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腕試し、そして……

「では、早速始めようではないか! 小僧! 力試しだからといって無傷で済むなどと思うなよ! 我を愚弄せし罪、その身体に刻み込んでくれるわ!!」

 広場に到着した二人が向き合った途端、『ホリスタ』は正志に怒りを投げ掛けると、いきなり襲い掛かってきた。

「あれ? 『ホリスタ』って、そのままなの? まっ、いいか」

 発声と共に『ホリスタ』は、その鋭い爪で正志の正面から斬り付けた。が、正志は刀の柄を上にし、縦に持った状態でその攻撃を防ぎ、左でサバイバルナイフを握ると浩二の喉元目掛けて斬り付けた。『ホリスタ』は、紙一重でナイフの斬撃をかわすと、正志の正面から音も無く消えたと思うと、『ガキッ』っと音と共に正志の背後に現れていた。正志の背中に向けて、爪の斬撃を放っていたが、これも刀による防御にて、正志に傷一つ負わせることは出来なかった。

「なぁ、オッサン。マジでやろーぜ! 俺、楽しくねーよ!」

 攻撃を連続でガードされただけでなく、挑発的な言葉の前に『ホリスタ』は理性を失い始めていた。

「我の足元にも及ばぬゴミの分際で、我をここまで愚弄するとは、もう生かして帰さん! 偶然防ぐ事が出来たようだが、もう偶然は訪れんぞ! 我の真の姿を見て死ね! 貴様のような小僧、我が傘下には必要ないわ! 消えろ!!」

 言葉を発した『ホリスタ』は、「はぁぁぁぁ!!」っと力を入れ始めたと思うと、その姿がみるみると変貌していく。短髪だった髪が足元まで伸び、爪は指から鋭利なナイフが生えているかのようになり、肘と膝から槍状の骨が突き出し、皮膚が硬化しまるで金属で作られた皮膚のように皺一つ無くなった。

「おー。やりゃー出来んじゃん。っっっしゃぁっ!! やるぜー!」

 『ホリスタ』の姿を見た正志は、今まで以上に生き生きした表情になり、フル装備に変更すると、まずスピードスタイルになり相手の出方を待っていた。

「な、何だ……あれは……」

「あ、あれが……、『ホリスタ』……か……」

「バ、バケモノじゃねぇか」

「正志君……」

「あ、あ、あ、………」

 バトル見学中の一同は、『ホリスタ』の姿に驚愕し、恐怖すら覚えていた。

 変化を終えた途端『ホリスタ』は、フッっと姿を消した。……と思うと、正志がキンッ、キンッっと何かに攻撃されているかのように、刀とナイフを振り回しながら防御姿勢に入っていた。正志は、前後左右からランダムで繰り出される斬撃と突きの攻撃を刀とナイフで凌いでいたかと思うと、突然その場から姿を消したかと思うと、地面から上向き、その後自分の周りへと火炎放射を行った。『ホリスタ』は、火炎などもろともせずに火炎の中を移動し、正志に攻撃を仕掛けたが、炎の切れ目に目を付けた正志は、釘バットにて渾身の一撃を放った。ガッと音と共に、矢馬鍋の足元に突然、『ホリスタ』が倒れ込んで来たかと思うと、ガバッっと起き上がるとそのまま、残像を残しその場から消え去った。正志は、バットでの攻撃に手応えを感じたが、攻撃直後無手の状態で目を閉じ、両手をだらんと下に下げた状態で静止した。『ホリスタ』は、攻撃が一撃も当たらない事に苛立ちを感じていたが、正志の一撃が左顔面にヒットし吹き飛ばされた為、妬けに成り始めていた。矢馬鍋の足元に飛ばされた後、すぐさま起き上がると、正志目掛けて斬りかかったが、無手で閉眼している筈の正志に一撃をも入れることが出来ず、攻撃の全てを紙一重でかわされ、その度に腹や胸・顔に一撃ずつ拳での打撃を受けていた。そして、『ホリスタ』が一時離れた瞬間、正志は『ホリスタ』とは関係の無い方向にダッシュしたかと思うと、「神名さん! 激! これ借りるぜ! とナックルとチェーンを奪い去って行った。

「な、な、な、なんでお前! ……俺は! 俺は、呼び捨てなんだぁ!」

 正志は、バトルポジションに戻ると、両手にナックルを装備し、両腕にチェーンを巻き付け、ファイティングポーズをとった。

「くそぉ! くそぉ! 何でだ! 何故、何故人間ごときに我が翻弄される! くそぉ!」

 『ホリスタ』は、素早い動きでの斬撃の間に肘や膝での突きを織り交ぜ攻撃を仕掛けた。正志は、降り注ぐ斬撃の豪雨を両腕のチェーンでガードしながら、突き攻撃を避けた瞬間、瞬間、ボディの同じ場所に一撃ずつ打撃を与えていた。ギッ、ギン、ガッっと金属の擦れるように音が時折聞こえていたが、正志がニヤッと笑った刹那、グゴボッと何かが凹むような音がした途端、『ホリスタ』は後ろに飛びのいた。『ホリスタ』が、バックステップすると正志は、左腕のチェーンをスルッと抜き取ると、取り出しと同時に左上から下に向けてチェーンを振り下ろした。後ろに下がった『ホリスタ』が、自分の身体を確認すると、腹の部分に亀裂が入り、中から黒っぽい体液が流出していた。ヒュッという音が聞こえ、身の危険を感じた『ホリスタ』は、正志に向かって攻め込んだ。正志は、振り下ろしたチェーンが着弾する前に手前へ引き寄せ、攻め入る『ホリスタ』を確認するとチェーンに入れた力を抜き、その場に座り込んだ。『ホリスタ』は、地に片膝をついている正志を見て違和感を感じたが、正面突破はことごとくガードされ、左右からの流撃もガードされていた為、正志の少し手前で飛び上がった。しかし、それを待っていたかのように「ビンゴ! かかったぜ!」と正志は地面に這わせていたチェーンを振り上げると、右腕のチェーンも左手で抜き取り下から来るチェーンと挟み込むように、真上から叩き落とした。『ホリスタ』は、宙に身体があった為この攻撃を回避する事が出来ず、片腕と片足にチェーンが巻き付いた状態で落下した。手足にチェーンが巻き付いた『ホリスタ』は、何とか取り外そうともがいたが、外れぬまま落下しこのままでは危険だと起き上がろうとしたが、時既に遅く正志にマウントポジションを取られると、顔面に正拳突きを寸止めされていた。

「大〜勝利〜!」

 正志は、マウントポジションのまま両手を上に掲げて、大声で叫んでいる。

「に、人間ごときに。我が苦汁を飲まされるとは。認めん。認めんぞ! 貴様、どんな卑劣な手を使うた! ……くそぉ! バケモノか貴様は!」

「バケモノはテメェだろ!」

 『ホリスタ』の上に乗っ掛かり勝利の雄叫びを挙げる正志を見ながら、一同は驚愕の思いを隠しきれずにいた。

「……」

「正志君、君は……」

「嘘だろ……おい! ……」

「バケモノだ。あのバケモノを倒すなんて。本当に人間なのか、あの少年は……」

 『ホリスタ』は正志から逃れると、立ち上がり元の浩二の姿に戻っていった。

「貴様……、いや、正志殿その力我にお貸し頂けないか。我は、思い上がっておったようじゃ。我より強き正志殿の力を借りる事が出来れば百人力じゃ。お主は、一騎当千の能力をお持ちのようじゃ。この通りじゃ」

 『ホリスタ』は片膝を付き、頭を深々と下げている。

「だから、いいって。初めから仲間になるって言ってたろ。傘下には入らねーって言っただけじゃん。後さ、あんたにしても、あのガキにしても、スピードに任せた近距離攻撃に頼り過ぎだよ。大技の後の隙がでけーよ。直さねーと、相手によっちゃあ死ぬぜ」

「敗北した上に指南まで頂けるとは、有り難く思う。これより我の事は、この身体の持ち主でもある浩二、坂下浩二と呼んでくれ。して、正志殿。お主どこで『キラヘル』と一戦交えたのじゃ? また、あやつは今何処におるのじゃ」

「あのガキが、オッサンの言う『キラヘル』なんだったら、霧斗さん達と出会う前に一度バトッたんだよ。頼が勝てねー相手だったけど、いいとこまでいったんだぜ。でも、姿が変わった途端スピードが格段に上がりやがって、負けちまった。その時、頼を連れてかれちまったんだ。今は何処にいるのか知んねー。でも、必ず見付けてやる。見付けて、頼を取り戻して、あのバケモノを倒してやる!」

 話ながら、正志の目はだんだんと怒りに満ちていった。

「そうか、知らぬか。では仕方ないな」

 浩二が肩を落とした時、神名が口を開いた。

「ねぇ、これ『キラヘル』と関係あるかどうか分からないんだけど、最近ね大阪城にモンスターが集まっているっていう内容の書き込みがあったの。参考になるかしら」

 神名の一言に目を大きく見開いた浩二は、ゆっくりと神名に近付くと、その肩にポンと手を置いた。

「そう云えばあやつら、『キラヘル』の覚醒の時、大坂の社がどうとか言っておったな。女よ、手柄であった。『キラヘル』は、大坂の社におるとみて間違いなさそうじゃ。貴様ら、覚悟があると云うならば、我に協力願えぬか? 今より大坂の社に攻め入る。但し、敵の総戦力が集結しておるとみて間違いないじゃろう。それでも良いのであるば協力願う」

「それで、元の生活に戻れるのであれば、協力は惜しまない。……先程の正志君とのバトルを見て感じたが、私では君達程の戦闘力は無いがそれでも良いのなら……」

「その『キラヘル』っていうのやっつけたら、いいのよね。私も、そんなに戦力にはならないかもしれないけど、黙って見ているだけなんて出来ないから……。それでもいい?」

「お前は嫌いだ! 俺をナめてる正志も嫌いだ! でも、お前達だけに見せ場がある訳じゃねぇ! ……ザコは任せろ……! 俺の力貸してやる!」

 周りの反応を見ていた浩二が口を開こうとした時、正志が浩二の前に割って出た。

「霧斗さん、神名さんありがとな。ガンバろーぜ! ……あと、激! ……死ぬなよ」

「だから! 何で俺は呼び捨てなんだよ! しかも、死ぬなって縁起でもねぇ!」

「弱えーからだよ。嫌なら、強くなってみろよ」

「……」

「それでは皆の衆参ろうか」

 浩二は正志達を先導するかの如く車に向かって歩き出した。

「私達は……、どうすれば……」

 矢馬鍋と穴渕は、まごつきながら浩二に助言を求めたが、「貴様らは、我と共に来るのじゃ! 特に真由子は我が子を宿しておるのじゃぞ! 貴様、それを離して、何をしようと考えておる!」と浩二に睨まれ、「い、いえ何も……」と口ごもると、正志達の後に続いた。


 変わらぬ日常・変わらぬ生活、この非常識な現実から脱出するための戦いが今始まろうとしていた。



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