終幕
当たり前の日常が、戻っていた。徘徊する植物は、もういない。人を襲う狂暴な動物も、もういない。特殊な能力を持った人間もいない。子供達は、元気に学校へ行き、大人達は毎日の生活に追われ、何も変化のない生活が戻っていた。
「続きまして次の話題です。動植物を中心に広がりをみせた新型のインフルエンザですが、突如にして観測されなくなりました。病院関連の施設に確認を行っておりますが、何処の施設も具体的な返答は返しておりません。……」
「当たり前じゃねぇか。もういねぇんだよ『キラヘル』わ。って言っても、コイツらこんな話信じねぇんだろうけどな。……どうでもいいや。仕事行こ。……渚、愛里、行ってきます」
TVから聞こえるニュースキャスターの声に悪態をつきながら、激は仏壇に飾られた満面の笑みで笑う二人の親子の写真に話し掛けると、静かに手を合わせてから、写真に手を振って家を出て行った。
リビングでゆっくりと朝食を摂る霧斗に、神名がカップに入ったコーヒーを運んできた。
「ねぇ霧斗。私、道場開こうと思うんだけど、どう思う?」
「止めとけって。と言っても君は聞く耳持たないんだろう。やりたいようにやれば、いいんじゃないかな」
「う〜ん。そうねぇ。正志君や頼君を師範に呼んだら、ものすごく人気出ると思うんだけどなぁ」
「それは止めとけ。彼らは、もう学生なんだ。武闘家じゃないんだから」
「それもそうね。山里流で、子供達から一般の人達まで門戸を広く開いて、日本一になってやるんだから。……って霧斗! 早くしないと遅刻するわよ! ……いってらっしゃい、気をつけてね」
「あ、ああ、行ってきます。……神名のやつ、どこまで本気なんだか………」
時計を見た途端、急かして席を立たされ家を追い出された霧斗だったが、後ろを振り返り、手を振りながら一言こぼして歩いて行った。
神崎正志:100mダッシュ0.32秒。重量挙げ片手で43Kg
栗原頼:100mダッシュ0.56秒。重量挙げ片手で58Kg
「なぁ正志、気をつけねーと今度は俺達が、バケモノ扱いだぞ」
「ああ、そうだな。まぁ、お前の言うレベルアップした為だろーけどな!」
「平和になったのいーけど、俺達住み難くねー?」
「バケモノがいるより、いーけどな! 行こうぜ、頼! あんましゆっくりしてたら、遅刻になっちまうぞ!」
学生服を着た二人は、他の人間には見え難いスピードで街中を駆け抜けて行くのであった。
完
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
以前に投稿した物(台本形式)を小説形式に改善してみたつもりですが、如何だったでしょうか?
まだまだ至らぬ点などあるとは思いますが、もし宜しければご意見等お待ちしています。
この度は、読んでくださりありがとうございました。