苦いバレンタイン
バレンタインデー、それは女性が気になる男性にチョコレートを渡す日。
モテる男は、女性に囲まれ、チョコを沢山貰い
モテない男は、その光景を血涙流しながら、心でチョコレート会社の陰謀なんだ!と叫ぶ。
義理チョコで定価20円の小さなチョコ1つで狂喜乱舞し
学生達はチョコを貰った数を競い
言い出しっぺが0個という悲しい出来事になったりもするイベント
バレンタインデー、愛しさと切なさとガチ憎さとが合わさった
最恐と最高の日・・・
この話は数多くある中のビターな物語である。
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バレンタインデーの日に気だるそうに歩く青年、尾田国光(28)は仕事の忙しさもあり
そのことを忘れ、ただ仕事行きたくないでござると言いたそうな顔で通勤している。
乗っていたバイクが壊れたせいで満員電車に押し潰されている中、彼はこんなことを考えていた
(あぁ・・・部下達に会いたくねぇ・・・帰りてぇ)
一見この考えはただの駄目人間の発言である、しかし彼にとって部下は
胃に無明剣を叩き込まれるくらいの威力で彼を追い詰めるのだ。
思考を巡らせる中、現実は非情であると彼に叩きつけるかのように目的地につく
しかしそこは社会人、行きたくなくても行かなければおまんまは食えないのだ。
意を決し、その戦場に突っ込んで行く・・・・
彼の戦いは始まったばかりだ!
完
嘘です、すいません
職場に着き、朝礼も終わり部下たちへ仕事を割り振る為に集合させ指揮していると
部下の一人である、中村 聡(25)が割り込んできた
「あの?この仕事が終わるまで帰れないんでしょうか?」
当たり前の事を聞いてくる彼は、部下たちの中でのあだ名はKY中村
「・・・・・どうした?何か用事でもあるのか?」
周りの部下たちは、黙り込み中村の反応を待った
「実は・・・今日みたいアニメがありまして・・・ですので6時には帰りたいんです」
すごく、くだらなかった
とても、くだらなかった
ベリーくだらなかったのだ
「アニメ・・・だと・・!貴様・・・仕事より私情を優先にするのか・・?」
国光は忙しい時期にこんなことで帰りたいと発言する中村を殴りたい衝動に駆られていた
しかし、殴れないその葛藤せいで言葉が切れ切れになったのだが・・・
KY中村はやはりKYだったのだ
「国光さんもアニメみてるんじゃないですかー!アニメ・・・だと・・!とかあのセリフから取ったんですよね?」
この発言により、国光は葛藤していた事が馬鹿馬鹿しくなり、殴ろうと思った瞬間
「国光さん!!中村を殴っては駄目です!!」
と颯爽と止めに入った女性がいた。
田中 絵里(22)その彼女も国光の部下の一人である
「田中止めるな!!こいつにお仕置きしないと気が済まねぇ!!」
しかし彼女は止めるのをやめない
「だめです!!あいつを殴ればあなたの手が汚れてしまうんですよ!!」
まるで、アニメのワンシーンのような美しさであるが
そうは問屋がおろさなかった。
「駄目です!!殴るなら私を!!お仕置きするなら私を!!」
そう彼女はドMだったのだ、しかも超弩級の・・・
「「・・・・・・・・・・・・」」
この発言により、熱が冷め切った国光はある意味救われ
心を入れ替えた
「よし、お前ら仕事するぞー」
「「「「「はいっ!」」」」」
と元気な返事と共に仕事が開始したのである
さて、ここまでバレンタインデーの事に触れていない。
国光がバレンタインデーだと認識し、カオス空間に投げ込まれ
胃にダイレクトアタックが決まるのはこの後の事である
そう本番はこれからなのである
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仕事をこなし、ふと時計を確認すると時計が12時半を示していた
それを確認した国光は、皆に号令をかけ昼休みに
昼休みは社会人にとってオアシスである。
そう、国光もまたそれを楽しみにしてる一人でもあるのだが
妻が作ってくれた弁当をだし、期待を込めて開放すると
その中に、なんと新メニュー(汚物)だったのだ・・・・・
彼の妻は決して料理が下手なわけではない、しかし新しい料理に挑戦すると
必ず失敗するのである、弁当の中に形容しがたい何かが入っている。
愛妻弁当から哀彩弁当と変わり果てた弁当を彼は食べ始めた
せり上がる吐き気と戦いながら一つ一つ片付けていると
ドMから声がかかった
「あ・・・あの・・国光さん」
顔は少しだけ赤くモジモジしている
「あの・・・今日バレンタインなんです・・・」
今日はバレンタインだったのかと思い出し、義理チョコでもくれるのかな?と期待していると
「絵里ちゃん頑張ってっ!!応援してるよ!」
横から声がかかる、その声の主は遅番になっていた塩見 薫(23)だった。
彼女は通常時でもテンションが高い、そして彼女はとてもお馬鹿なのである
絵里と仲が良いのだが、合わさるだけで誰もが関わりたくないと声を揃えていうだろう
何故なら・・・
「うんっ!応援ありがとう、国光さん・・薫ちゃんと一緒に探しに探したんですっ、受け取ってください!」
自分のために頑張って探して、それをプレゼントしてくれる
男冥利に尽きるのだが、
その一生懸命探したプレゼント
それは
綺麗にリボンが巻かれた鞭だったのだ!
国光は震える手で鞭を受け取り、思ったことを叫んだ
「いらねえええええええええええよ!!このカスがああああああああああああああ」
渡した人は普通なら傷つき、涙するのだが、彼女は違う
そう超弩級のMなのだ、彼の発言はご褒美にしかならない
それを聞いた瞬間彼女は
「はぁああああああああああああああああああああ」
と言いながら、テレビに写せない顔でビクンビクンしている
いわゆる絶頂というものである。
そして、その相方である薫がこの流れなら渡せるとふんだのか、国光に声をかけた
「国光さん!私も探しに探しました!!受け取ってくださいっ」
そして渡されたモノは
薄口醤油(リボン付)
「お前は晩ご飯買うついでに目のついた物を買っただけだろうがああああああああああ」
国光はその薄口醤油で薫の頭を叩いた
それをあざとく見ていたへんた・・・絵里は
「やったね!ご褒美だよ!!」
といいつつ、物欲しそうな目で国光を見る
「うん・・・・でも国光さんの愛が痛い・・・これが試練なのね!!」
「お前らだまれええええええええええええ」
2人から形成された、カオス空間に入れられた国光はどんだけ叫んでも
闇が飲み込んでしまい、何も届かなかったのである。
そこに追い打ちをかけたのが、やはりKYである中村であった。
「バレンタイで物を貰えるだけマシだろ・・・・国光さん死ねばいいのに」
その発言で切れた国光は手に持っていた鞭で彼の背中を叩き
ビシィンと音と共に中村が痛さのあまり倒れ込んだ
そのことで、許せないと怒り狂った奴がいた。
それはプレゼントとして渡した変態
そう彼女はこの鞭で叩かれる記念?すべき1発目を期待していたのだ
それをKYに取られたのだ、怒り出すに決まっている。
「中村あああああ、お前何やってんの?国光さんからご褒美もらっていいのは私たちだけでいいのよ!!」
と中村を蹴り始める
それに便乗したお馬鹿は
「そうよそうよ!でも痛いのはやだよぅ」
とキーボードで中村の頭を殴り始める
国光はこの瞬間、臨界点を超えてしまった。
妻の哀彩弁当
ドMの変態的要求
お馬鹿の悪ノリ
KYのやる気のなさ&鬱陶しさ
それが全部合わさり、胃に負担をかけたせいで
吐き気を抑える事も出来ず、トイレにダッシュし全てを吐いたのだった
それを見かねた同僚達が気を遣い、言葉を掛けた
「もう、今日は早退しろよ」
「そうしろこれで体壊して奥さんに心配かけるな」
優しい言葉をかけられ、涙が流れそうになりながら、後のことを同僚たちに任せ上司の元へ
上司の元についた国光は早退する為にそのむねを伝えると
「そうか・・・無理はしてはいかんな・・・後のことは私たちに任せてゆっくり休みなさい」
とすぐに受け入れてもらい
「有難うございます、それでは失礼します」
と退出しようとしたとき、声をかけられた
「ちょっと待ちなさい、確か今日はバレンタインだったね、いつも頑張ってくれている君に2日の休みをあげよう」
この言葉で国光はこの人に一生ついていこうと心に決め感謝の後家に帰ったのだった。
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帰宅後、妻は買い物に行ったのか家にはおらず、弁当箱を台所に置き
疲れが溜まっていたのか吸い込まれるように眠りについた。
数時間後、目が覚めると横には妻からのチョコレートが置いてあり
その横に「いつもお仕事お疲れ様です」と手紙があった
それを見て、笑みをこぼしながらチョコレートを妻と一緒に食べるためにリビングに向かい
扉を開けると
そこには・・・・
鞭を大事に抱いたドMと薄口醤油を持ち上げて遊んでいるお馬鹿が嫁と談笑していたのだ
国光は涙が無意識に流れた後
「ピギィイイイイイイィイイイイイイイイイイイイ」
と豚のような叫びをあげたのでした。
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これはよくある、ただの苦い話
よくある出来事の一つ
1年に1回のバレンタインに起こった出来事
ただそれだけのお話
おしまい
誤字脱字、感想よろしくお願いします。