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今の自分。その3

 私はリバーの贈り物と思いやりの両方が嬉しくて、泣き出してしまいました。

 初めリバーは困っているようでしたが、今は抱きしめてくれています。


「リバー・・・」

「うん?」

「・・・ちょっとね、拗ねてたの」

「拗ねてた?」

「だって、私に何にも言わないで、遊びに行っちゃったから」

「そっか。ごめん」

 私は首を振ると、

「何かお返ししなきゃ。リバー、欲しい物ある?」

 リバーは笑って、

「キャスがあんなに喜んでくれただけで十分だよ」

「・・・」

 将来、タラシになるのではないでしょうか。


「だってさ、どう言っていいのか分からないけど、キャスが魚の話をしている時、見つけてやりたいと思ったんだ。図鑑にはいろんな魚がいて、キャスも楽しんで眺めてたけど、キャスが本当に見たい魚はなかったんだよね?図鑑の最初から最後まで見て、『いない』って、言ってたキャスがとても悲しそうだったから」

 私は顔を上げて、

「リバー・・・」

「キャスのあんな顔、見たくなかったんだ。でも、今は笑ってる。それを見れて、僕は嬉しいんだ。だから、お返しなんていいんだ」

「・・・」

 私はリバーの笑顔を見て、お返しなんて、私たちの間でそんな水臭いことを言ってはいけないのかもしれない。と、思いました。


 私は一つ頷くと、

「分かったわ。じゃあ、もう一度だけ。・・・リバー。本当にありがとう」

「うん」

「それに、この先、私はリバーのためにとーっても、頑張らないといけないからね」

 リバーは眉を寄せて、

「何それ?」

「いいから、いいから」

 私はリバーの肩をぽんぽんと叩きました。

「嫌な予感するんだけど」

 リバーの眉はまだ寄ったままなので、私はごまかすことにして、

「この子たち、庭の小さな池に連れて行こうと思うの。広い池にいたんだもの。このガラスの入れ物じゃ、窮屈だと思うの」

「そうだね。それがいいよ」

 と、リバーは頷いて・・・「あれ」

「何?」

 リバーが勉強机に乗っかるようにして、窓の外を見ると、

「馬車・・・お父様だ!」

「あ、ほんとだ」

 一台の馬車が門をくぐって来ます。

 馬車の車体にはカーライル公爵家の紋章が描かれています。

 お父様が帰って来たのです。

 いつも帰りが遅く、一緒に夕飯を食べるどころか、おやすみの挨拶すら出来ない日もあるくらいなのに、今日はとっても早いです!


「キャス、お父様を出迎えなきゃ」

「うん。先に行ってて」

「え?」

 私はお魚が泳いでいるガラスの入れ物を持って、

「お父様にも見せるの」

「じゃあ、僕が持ってくよ」

「だめ。私が持って行くの」

「転ばない?」

 リバーは心配そうに言います。

「大丈夫!」

 私はグッと親指を立てます。

 リバーは首を傾げて、

「何の合図か分からないけど、キャスがそう言うなら、任せるよ」

 ん?親指グッ!は分かりませんか?

 まあ、いいです。

「先に行っていいよ。私、ゆっくり行くから。お父様のあれ、長いし」

「あー、そうだね。でも」

「いいの。リバーに隣歩かれながら見られてたら、緊張しちゃうもん」

 リバーも当然緊張しいな姉だと知っているので、

「分かったよ」

 納得してくれました。「先行くけど、ほんと気を付けてね」

「こんなに可愛い子たちに怖い思いはさせない。それにリバーからの贈り物だもの」

 リバーはちょっと顔を赤らめ、

「気をつけて」

 それだけ言うと、部屋から出て行きました。

 ふっ。私の弟は何て可愛らしいんでしょうねっ!


 リバーの足音が聞こえなくなり・・・。

「『神様みたいなもの』聞いてるかしら。私、リバーを追い詰めるようなことはしたくなくなったの」

 私は囁くように、でも、決意を込めて言いました。


 もちろん、悪役の役目を全うするという意志は変わっていません。

 私は今、贅沢な人生を送っています。私を転生させてくれた『神様みたいなもの』に感謝するのは当然ですが、両親とリバー、使用人さんたちのお陰でもあります。


 ですから、将来、ゲームのように公爵家を追い出されるようなことになってはいけないと思うのです。皆が悲しみますからね。

 五大公爵家の令嬢・・・まだ自覚はありませんが、それに恥じない行動を取るべきなのです。

 なぜなら、それが何よりのお返しになるからです。


 そうなると、ヒロインへの当たりは激しくなるかもしれませんが、リバーの攻略法は『貴方のお姉さんだから、憎みませんよー』なので、ヒロインも耐えてくれるでしょう。リバーと結婚したら、優しい小姑になることを誓いますので、ご理解いただきたいです!


 ずるいと思われるかもしれませんが、あんな死に方をして、迷惑を掛けた野崎明日香の両親の分も今の家族を大事にしたいのです。



「では、行きますか」

 私は両手でしっかりとガラスの入れ物を持ちました。お魚さんたちは気持ち良さそうに泳いでいます。後でリバーと一緒に名前を考えましょう。


 私は私らしい悪役令嬢を目指すことに決めました!


 無理じゃね?なんて、思わないで下さいね!





 これにて、リバー編は一旦終了って感じです。


 中途半端な悪役令嬢になりそうですが、書いているうちに、リバーを気に入ってしまったんです・・・



 次話は双子の父カーライル公爵が登場します。


 それにより、新たな攻略対象キャラ話も始まります。




 拙いお話を読んで下さって、ありがとうございます。


 より良いお話になっていくよう精一杯頑張ります。




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