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決戦

「ぐぅるるる〜!!」

「ガァァァゲェァ!」

「どうしたお前達、何かあったんか?」

「静かにしろや。集中して見張りも出来へんやろが!」

 修道館前広場、ここでヒュムモンスターとアニマルモンスターが数体ずつ見張りをしていた。突然唸り声をあげ始めたアニマルモンスターに不安の表情を見せながら、ヒュムモンスター達は、辺りを見渡す。

「何やねん。何もおらんやないか」

「あんたら紛らわしい声出しなや。びっくりするやろ」

 ヒュムモンスター達が、アニマルモンスターをなだめ肩の力を抜いた時だった。強い風が吹き抜けたと感じた瞬間、ブシュッという音と共にヒュムモンスター達の首が無くなり、周りにいたアニマルモンスターにヒュムモンスターの首の付け根から噴き出した体液が降り注いでいた。突然の出来事に戸惑いを見せたアニマルモンスターは、ヒュッという音と共に、チェーンの打撃を受け前身部と後身部に分かれて倒れ込んだ。

「へっ! 余裕だな」

「激! ザコ相手しかも不意打ちで、意気がんじゃねーよ!」

「んだとコラァ! しかも、また呼び捨てで言いやがったな! 一応年上だぞ俺わぁ!」

「まあ、良いではないか。所詮そやつは、その程度の者という事よ」

 ヒュムモンスターの頭を数個髪をわしづかみにした状態で現れた浩二は、一笑しまた歩き始めた。

「んだとコラァ! ……」

「まぁまぁ、ドウドウ」

 激の背中を後ろから霧斗が叩いて、そのまま通り過ぎていく。

「霧斗さんまで……。って俺は馬か!」

 喚き散らす激を余所に、一同はゆっくりとだが確実に天守閣へと足を進めて行った。

「やはりここまで来ると、素直に通してくれんようじゃな」

 歩きながら、浩二がボソッっと呟くと、正志が後に続く。

「だろーな。さっきから殺気の数が、どんどん増えてやがる」

「これは……、ちょっと危険じゃないかい?」

「ええ。既にかこまれてるし……」

 一同は顔色一つ変えず、落ち着いた表情で軽口をたたきながら、一歩、また一歩と足を進めていた。

「何処? 何処だ? 敵は! ……みんな、脅かすなよ。いねぇじゃねぇか」

 激のみ辺りをキョロキョロと見渡しながら、額の汗を拭っている。

「ねぇ、これ以上は無理じゃない?」

「そうじゃな、限界かの?」

「テメェら、出てきやがれ! 隠れてコソコソしてねーでよ!」

 一同が足を止め、正志が一声すると、辺りの茂みや木の上、堀の下、からゾロゾロと3種のモンスター達が集まってきた。

「……よ、……よーし、……こ、……ここは、お、俺に、ま、ま、任せ、……ろ! ザコは、……俺専門……だからな」

 激は突然立ち止まると、他のメンバーに向かって叫んだ。

「激君、無理するんじゃない。震えてるじゃないか。何なら、僕も残ろうか?」

「俺だっていつまでもナめられてられねぇんッスよ! 言ったでしょ、ザコは任せろって! お前らは、先に行きやがれ! すぐ追い付いてやるからよ!」

 激は震える足に力を入れ、震えを見せないようにしながら、ありったけの大声で叫んだ。

「悪りぃ、激! 死ぬんじゃねーぞ!」

 正志達は、一番近道となる道にはだかる敵を薙ぎ倒しながら先へ先へと進んで行く。

「へっ! マジで行きやがった。あの薄情者共が! 呼び捨てだし。……ぅおぉぉぉぉ!! じゃあ、始めようじゃねぇか! ……うひゃ! うへへへ! ぅうひゃゃゃひゃ〜! 行〜くぜぇ〜!」

 激に向かって突き進んでくるモンスターの群れの中に、激は自ら身を投じて行った。


「来おったで。ひぃ、ふぅ、みぃ……。全部で6体やな」

「ん? 二人程は、非戦闘員か? 物腰の音が軽いで」

「ほんなら、6対4で俺らの方が有利やな」

「けど、気ぃ抜くなや。あのガキの時の事忘れた訳やないやろ!」

 その様子を嗅覚と聴覚で、木村達は判別し敵の到着に際し戦闘体制に移行していた。

「でも、あのガキはバケモノやで」

「今から来る相手もそのバケモノや。言うてたやろ、対を成す存在やて」

「来るで! お前ら、気ぃ引き締めろや!」


 その木村達を肉眼で捕えられる位置まで正志達は来ていた。

「おっ! 今度は人型ばっかり6体か。これなら余裕じゃねーの」

「正志君、それは甘いと思う。あの数の後にこの数、どう考えても小数精鋭と考えるべきだろう。……どうかな? ここは、僕に任せて貰えないかな? 僕も最近強くなったような気がしてるんだ。君達にばかり負担も掛けられないしね。……どうかな?」

「霧斗! じゃあ私も残るわ!」

「いや、君は正志君達と行くんだ。ここは、僕だけで凌いでみせる」

「霧斗?」

「分かったね? 神名」

「うん。じゃあ、気をつけてね霧斗」

 霧斗は神名をギュッっと抱きしめると、すぐに離し背中を押した。

 正志は神名を、浩二は矢馬鍋と穴渕を抱えると、相手の方へダッシュし見向きもせず木村達の間を通り過ぎた。

「お、なんや。……オッサン一人で相手してくれんのか?」

「俺らもナめられたもんやな」

「ここで死んで一生後悔しろや!」

「徒党を組まないと、一人前に何も出来ないあなた達に負ける道理はありません。いつも正志君相手に練習していたのでね、君達に負ける気が全くしないよ。……こっちはいつでもいいよ。さぁ、始めようか?」

 木村達の前に対峙した霧斗は、仁王立ちのまま、睨み続けていた。


「あら久しぶりね、正志君。……やっぱり聖史に用事かしら。でも、私は通さないわよ。聖史に会いたければ、私を倒して行く事ね」

 もうすぐ城下という所に来て、伴子が立ちはだかった。

「正志君、何か馴れ馴れしいけど、この人誰?」

「俺も一度しかあった事ねー。あのガキの母親だ」

「ほう。貴様が『キラヘル』の産みの親か」

「その呼び名。あなたが聖史のいう『ホリスタ』ね。じゃあ、尚更ここを通す訳にはいかないわね」

「でも……、残念ね。あなたの相手をするのは私。この二人には先に行ってもらうわよ」

「ふ〜ん。でも私を振り切って行けるかしら。もし、それが出来れば、あなたの相手をしてあげるわ」

「じゃあ神名さん、ここはお願いします」

「気を付けられよ。この女、少々手強そうじゃぞ」

「えっ……。何……? 何でそんな所に」

「ごめんな、おばさん。じゃあ、神名さんに相手してもらってよ。じゃーな!」

 会話の最中に伴子の後方へ移動していた正志と浩二は、神名を置いて先を急いだ。現状を把握しきれない伴子は、悔しそうに正志達の後ろ姿を眺めていた。


 突然の攻撃を正志と浩二は、紙一重で避けると、その威力の大きさに少し驚いていた。

「ぅおっと! 危ねー! ……おおっ! 地面が割れてんじゃねーか! ……誰だ! ガキか? 出てきやがれ!」

 正志と浩二は、辺りを見渡しながら、警戒体制をとり次の攻撃に備えた。

「!! ……はっ。貴様……、一体誰じゃ」

 第二撃をかわした浩二は、攻撃を仕掛け相手を追尾し話掛けた。

「よう! 正志! 久しぶりだな! お前んとこのボス、俺が相手してやるぜ! ……なんかさ、前に言ってたゲームならって話覚えてるか? 今のこの状況RPGぽくねーか? 何かよ、俺、悪者になっちまったみてーだけどな! ……正志! この先で聖史が、お前の事待ってんぜ! ……俺もお前と戦ってみてーけど、このオッサンで我慢してやる。早く行け!」

「正志殿の知り合いか? だとしても、我は手など抜かぬぞ! ……では、いざ尋常に勝負!」

「古りぃんだよ、お前らのしゃべり方は! ……オッサンこそ、俺の鬼包丁の餌食になりやがれ!」

 対峙した二人は、相手の出方を見定めるように、お互いを見つめ合っていた。


「ガキ! 来てやったぞ! 出てきやがれ!」

 天守閣下に辿り着いた正志が、聖史を探しながら大声で叫ぶと、聖史は、あたかも今までそこにいたかのように、静かに姿を現した。

「ふ〜ん、頼兄ちゃん、正志兄ちゃんとやらなかったんだ。……久しぶりだね、正志兄ちゃん。じゃあ、早速だけど始める?」

「最初っから全力で来いよ! 俺は前の俺よりも強えーぞ!」

「そうみたいだね。……でも、初めは小手調べからだよ。僕も、前の僕より強くなってるからね」

「へっ! そーかよ! じゃあ、おしゃべりは終わりだ! こっちから行かせてもらうぜ!」

 正志の言葉を合図に、二人は互いに向かって走り出していた。

 今は誰も気が付いていなかったが、いつの間にか、矢馬鍋と穴渕が姿を消していた……。



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