表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/40

Vs

   激Vsモンスター


「うひゃひゃひゃひゃ〜! 久しぶりだぜ! こんなに大暴れするのはよぉ! おら! こいや! どんどんこいや!」

 激は、モンスター達に取り囲まれた状態で、チェーンを振り回していた。以前に比べチェーン捌きもさまになり、前後左右の敵を一歩も動くこと無く撃破していた。但し、周りからの一斉攻撃には対処出来ず、近距離の噛み付きや斬撃・突きにダメージもくらっていた。

「くそぉ! それにしても数が多いな! キリがねぇ! 終わりが見えねぇな!」

 激はチェーンを振り回しながら、愚痴り始めていた。……その時だった、激の目の前のモンスターが突然のけ反ったと思うと、バタバタと倒れ込んだ。

「おや? 人がいたの? ねぇあんた、浩二知らないかい? こんだけモンスターが集まってるんだから、浩二もここに来てると思うんやけど」

「浩二? んな事より、バアさんこんな所にいたら危ねぇよ! 早くどっか行けよ!」

「そんな事言うて、ええの? 苦戦してるんとちゃう? ……ええい、うるさい! 今はお前らの相手やない! ……浩二の事教えてくれたら、助太刀しましょか? どう、話す気になった?」

 老婆は近寄るモンスターを一喝した後、一閃にて蹴散らすと、改めて激の方に向き直った。

「何や、このババア。ただ者やないんか……。……浩二ゆうたな、同じヤツかどうかは知らんけど、あの『ホリスタ』とかゆうヤツの名前がそやったで。もう、先に行ったけどな。これでどうや!」

 激の話を聞き終えると老婆は、少し悔しそうな表情を見せたが、「それやったら、こやつら片付けて早く後を追うで」と言うと、両腕に付けた鋭利な爪を振り回しながら、辺りのモンスターを切り刻み始めた。

「なかなかやるやんけ、あのババア。お〜し、俺も負けてらんねぇぞ!」

 と、中距離攻撃を激、近距離攻撃を老婆のフォーメーションを即興で組んでいた。


   霧斗Vs木村達


「轟、そいつ、あんたの事見えてないみたいよ。ガンガン動いて、手数で攻めて」

「蓮見! 左がら空きや。今なら喰えんぞ!」

「保! 結構素早く動いてるから、蓮見や轟の攻撃後の移動地点を狙え! ……もう少し右、今や!」

 霧斗は、木村達の能力の見定めに防御・回避を繰り返していた。

「はぁ、はぁ、はぁ、痛っ! 今度は、何処から来るのかな。……おぉっと、はぁ、はぁ、うっ、痛っ! ちくしょう! 一人見えないし……」

『こやつら、それぞれが部分的な特殊能力者なのは分かった。……でも、向こうの三人は司令塔。こっちに三人いるはずなのに轟と呼ばれている奴の姿が確認出来ない。あとの二人も、厄介だな。あの保って奴は、力まかせ。もう一人の蓮見って奴は、顎が強いのか? とりあえず、あの轟って奴をどうにかしないと、なぶり殺されてしまうな』

 霧斗は、蓮見・保の攻撃をかわしつつ、周りに注意を配っていた。しかし、肉眼で轟を捕らえることが出来ず、少しずつ、少しずつダメージを受けていた。

「ははっ! オッサン、一人で調子コイタのは間違いだったな。ははは、ほら、ほら、俺に切り刻まれて死ね! ほら! ほら!」

 霧斗は、ドンドンスピードをアップさせ攻撃をしてくる轟に翻弄され、轟の動きだけに集中しようとした時、左顔面に激痛が走り、右側に吹き飛ばされた。

「おっしゃあ! クリーンヒットや! ごめんやでオッサン、顔潰れたんとちゃうか? おーし、もう一発いこか!」

『なんて力だ。一撃で頭がクラクラする。……駄目だ……このままじゃ確実にやられる。この際仕方ない、正志君……ちょっと真似させてもらうよ。……まあ、彼なら相手を見た途端にこうしてるかもしれないな』

 霧斗は、スッっと立ち上がると両手のナイフを逆手に持ち、腰を落とすと、目を閉じ動きを止めた。

「ほう。死ぬ気になったんか? いい心構えや」

「ちょっと待て轟! 待て行くな! ……何だ、あいつから、焦りと恐怖の臭いが消えた。何を企んどる」

「目ぇつむってたら、見えねぇやろう! 俺が一思いに喰ってやるわ!」

 と蓮見が、口を開けて飛び掛かった時だった。閉眼していたはずの霧斗が、突然蓮見の方へ振り返ったと思うと、ナイフが蓮見の口に当たるように体を捻った。その刹那、蓮見の口から下腹部が二つに分かれ、臓物を撒き散らしながら落ちて行った。

「あれは、無駄な動きを省いたスピードスタイルね」

「あぁ。しかも、心眼やな。気配のみで相手の動きを読んどる。友利、轟止めんで大丈夫か?」

「無理無理。もう調子に乗ってもて、私の言う事なんて聞きもしないわ」

「ああ、もう轟は無理だな。あとは保だけか。ちょっとの油断が命取りだな」

「そのまま目ぇつむって死ねぇ! 何したって俺は見えねぇやろ!」

 霧斗の横を爪をたてて走り去ろうとした轟を霧斗は、身を屈めナイフを轟にあてがうようにし、轟の腹部を切り裂いた。スピードの止まらない轟は、そのままもう一撃走り込んだが、完全に気配を読まれており、肉斬骨断の精神の霧斗に、同ヶ所を攻撃され、上半身と下半身に分断し下半身は走り去り。上半身は地に落ちた。

『早く来い! 次はあの怪力だろ! 早く来てくれ! 力が抜ける』

「嘘やろ。蓮見ぃ! 轟ぃ! おい、マジかよ! 何やねん。いきなりどうなってんねん!」

 半混乱状態の保だったが、木村達に深入りは危険だと止められ、木村達を睨みつけていた。

「相手のペースに乗るな!」

「保、今あんたが行ったって絶対勝たれへん 。オッサンのあれ、心眼スピードスタイルや。様子見た方がいいわ」

「と、言うよりや、もうちょっと待ったらええ。あいつからは、血の臭いがプンプンする。放っといても死ねんとちゃうか?」

「そんな事言うても、轟と蓮見、殺されたんやぞ! ……お前ら、そこでじっとしといたらええやろ! 俺は行くで! 一矢報いたる!」

「ちょっ、待て! 保! 待てっ!」

 三人の警告を余所に、霧斗に向かって走り出す保。

『気配を読まれてるって事は、何処から攻めても一緒や。こうなったら……』

 霧斗の全身に突然激痛が走る。気配を感じ無いのに、各所に痛みを感じる。危険を感じた霧斗が目を開けると、少し離れた所から、保が投石を繰り返していた。

「くそ! なるほどな。考えたな、でもその距離なら私の射程範囲内だ!」

 霧斗は飛び出すと瞬時に保に接近し、斬撃の豪雨を浴びせ掛けた。保は、防ぐ事も出来ず、全身から大量に体液を吹き出しながらその場に倒れ込んでいった。霧斗は、そのまま駆け出すと木村達の所へ接近し、走りながら、ナイフを無造作に振り回し、駆け抜けた。

 霧斗が駆け抜けたあと、木村達は保と同じように全身から大量の体液を流しながら、動かなくなっていた。

「私の勝ちだ。だから言っただろ、徒党を組まないと何も出来ない君達に負ける道理は無いって」

 そう言うと全身を真っ赤に染めた霧斗は、その場に空を見上げるようにして、ドサッという音と共に倒れ込んだ。


   神名Vs伴子


「ふふっ。あなた、私に勝とうと思っていない?」

 不敵な笑みを浮かべる伴子に対峙した神名は、相手を挑発するように微笑み返していた。

「だとしたら、どうするの? あなたこそ、私には負けないって思ってるんじゃないの?」

「あなた、面白い事言うわね。私があなたに負ける訳無いでしょ」

「あら、面白かった? あなた関西人じゃないのかしら? 今のに笑いが何処にあるのかしらね」

「じゃあ、無駄口はこれくらいにして始めましょうか? 私も、聖史の手伝いに行かないといけないしね」

「そうね。早く正志君達と合流しないといけないからね」

 神名と伴子は、まるでゴングの音が聞こえたかのように、ほぼ同時に駆け出した。

 始めに仕掛けたのは伴子だった。伴子は、神名の目の前まで走り込むと、残像を残し消えたかと思うと、神名の後ろから背中を斬り付けた。神名は、残像には見向きもせず、伴子が消えた瞬間、動きを止め、後方に危険を感じると、スッっとしゃがみ込んだかと思うと、最下段の回し蹴りを放った。足元をすくわれた伴子は、バランスを少し崩したが、すぐにバックステップしそのまま神名へ近寄ると、小細工無しの連撃を繰り出した。足に手応えを感じた神名はすぐさま振り返りファイティングポーズをとったが、伴子が突っ込んで来ると、連撃を避けるでもなく、連打を繰り出した。時折、神名の体や服がスパッと切れ血が滲み出していた。それでも神名は、連打の手を休める事なく打ち続けた。この時見た目には変化は無いものの、伴子も神名の打撃がヒットし、腹部や胸部に痣が数ヶ所発生していた。手応えを感じ取った両者は、攻撃のスピードをアップさせ、完全に向かい合ったままの打ち合いになっていく。伴子の服に穴が開き、肌が露出したと思うと、皮膚の色はどす黒く変色し、数ヶ所から黒い体液が流れ出している。神名の服も切り裂かれ、もう既に下着のみで戦っているような状態で、体の至る所に裂傷があり流血していた。しばらく、打ち合いが続いた後、突然神名がひざまづき、攻撃の手を止めた。神名の腹部に大きな傷が開き、大量に出血を始めていた。

「あら、もう終わりかしら? 負ける気が無いとか言っておきながら、呆気ないわね。だから言ったでしょ、私には勝てないってね」

「ふふっ。惨めねあなた。痛みに鈍感なのね。その体で勝ったつもりなの? じゃあ、もう一戦してみる?」

 神名は、腹部の傷を押さえながらフラフラと立ち上がると、ファイティングポーズをとった。

「そう。死にたいのね。じゃあ、今楽にしてあげるわ!」

 伴子が神名に斬り掛かろうとした瞬間、伴子の体がグラッっと傾くとそのまま前に倒れ込んだ。

「バカね、あなた。それだけお腹にダメージ受けてたら、普通なら立っているのもやっとの筈よ。それが分からないくらいあなたは鈍感なのよ!」

 と言うな否や神名は、伴子の上にマウントポジションを取ると、顔面に連打を打ち込んだ。神名が伴子から離れると、伴子の顔面はもう原形を留めていなかった。

「正志君、ごめんね。私、追い付けそうにないわ」

 神名は、腹部を押さえながら前のめりに倒れ込むと、そう呟いて目を閉じた。


   激+坂下母Vsモンスター


「ババア! やるじゃねぇか!」

「当たり前よ。私だって少し前までは、この子達仕切ってたのよ」

 激と坂下母は、ぎこちないながらも連携のとれた攻撃で、モンスター達を撃破していた。

「よぉし、終わりが見えてきたぜぇ!」

「後もう少しよ。あんた頑張りなさいよ」

 百を超えていたモンスターの大群も、既に数える程に少なくなっていた。調子に乗った激が、数体のモンスターに飛び込んで行った時だった。

「ギャア!」

 突然、坂下母が悲鳴を挙げて倒れ込んだ。

「どうした、ババア!」

 激が近寄ると、背中一面に深い五本の斬り傷を受けた坂下母が、大量の出血と共に横たわっている。

「テメェら! 老体相手によってたかって何してやがる! ぅおりゃぁぁぁ!」

 激は、坂下母に傷を負わせたと思われる目前のモンスターを薙ぎ倒すと、坂下母に駆け寄った。

「おい、ババア! こら! 返事しろよ! おい! 浩二はどうすんだよ! おいってよ! ババア!」

 激は頬を叩いたり、肩を揺さ振ったりしながら、大声で叫んだが、もう坂下母が声を発する事は二度と無くなっていた。

「テメェ〜ら〜! もう、許さねぇ! 皆殺しだ〜! ……ゴフッ!! グフッ!!」

 激が鬼のような形相で立ち上がった時、激の腹部に爪が突き刺さったと思うと背中へと貫通していた。

「テメェ! これで終わりじゃねぇぞ! まだ、俺は生きてるぞ! 後はテメェらだけなんだ、刺し違えてでもテメェらは殺してやる! ぁぁあぁぁぁああああ!!」

 気合いと共に腹部に突き刺さった爪をへし折ると、激はその爪を腹部より抜き出し、チェーンにくくり付けると、それを力任せに振り回し始めた。ただでさえ鋭利な爪は、チェーンの遠心力を得て、触れると一刀両断の武器へと変化していた。身の危険を感じ後退を試みたモンスター達だったが、既にチェーンが通り過ぎた後で、動こうとした途端、体が二つに分断し、その場に崩れ落ちていった。

「へへっ。な、俺だってやりゃあ出来るだろ」

 一言もらすと、激もまた蒼白な顔でその場に俯せに倒れ込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ