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もう大丈夫

 私とリバーは馬車でアンバー公爵家に向かっています。

 今日はレオ様、シーア様、クリス殿下も来られます。ついでにルークもです。

「レオ様とアナスタシア殿下って、もう大丈夫なのかな」

「大丈夫だと思うけど・・・二人が一緒のところは初めて見ることになるね」

 レオ様は以前、アナスタシア殿下と馬車に一緒に乗ることすら嫌がってました。

 でも、手紙のやり取りはしていたとシーア様は言ってましたし・・・。

「きっと、もう大丈夫よ!」

 と、私は言いました。

 

「アンバー公爵様!」

 アンバー公爵家に到着した私たちは何はさておき庭のベンチに座っているアンバー公爵様の元へ向かいました。

「やあ。いらっしゃい」

 今日のアンバー公爵様の顔色はとても良いようで、私はホッとしながら隣に座らせてもらうと、

「今度、お仕事に復帰されるそうですね。・・・その、大丈夫なんですか?」

「ああ。家にいても、体が鈍るだけだ。・・・城のことも気になるからな」

「あまり無理をしないで下さいね。無理したら、父に怒ってもらいますよ?」

 と、私が言いますと、アンバー公爵様は体を震わせて、

「おぉ。怖い、怖い」

 と、冗談めかして言いました。

 私が声を上げて笑っていると、

「あ、来られたようだ」

 王室の馬車がやって来るのが見えました。

 相変わらず、黒と白のコントラストがカッコイイです。


 馬車が止まり、まず初めにレオ様が降りて来ました。

 すると、馬車のステップを降り切ったレオ様が、続いて降りて来るシーア様に向かって、手を差し出したのです!

 シーア様ははにかみながらレオ様の手に自分の手を乗せると、ステップを降りました。

 な、何でしょう!照れます!


 最後に現れたクリス殿下がステップを使わず、ぴょんと飛んで降りたので、

「クリス。行儀良くしろ」

 と、レオ様が注意しましたが、

「はーい!」

 と、クリス殿下はレオ様の注意なんて、何のその。と、言った風に明るく返事をすると、「キャスちゃん!」

 私の元へ走って来ました。

「アンバー公爵様!こんにちは!」

 と、クリス殿下は元気に挨拶しました。

「クリス殿下。我が家にお越しいただいて、ありがとうございます」

 と、アンバー公爵様は穏やかに挨拶しましたが、「クリス殿下。兄君の言うことはちゃんと聞かないといけませんよ」

 さすがのクリス殿下もやや神妙な顔になりましたが、

「だって、レオ兄様、口うるさいんだもん」

 と、言って、口を尖らせます。

 すると、

「クリスがちゃんと行儀良くすれば、レオ兄様だって、うるさく言いませんよ」

 と、シーア様がやって来て言いました。

 シーア様がアンバー公爵様に挨拶している間に、クリス殿下は私の後ろに隠れるようにして、

「散々、レオ兄様を困らせたお姉様があんなことを言うんだよ?」

 これには、シーア様はぐっと詰まります。

 そんなシーア様を見て、クリス殿下はきゃっきゃと笑いました。

「こら。クリス。カーライルに言って、アナスタシアと同じようにお前にも反省文を書かせてやるぞ」

 遅れてやって来たレオ様が脅すように言いましたが、

「僕、お姉様みたいにひどい反省文は書かないから、平気だよー」

 と、クリス殿下はからかうように言いながら走って行きました。

 シーア様は真っ赤になると、

「こら!クリス!待ちなさい!」

 と、クリス殿下を追いかけて行きました(シーア様は結構足が早いです)。


 レオ様はやれやれと首を振って、

「クリスは生意気になったな」

 私は笑って、

「でも、可愛らしいですよね」

 何て言うか、ただの悪戯っ子みたいで、クリス殿下には全く邪気がありません。伸び伸びと明るく育っています。

「キャスが甘やかしたんだろう」

 と、レオ様が私をジロッと見ます。

「そ、そんなことはないです!」

 クリス殿下には将来、甥っ子、姪っ子に好かれる為の練習台に勝手にしちゃってますが・・・「私に対しては生意気言いませんもん」

 注意することなんてありません。強いて言えば、私の絵を見て、しつこい程、笑うくらいですよ。

「兄君とは久しぶりだから、照れもあるのかもしれませんよ」

 と、アンバー公爵様が言いました。

「あれが照れるタイプか?」

 と、レオ様は首を傾げます。

 私は笑いましたが、

「レオ様。シーア様と同じ馬車で来たんですね」

 レオ様は追いかけっこをしているシーア様とクリス殿下を見ながら、

「ああ。・・・アナスタシアとは毎日、話をする機会も作っている」

 と、言った後、私を見て、「私たちはもう大丈夫だから」

「良かった!」

 と、私は言ってから、アンバー公爵様に向かって、「良かったですね!」

 アンバー公爵様は笑みを見せると、

「良かったですな」

 すると、レオ様はびっくりして、

「アンバーのじいさん!笑えたのか!顔の筋肉がおかしくなったんじゃないか?!」

 と、声を上げます。

「あなたのその失礼な物言いは相変わらずですな」

 アンバー公爵様はややムッとして言いました。


 そこへ、

「殿下。来られてたんですね」

 シュナイダー様がやって来ました。

「ああ」

 シュナイダー様は空を見上げてから、

「少し風が出て来ましたね。・・・御祖父様、中に入りましょう」

「まだ構わんよ」

 と、アンバー公爵様は言いましたが、

「なりません」

 と、シュナイダー様はきっぱり言いました。

 アンバー公爵様はこれでもかと眉をしかめましたが、

「私も行きます!お部屋でお話を聞かせて下さい」

 と、私が手を挙げますと、

「そうか。なら、行こう。今日はあの話をしよう」

 と、アンバー公爵様は言うと、いそいそと立ち上がります。

 そして、私がアンバー公爵様の後をついて行っていると、シュナイダー様が私の隣に並ぶと、顔を近付けて、

「ありがとうございます」

 と、囁きました。

 ひぇっ!近いです!

 私は赤くなりながらも、

「い、いえ。本当にお話が聞きたいので、お礼なんていいんですよ」

 と、言ってから、何となく後ろに目をやりました。

 その場に留まっていたレオ様と目が合ったと思った私はレオ様に向かって笑顔を見せましたが、レオ様は『のらさん』まで追いかけっこに加わった、クリス殿下とシーア様の方に顔を向けてしまいました。


 ・・・目が合ったと思ったのは気のせいだったようです。私、一人で笑ってしまいました!恥ずかしい!



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