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「穴渕君。ほら急いで」

「先生、ちょっと待って下さい。……私、お腹大きいんですよ」

「分かっとる。でも後少しだから、急いでくれ。……あっ、だからと言ってその子を無しにするのは止めてくれよ。大事な研究資財なんだからね」

 矢馬鍋達は、けたたましい警報とアナウンスの中、狭い通路を這うようにして進んでいた。

「あっ先生っ! この子が! この子が栄養を欲しがっています」

「こんな時にか!? もう少し待ってくれないか。ここでは無理だ。あと少し、……あと少しだけ待ってくれ」

「あぁ! 先生っ! お腹が! お腹が食べられちゃう!」

「あと少しだ! あの扉の向こうに行けば、食べさせてやるから!」

「先生早く! 早くして! 早く! あぁ! もう! は、早くぅ!」

 矢馬鍋達は、大急ぎで、非常口と書かれた扉に駆け込むと、そこに待機していた救急車に転がり込んだ。

「君! 駐車場! 駐車場に入れてくれ! くれぐれも、病院の外に出ないようにな!」

 と言うや否や、ズボンと下着を脱ぎ捨てた。

「待ってろよ。あと少し、あと少しだからな。……くそっ、勃起ない! 勃起ってくれ!」

「あぁ! 先生! 早く!早くして!」

 穴渕は、腹を抱えのたうち回っている。

「穴渕君! 勃起ないんだ! 勃起ないんだよ!」

 矢馬鍋は、穴渕の裸体を眺めながら、懸命に自分の股間を触っているが、焦りと恐怖で勃起しなくなっていた。

「先生! 先生! 貸して! 私がやる! 早くしないと! 私死んじゃう!」

 穴渕は、そう言うと矢馬鍋に覆いかぶさって行った。



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