な姿が見られて、良かった!私のせいで、あの魔術師がカーライル公爵家に行ったと聞いた時は、私・・・私・・・」

 シーア様は震えています。

 私もシーア様を抱きしめますと、

「大丈夫ですよー。あんな魔術師なんか父がえーい!って、懲らしめてくれましたから。・・・それに、シーア様が悪いわけではありません」

「でも、私ったら、聞かれたら、何でも話してしまって・・・」

 シーア様は昔、我が儘だった事を反省し、前は挨拶やお礼すら言わなかった侍女さんたちにも気さくに接していこうと心掛けていたのです。それが今回、裏目に出てしまったのでしょう。


 シーア様はぐすぐす泣きながら、

「私、考えなしでした。だから、もう・・・」

 私はシーア様を少し離して、シーア様の顔を見つめると、

「シーア様。シーア様は何も悪くありませんよ。全部、あの魔術師が悪いんです。シーア様が侍女さんたちと親しくしたいと思うお気持ちは素晴らしい事じゃないですか。・・・やめなくていいと思います」

「キャス様・・・」

「元気を出して下さい。私、シーア様の笑顔、大好きですから、見られないのは寂しいです!それに、シーア様が元気に笑ってくれないと、このお城中、暗くなっちゃいますよ!レオ様なんか仏頂面でしょう?!あれって、何とかなんないでしょうかねー!無理かー!」

 と、言って、私は笑いました。

 シーア様は吹き出しましたが、

「あ・・・」

 ・・・すぐにシーア様の笑みが消えました。

「?」

 私は首を傾げて、「シーア様?」

 シーア様が小さくなってます。ん?


 すると・・・。


「おい。誰が仏頂面だって?」

 ・・・背後から、いやーな空気が漂って来ました。ひぃっ!

「わっ、私、これにて、失礼致します!」

 私は振り返る事なく、逃げようとしましたが、

「はい。確保ー」

 あっという間に捕まりました!ぎゃー!「私の招待を受けておいて、逃げるとはどういうつもりだ?」

 レオ様は私の首に腕を回しています。レディに何てことをするんですか?!

「前に私がキャスは人を悪く言わないと言ったのは間違いだったようだな?」

「大丈夫です!レオ様とルークの事しか悪く言いません!」

「それの何が大丈夫なんだ?!」

「・・・」

 シーア様は唖然として、そんな私とレオ様を見ていましたが、そのうち声を上げて笑い出しました。




 シーア様と別れた後、私はレオ様と庭園を散歩することになりました。私が何となしにあの例の噴水を眺めていると、

「キャス。ありがとう」

「え?何がですか?」

「アナスタシアを元気づけてくれただろう?・・・私や兄上は最近あまりアナスタシアを気遣ってやる時間も余裕もなかったから」

「ああ・・・いいんですよ。そんなこと。でも、お役に立てて良かったです」

 と、私は言うと、ハッとして、「そうだ!鳥さんを私のところに飛ばしてくれて、ありがとうございました!お陰で私も元気になりました!」

「・・・」

 レオ様はじわーっと赤くなると、「あ、あれは、もう忘れてくれ」

「えー、嬉しかったですよ?私、笑顔が好きなんて、初めて言われました!」

「あー、聞こえない。全く聞こえない」

 レオ様が両耳を塞ぎながら言いました。

 もー、照れ屋さんですねー。


 それから、私とレオ様はベンチに座りました。

 周りには色とりどりのバラが咲き誇ってます。

「キャスは最近、どうしてた?」

 と、レオ様が聞きましたので、

「走ってました。私、何にも出来ませんから、せめて、逃げてやろうと思いまして。体力もつけます。どこまでも逃げてやるんです」

 私、とっても真剣に話していますが、予想とずいぶん違ったらしくレオ様はぽかんとしています。


「それから、死なないように自分で治癒魔法をかけまくってやるんです。学園に入ったら、頑張って、勉強します」

 私はぐっと拳を握り締めました。

「・・・」

 レオ様は何と言っていいのか困っているようですが、私はレオ様に笑いかけますと、

「無駄かもしれませんけど、何でもやってみたいんです。・・・自分が納得するまで。私にしか出来ない事があるはずですから。だから、何にもしないで泣くのはもうやめます」

 と、私は言ってから、空を見上げますと、「ルークは私を守るって言ってくれました。リバーは私のために強くなるって言ってくれました。だから、私もそう言ってもらえるに相応しい人間になりたいです。私を励ましてくれたレオ様とシュナイダー様に胸を張れる人間になりたいです」

「・・・そうか」

 レオ様は微笑むと、「頑張れよ」

「はい。でも、何年かかるか分かりませんけどね」

 私はそう言って、笑いましたが・・・。

 

 レオ様が私の手を握りました。

「・・・レオ様?」

 私はレオ様の横顔を見ましたが、レオ様は真っ直ぐ前を見つめています。

 そして・・・。


「キャス。私は国王になる」


それはとても静かな声でしたが、強い決意が込められていました。

 



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