王子様の恋のお話が聞きたいのです
レオ様からローズマリー様のお話を聞こうと、私は池を目指して、レオ様の手を引きながら走っています。
「おい。キャス」
レオ様がやや戸惑ったような表情を浮かべながら、「そんなに走ったら、池に着く前に倒れるぞ。キャスは体力がないんだから」
「大丈夫です!」
ふっ。成長したのはレオ様だけではないのです!私も成長したのですよ!これくらいの距離は楽勝なのです!
私とレオ様は庭の池へとやって来ました。
私、倒れませんでした!(当たり前です)
レオ様はめだかさんを見ようとしましたが、
「レオ様!」
私は声を上げます。
レオ様は振り返ると、
「なんだ?さっきから、いきなり声を上げるなよ。相変わらず、挙動不審だな」
し、失礼な!
「しょうがないじゃないですか!私、ローズマリー様の事が聞きたいんですよ!」
「あ、ああ・・・」
「手紙に書いてありましたけど、とっても素敵な方のようですね!」
「ああ」
レオ様は笑みを見せて、「とても良い娘だ」
「どんな風にですか?是非、レオ様の口からちゃんと聞きたいです。どうぞ!話して下さい!」
手紙のようにローズマリー様に対する思いを熱く語っちゃって下さい!
私は期待をして、レオ様を見つめていましたが、レオ様はこれでもかと眉をしかめて、
「嫌だ。いい思い出が減りそうだ」
「?!」
な、何ですと?!
私はムッとしましたが、
「では、もう結婚の約束はしましたか?!」
と、言いますと、レオ様は真っ赤になって、
「な、な、何を言ってるんだ!は、早いだろう!」
レオ様、まさかの恋は慎重派ですか?!
「早い?!そんなことありませんよ!だって、ジャスティン殿下とサラ姉様は8歳の時に婚約して、今もとっても幸せそうですよ?!早いなんてことがありますか?!レオ様の理想の女性じゃないですか!何を迷うことがありますか!さっさとプロポーズして下さい!」
「おい、キャス・・・」
レオ様は困っている様子でしたが、
「ローズマリー様をお妃様にすると決めているのでしょう?」
と、私が言いますと・・・。
「ああ」
レオ様は頷いて、「ローズマリーを私の妃にする。必ず」
と、答えました。
何よりも聞きたかった言葉に私は笑顔になると、
「レオ様。良かったですね。ローズマリー様と出会えて」
「ああ」
レオ様は幸せそうに笑いました。
私も幸せな気持ちになりましたが、
「レオ様。ローズマリー様に王子様だと話したのですか?」
レオ様は自分の髪に触れて、
「これを見れば、一目瞭然だろう。銀髪は王族にしか出ない特徴だ」
100年に一人しか出ない特徴だと言われていて、レオ様の銀髪はとっても珍しいのです。
ですが、訳あって、レオ様はこの美しい銀髪を嫌っています。
「あ、そうですよね」
レオ様は溜め息をついて、
「別れる時に王城へ手紙を送ってくれと言ったんだが、もう連絡は取らない方がいいのではないかと言われた。もちろん、考え直してもらえるように言ったし、納得してくれたと思うのだが・・・」
「!」
ローズマリー様は身分違いの恋に苦しんでいるんですね!でも、心配ありませんよ!この国は『魔法大国』です!全属性持ちであるローズマリー様なら王子様であるレオ様との結婚だって可能なんですよ!
「レオ様から手紙をちゃんと書いてあげるんですよ」
筆不精は卒業して下さいね!
「ああ」
と、レオ様は頷きました。
私はとっても満足しましたので、
「レオ様。見て下さい。めだかさんが増えたので、池を広くしたんですよ!」
お次は我が家自慢の池をお見せしましょう!
「ああ。すごく良くなってるな。周りも凝ってるな」
周りに花を植えて、石で作ったうさぎさんたちを飾っているのです!柵もオシャレな物に替えました!
「クリス殿下を褒めてあげて下さいね!」
「クリス?何故だ?」
と、レオ様は不思議そうに眉を寄せます。
それを見た私は首を傾げますと、
「私が思い付くまま絵にした物を、リバーがクリス殿下に上手く説明してくれて、それをクリス殿下がまた絵にしてくれたんですよ?その絵を元に庭師さんがこの庭を作ったんですよ?手紙にも書きましたけど、覚えていないのですか?」
レオ様は私からやや目線を反らして、
「そ、そうだったな。忘れてた。すまない」
「もー。どうせ、ローズマリー様のことで頭がいっぱいだったんでしょう!」
あーあ、友情なんてこんなものですよ。
やっぱり、私はひとりぼっちなんですよ。ちぇっ。
でも、レオ様が幸せなら、それでいいのです。
しばらく、私とレオ様は池の前で過ごしていました。
「あ・・・風が出て来ましたね」
私は風になびく髪を押さえながら言いました。
「・・・」
レオ様はそんな私の髪に触れて、「キャス・・・綺麗になったな」
「ありがとうございます!もっと綺麗になりますよ!花が開いたら!」
レオ様は何故か唖然として、
「は、花?」
「ほら、こっちの黄色い花がまだつぼみでしょう?」
私は池の周りに植えている花を指差します。
「いや、私は・・・」
「あともう少しで咲きますからね。楽しみにしていて下さいね!」
と、私は満面の笑みで言いましたが、
「はー・・・」
レオ様が溜め息をつきます。
「どうしたのですか?」
恋患いですか?
「もういい」
レオ様はむくれます。
「拗ねるところは変わってないんですね」
「うるさい」
レオ様はそっぽを向きました。
せっかくかっこ良くなったのに、拗ねちゃうんですねー。
・・・久しぶりに会ったレオ様がとても男っぽくなっていたので、ちょっとときめいてしまったのは、絶対に内緒です。ぎゃあっ!




