責任
「急げ! あっちだ! 早くしろ! 手遅れになるぞ!」
沢山の救急隊員を引き連れて、矢馬鍋は大阪城へと向かっていた。
「……大丈夫ですか? ……息はあるが、酷い怪我だ。早く病院へ搬送! どこでもいい! 近くの病院だ!」
矢馬鍋の連れて来た救急隊員によって、激・霧斗・神名・頼・正志の五人は病院へ運び込まれ、同じ病室にて絶対安静の状態になっていた。
「良かった。君達が死んだらどうしようかと思ったよ。……さて、私も私の決着を着けに行こうかな」
五人に囁くように言葉を発すると、矢馬鍋は静かに立ち上がり、病室を跡にした。
「せ、先生何を」
「すまないな、穴渕君。私の研究意欲の為にこんな事になって。……今、楽にしてあげるからね」
「ちょ、ちょっと待って。待って下さい、先生! 何、何するの!? いや、嫌ぁぁぁ! 助け、助けて先生! この子を殺さないで! イヤぁぁぁ!!」
穴渕は中絶台に乗せられ、頭と四肢、胴体を拘束された状態で半狂乱に叫び続けていた。
「すまないな穴渕君。あの子達が、せっかくバケモノ共を駆逐したのに、君に宿ったバケモノを野放しに出来ないのだ。……君が、望んで手に入れた子供では無い筈だ。許してくれ。こうする他ないのだよ」
頭を振り、発狂したかのように泣き叫ぶ穴渕を余所に、『ホリスタ』の子の中絶は開始され、穴渕が気を失い気が付いた時には、ベッドの上に寝かされていた。
『ホリスタ』の子は、穴渕腹から摘出された途端、近くにいた助産婦に噛み付こうとしたが、矢馬鍋に押さえ込まれ身動きを封じられた状態で、頭部にハンマーで強打撃を受け、頭部が潰れ動かなくなった。
「先生。あの子は? あの子は、どうなったの?」
目を醒ました穴渕は、ベッドの脇のパイプ椅子に座り、穴渕の手を両手で握り締めていた矢馬鍋に尋ねた。
「『ホリスタ』が死んだ為かな。君のお腹から出てきた時には、もう死んでたよ。……君は、今回とんでもないアクシデントに見舞われた。私にも十分な責任がある。……こんな時に、こんな事を言うのは、いけない事なのかもしれないが、君は私が責任を持って養っていくからね。……どうかな?」
矢馬鍋の言葉を聞き、力を失った穴渕だったが、暫くすると矢馬鍋の手を強く握り返し、「よろしくお願いします。先生。今度は、ちゃんとした人間の子を、先生の子を私産むから」と言うと矢馬鍋に無理矢理ニコッと微笑みかけた。