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狂人

 ジャラジャラ、ビジャッ! ビィュッ! ジャララララ。と何かを引きずり、叩き付けるような音が鳴り響く森林の中で、一人の男が不気味な笑い声をあげていた。

「うひゃひゃひゃひゃひゃ! 死ね! 死ね! オラオラオラ! 死ね〜! どうした! もう終わりか? ほら、来いよ! 来やがれ! ザコいわ! よえーよ! うひゃっひゃっひゃ! ひゃーはっはっはー! オラオラ! 死ね、死ねぇ!」

 男は、頭の先から足の先まで返り血を浴び真っ黒になりながら、狂気的な笑い方をし、自転車のチェーンらしき物を振り回していた。

 この男、名を中田なかた げきといい、先月までは家族想いの真面目で優しい男であった。

 しかし、中田の静寂を覆す事件が起こった。最愛の妻と、一人娘をモンスターと化した烏の群れに殺されてしまったのだった。しかも、中田の目の前で……。妻子は生きた状態のまま、逃げ惑いながら十数羽の烏に啄まれ絶叫しながら、この世からその命を消したのであった。なぜか、中田は烏から狙われること無く、無傷のままその場に立ちすくむしかなかった。

 その後より中田は豹変し、狂ったように笑いながら、自転車のチェーンのような鎖を振り回す狂人へと変化した。彼の目的は一つ、無念の死を遂げた愛する妻子の復讐であった。

 この日もまた、鳥型モンスターを駆逐しながら、この森林へと足を踏み入れたのだった。

「おかしいな。この辺りに逃げ込んだはずだが。……っん? そういえば、こないだの奴もこの辺りで見失ったな。……ということは、もしかしたら、俺はこの辺りのボスに近付いているんじゃないか? この辺りのボス? この辺りの? ボスぅ!? うぉぉぉぉ! ボスぅ! うひゃひゃひゃひゃひゃ〜! 殺してやる! 殺してやるぞ! 待ってろよ! この辺りのボスぅぅ!」

 勝手な想像だが、確信に近い思考をした中田は、更に半狂乱になり、真っ黒な身体のまま、真っ黒なチェーンを振り回し、森林の奥へと歩みを進めて行った。



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