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集結

「うわぁ! たくさん来てるね」

 はしゃぐ聖史を尻目に頼は、不安の思いと困惑の表情を隠せないでいた。

 大阪城の周りには、プラントモンスター・アニマルモンスター・ヒュムモンスター達が、争う訳でも無く、種族毎に集結し徒党を組んでいる。その間を、堂々と進んで行く聖史と伴子に、頼は置いて行かれないようにしながらコソコソと後について行った。

「なぁ、本当に大丈夫か?」

「何が?」

「コイツら全員モンスターだろ? 俺が人間だって分かったらやばくねーか?」

 頼が、心配そうに伴子と話していると、「大丈夫だよ。この人達、僕が『キラヘル』だと分かった時点でまず怒ると思うから。後、その時頼兄ちゃんの紹介もするから」と聖史がニコニコしながら言っている。

 しばらく歩くと、聖史達は天守閣の前に到着した。途端、聖史はモンスターの方に振り返り突然、宙に浮かび上がった。

『よくぞ集まった我が種を受け取りし我がしもべ達よ。我は『キラヘル』貴様らの創造主にして、唯一絶対無二の存在。貴様らに与えし、その力を持ちて我を守護せよ。また、この界隈の愚民共を駆除し、我等の理想王国を築こうぞ。この界隈を平定後、近隣の國々への進軍も行う。我への忠誠とくと見せるがよい』

 頼には聞こえない声で聖史が話し掛けた途端、プラント・アニマルモンスターは深々と頭を下げたが、ヒュムモンスター達は不満の声を爆発させていた。

「おい! ガキ! テメェ何ほざいてやがんだ! 殺すぞ!」

「何でガキの子守しなくちゃなんねぇんだ! 俺は帰らせてもらうぞ」

「バカバカしい! アホかテメェ!」

 ヒュムモンスター達は口々に悪態をつき、その場から離れ始める。

「我が力を与えなければ只の愚民だった存在が、よく言ってくれた。貴様ら我より褒美を執らせる。死という褒美をな!」

 そう言うと聖史は、その場からフッっと姿を消したかと思うと、両手に4つずつの頭を持ち元の場所に現れた。

「速ぇ!」

「速い! 私にも見えなかった」

 木村達は、場を離れるヒュムモンスター達を眺めていたが、一瞬の出来事に目を奪われた。そして、聖史達の方に歩み寄って行った。

「おい、ガキ。お前が『キラヘル』ってヤツなんやねんな。俺達に守護しろって、俺達よりも弱かったら洒落にならんぞ。どうなんや?」

「ちょっと待て、木村。このガキが『キラヘル』ってのも納得いけへんけど、それよりそこの小僧。お前、人間やないか? お前、人間と同じ臭いがするでぇ」

「は? 犬飼、お前鼻いかれちまったのか? こんな所に人間がいるわけないやろ」

「いや、間違いなく人間や。どういうことや! 説明してもらおうか。事と次第に選ったら、承知せえへんで!」

 犬飼は、木村を押し退けて聖史の方に威圧的に歩み寄っていく。

「うん。頼兄ちゃんは、人間だよ。でも、頼兄ちゃんはおじさん達よりも強いから、僕の側近なんだよ。もし、納得いかないんだったら、頼兄ちゃんと戦って勝ってみてよ」

 聖史は、怯む事なくむしろ挑発的に犬飼・木村達に話し掛けている。

「おい! 聖史。ヤベーって。挑発してどーすんだよ。……って、え? どーしたの? やだな、おじさん達。……マジ?」

 聖史にコソッっと話していた頼に木村達がにじり寄って来た為、頼は少し尻込み気味になった。

「お母さん。頼兄ちゃんにあれ渡して」

「ねぇ、本当にあれで戦わせるの? まぁ、いいけどね。じゃあ頼君、はい、これ。聖史からのプレゼントだって」

 伴子はそう言うと、大きな包丁の様な鉄の塊を取り出した。

「何それ? これやばくねー? ありがとな、聖史。……じゃあ、オッサン達やるか! 一人ずつか? それとも全員で来るか?」

 頼は腹をくくったのか、普段の感覚に戻り、伴子より受け取った鬼包丁を肩に背負い込んだ。

「テメェみたいなガキ一人に全員でやったら、そこの生意気なガキにそれこそ舐められるわ。俺が相手してやる。かかってこいや!」

 周りの意見も聞かず、保は一歩前にしゃしゃり出た。それを合図かのように、頼は戦闘モードへと突入した。

「じゃあ、オッサン。遠慮しねーぞ。スタートだ!」

 鬼包丁を肩に担いだまま、頼は大声で保に声を掛けると、保の方へ走り出した。保は、頼が目の前まで来ると、いきなり正拳突きを繰り返したが、目の前に頼はおらず、後ろから保の肩に鬼包丁を乗せられた。

「オッサン、遅ぇーよ。今のがマジバトルなら、オッサン死亡ね。はい。オッサン終〜了〜!」

 頼は保の肩から鬼包丁を下ろすと、そそくさと聖史の所に戻って行く。

「あの小僧、あんなデカイモノ持って……。消えやがった。くそぉ! 今度は、手加減無しだ! もう一度やらせろ!」

 喚く保を遮るように、木村達が前に出てきた。

「なるほどな。言うだけの事はあるんやな。じゃあ、俺達全員相手にも出来んのやろな? さっきそう言うてたし」

「おっしゃ! じゃ、全員で来い! その方が早く終わっていいんじゃねーか? あっ、さっきのオッサンも入っていいぞ。手加減無しでな! じゃあ、やるぞ! 構えろよ! ……GO!」

 と言うや否や、頼は飛び出して行った。

「轟、あの子速いわよ。あなたが一番追い付き易いんじゃない?」

 友利が、轟に指示を与えた瞬間、ガッっと音がしたと思うと、轟が足の間に鬼包丁を挟まれ転倒し顔の前にその刀を突き付けられていた。

「はい。一人終わり」

 と言った瞬間、頼の右側より蓮見が大口を開けて飛び掛かって来たが、頼はその刹那鬼包丁を盾のように使い、それを回避すると、そのまま鬼包丁を両手で振り回すと蓮見の喉元に鬼包丁の刃を突き付けた。

「余裕〜。二人目終了!」

 それを見ていた木村・犬飼・友利は、それぞれの特殊能力を生かし、三身一体で攻撃を仕掛けた。木村が、爪で攻撃を仕掛けると、頼の動きを見ていた友利が木村・犬飼に即座に指示。その他の二人が、攻撃した際も残りの二人が同様に指示を出して、頼の動きを封じ込めたつもりになっていた。

「この3人弱ぇーな。じゃ、いっぺんにやっちまうぜ!」

 ボソッっと呟くと、攻撃を仕掛けてきた犬飼を鬼包丁で受け止めると、犬飼を攻撃すると見せ掛けて、友利の胴へ一閃の斬撃を放った。そのまま、犬飼をもう一度追尾すると、木村の首筋に鬼包丁の刃を一度当て、犬飼の顔の前に刃を突き立てた。

「オッサンら弱ぇ! 3人まとめて終了! ……後は、弱ぇオッサンだけ」

 そう言って頼は保に向かって走り出す。

 保は先程の二の舞はうつまいと、頼の動きをよく見定め、目の前に来た際、正拳を出す振りをすると、裏拳を繰り出した。……が、頼は後方への移動を行っておらず、保は背中に鬼包丁を突き立てられていた。

「終〜了〜! 弱ぇ!」

 吐き捨てるように呟くと、頼は聖史の所に戻った。

「ね! おじさん達じゃ、頼兄ちゃんには勝てなかったでしょ。これで分かった? なんで頼兄ちゃんが僕の側近なのか。……あと、頼兄ちゃんに勝てないんだったら、僕には到底勝てっこないよ」

 聖史は、木村達を見下すように、そう告げると残りのヒュムモンスターの方に向き直った。

「おじさん達も文句があるなら相手するよ。但し、これ以降は寸止め無しで殺すから。どう? まだ、帰っちゃう?」

 その言葉の後、ヒュムモンスター達は、ゾロゾロと引き返して来ると聖史の前にひざまづいた。

 キラヘル『近々、我の宿敵『ホリスタ』の攻撃があると思われる。貴様らは、我を守護し『ホリスタ』を打ち倒してみせよ。その後、近隣國への進軍を開始する! 貴様らの活躍期待しておるぞ』

 その音無き声を聞き、各モンスター達は、深々と聖史に頭を下げた。

「頼兄ちゃん。これからは、ここに住むからね。あと、みんなには、言ってないけど順位決めてるから、教えとくね。……えーと、僕が『キラヘル』だから大将、お母さんと頼兄ちゃんは、僕の側近。ヒュムモンスターの中でさっきのおじさん達が隊長クラス。その後上からヒュム・アニマル・プラントっていう順番ね。どう? よく出来てるでしょ」

 嬉しそうに聖史は頼に話し掛けながら笑っていた。

「あ〜あ、早く正志兄ちゃん来ないかな」

 と聖史はボソッっと呟いた。

『正志か。今の俺なら、お前に勝てんのか? 今何してんだよ、正志! ……ん? 今に聖史の言い方、もしかして正志がその『ホリスタ』ってヤツか? ……どっちでもいーや。打倒『ホリスタ』か、いよいよRPGって感じだな。おっしゃ! やったるぞ! ……って、何か俺悪者ハマってねーか?』

 頼は心の中で呟いた。



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