現在、お掃除中です(ルーク視点)
自分、ルーカス・シャウスウッド、現在、カーライル家ご自慢(カサンドラ様に付けろと言われました)の池の掃除をしています。
カサンドラ様は庭には出れませんから、自分が代わりに掃除をしています。
カサンドラ様は申し訳ないだとか言ってましたが、なんだかんだでえらい細かい指示を出して来ました。
ですが、カサンドラ様自身はこんなにちゃんと掃除をしてるんですかねー。疑っちゃうなー。フォークを持つだけで疲れる人だと思ってますからねー。
カサンドラ様は昨日、自分の母親が作ったオレンジゼリー(約8人分)を一人で食べ切り、結果、おなかを壊すと言う呆れた事をやらかしてくれました。困った人です。
そして、お母様に叱られ、しばらく嫌いなミルク粥しか食べられないと言う罰が与えられました。
可哀相だと思った自分がカサンドラ様がそれまで食べていた物を吐いてしまっていた事をカサンドラ様のお母様に話しました。
お母様はショックを受け、涙を流しながら、カサンドラ様を抱きしめましたが、それとこれとは別ですからね。と、言い、カサンドラ様は結局、罰から逃れる事は出来ませんでした。
カサンドラ様は泣いてました。・・・泣かなくてもいいでしょうに。ミルク粥はおなかに優しいんですよ。
それでも、精神的には元気になったようで、そうなると、今度は色んな事を自分に聞いて来るようになりました。
リバーやカーライル公爵様の様子に、サラ様は大丈夫なのか、アナスタシア殿下は落ち込んでないだろうかとか・・・そんな事、自分が分かる訳がないでしょう。と、言っておきましたが、知ってたりするんですよね。自分の母親は本当に顔が広くて、王城、王都で起こっている事は何でも知ってます。ちょっと怖いくらいです。
例えば、サラ様はジャスティン殿下の婚約者と言う事で今までちやほやしていた生徒たちから、背を向けられるようになりました。おまけにずいぶん酷い悪口を言われているそうです。
今はジャスティン殿下が学園にいないので余計に酷い状態になっているそうなんですが、サラ様は元々、人柄の素晴らしい方ですので、助けてくれる方もたくさんいるそうです。
それから、アナスタシア殿下はとても落ち込んでいるそうです。何故なら、我が国を裏切った侍女にダンレストン公爵家、カーライル公爵家、アンバー公爵家の情報を聞かれるまま、答えてしまっていたそうなんです。・・・アナスタシア殿下の衝撃は如何ほどだった事でしょう。自分には想像出来ません。とても辛いと思います。でも、優しいご兄弟がいますからね。・・・ただ、そのご兄弟も・・・。
リバーやシュナイダーは比較的落ち着いて、王城での暮らしを送っているようです。
五大公爵様方は貴族院の議員の前で、今回の失態は全て自分たちの責任だと頭を下げたそうです。
物凄い罵声を浴びながらも頭を下げ続けたそうです。
五大公爵家そのものを無くしてしまえと言う声もあったそうです。
国民の方たちは、今回の事件を知り、とても衝撃を受けました。
実は国民の中には五大公爵を英雄と崇める方がたくさんいます。大昔から、カルゼナール王国は戦争では負けなしでした。それは外ならぬ五大公爵の活躍によるものなんです。
それに五大公爵がどれほど、この国の為に尽くして来たかも知っていますからね。
五大公爵研究家なんてのもいます。そんな人たちが五大公爵家の事を調べ上げ、世に発表して来たせいで、今回、こんな事になったのかもしれないわね。と、母親は知ったかぶって言ってました。
と、言う事で五大公爵はともすれば、王族方よりも国民に人気があったりします。だから、他の貴族は余計に五大公爵家を嫌ったりするんでしょうね。ただのやっかみですよ。小さい人たちです。
ちなみに、カーライル公爵様は見た目の良さもあって、特に大人気で、姿絵がかなりの高値で売られたりします。多分、ご本人は知らないでしょうが。
カーライル公爵様に叱り飛ばされたい。なんて言う女性がたくさんいるそうで・・・はて?何故わざわざ叱られたいんですかね。自分にはちょっと意味が分かりません。女性とは不可思議な生き物です。
となると、リバーやシュナイダーも将来大人気になるかもしれませんね。
あ、ちょっと話が反れました。
以上の事から、今回の事件を知った国民の方たちは英雄だと思っていた五大公爵家の失態が余計にショックだったようです。
そのショックから来る反動は凄まじく、ダンレストン公爵家の五大公爵家からの除外を求める運動にまで発展してしまっています。・・・当たり前と言えば、当たり前かもしれませんが、悲しいですね。
ただ、五大公爵家を無くせとは全く言いません。五大公爵の重要性を貴族たちより分かっているのでしょうね。
最後にジャスティン殿下が王位継承権を放棄した事はまだ公にはなっていません。
情報通の母親ももちろん知りません。
何故、自分が知っているかと言うと、殿下から手紙が届いたんです。
自分が国王となる・・・と。
殿下は何故、兄君を追いやってまで、国王になりたいかと思った理由も手紙に書いてあって・・・昨日、自分はついカサンドラ様に似たような事を話してしまいましたが、カサンドラ様はおかしいと思わなかったようで良かったです。
殿下はカサンドラ様には自分で話したいと書いていましたからね。自分、ポロッと口に出さないように気をつけないと。だから、サラ様とアナスタシア殿下の事も黙ってます。流れでぽろっと余計な事を言ってしまうとまずいですからね。殿下の頼みは絶対です!
それから、殿下は手紙でカサンドラ様の元へ行って欲しいと頼んで来ました。
現在、王都は規制が掛かっていて、出入りするだけでも、ややこしい手続きが要るようになってます。
ですが、殿下が全て話を通してくれ、自分は王室の馬車(それとは分からない造りになってます)で、カーライル公爵家までやって来たんです。今日は違いますが。
自分、カサンドラ様に聞かなくても、何をお母様に言われていたか、殿下の手紙で知ってました。でも、あえて、カサンドラ様から話して欲しかったんですよね。自分を信用してくれているか知りたかったんです。
自分、カサンドラ様の専属の騎士ですからね。
カサンドラ様は身を守る術がありません。でも、一生お屋敷に篭っているわけにはいきません。誰かの守りが常に必要になって来ます。ただ高い位にある家の令嬢、令息となると護衛は常に付いてますからね。何もカサンドラ様が特別ではありません。
学園に入ってからは自分が常にカサンドラ様の側にいようと思ってます。リバーにうっとうしがられるかもしれませんが、離れませんよ。
実は・・・自分、何故、カサンドラ様の専属の騎士になろうと思ったか・・・自分でも良く分からないんですよね。もちろん、前にカサンドラ様の為に何でもしますとは言いましたが、それがなくても、専属の騎士にどうしてもならなきゃいけないような気がして・・・うーん。考えるのは苦手なんで、やめます!
そう言えば、殿下の手紙はカサンドラ様の事ばかり書いていました。自分がカサンドラ様だったら、恋文なのではと勘違いしてしまうのではないかと言うくらい。
いや、殿下がカサンドラ様を好きになるなんて、自分の母親が物静かな女性になるくらい有り得ないと思いますけどね!
カサンドラ様が悪い訳ではありませんが、殿下の理想とは真逆ですからねー。
でも、自分、殿下の手紙を読みながら思ったんです。
ジャスティン殿下を追いやってまで、国王になると決めたのはカサンドラ様を守りたいからじゃないかって・・・でも、あの殿下が誰か個人の為にそこまでするとも思えませんし・・・。
「うーん。考え過ぎか!」
と、自分は言って・・・ハッとしました。
やべっ!独り言を言ってしまいました!池の掃除をしたら、独り言を言ってしまうんでしょうか!怖っ!
とりあえず、早く掃除を終わらせましょう。カサンドラ様には掃除は手早くしないと、めだかさんが精神的に疲れるから。と、言われてますからね!
でも、この格好で掃除はきつい。と、思いつつ、自分が頑張っていると・・・。
「おやおや」
その声に自分が振り返ると、濃い緑色のマントを身に纏った男が立っていました。
青白く、どこを見ているか分からないような目をしています。一目で普通ではない事が分かります。
いや、絶対、ヤバイ奴です!!




