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覚醒

「なぁ、そいつ何なんだ?」

「聖史。私の子よ」

「でもよ。何かバケモノみてーになったぜ」

「この子は特別なの。……そのせいで不幸なところもあるけどね」

 聖史・伴子・頼は、ある廃屋に身を潜めていた。

「でもよ……。何でコイツだけ違ぇんだよ。他の奴、あんたやモンスターと全っ然違ぇじゃねーか」

「教えて欲しいの? まあ、何も無しで納得してって方が難しいか。そうだね、聖史が気に入ったあんただからね、教えてあげるよ。まあ、ゆっくり聞いてね」

 と、くつろいだ表情になった。聖史は、伴子の傍でニコニコしている。

「あれは、6年前。あの頃はまだ主人も会社員で、あの特別変異達もいなかった。私は新婚すぐに妊娠して、もうすぐ出産だった。でも、聖史を出産してから状況が一変した。産まれた時、この子は普通の赤子だった。でも、それから2ヶ月後事件は起きた。ベビーベッドで寝ていた筈の聖史がいなくなってしまったの。私達は懸命に探したわ。そしたら、主人が見付けたの、聖史を、近くの公園で怪物のような姿になって、野良の犬や猫を弄んでいたのを。主人は驚いたのと同時に、聖史を殺そうとしたの。私は、咄嗟に止めに入ると聖史を家に連れて帰った。でも、主人の行為は止まらなかった。私の隙を見ては聖史を殺そうとしたわ。それから3年経ってから、私に我慢の限界が訪れた。その日も主人は、おもちゃで遊んでいた聖史を後ろから包丁で刺し殺そうとした。私は、もう何も考えられなくて、気が付いたら目の前に、頭が潰れてぐちゃぐちゃになった主人が倒れていたわ。私の手には血まみれのハンマーが握りしめられていた。そんな主人を聖史は、しばらくぼーっと眺めていたのだけど、その後主人に近付くと、そのぐちゃぐちゃになった頭の中を食べ始めたの。頭が終わると首か

ら中身を取り出して。その頃からかな、巷で特別変異の話が出始めたのは。聖史はいつもと変わらなかったけど、周りがだんだん変わり始めた。あなたも知ってるでしょう? テレビやラジオなんかで、新型のインフルエンザが動植物に感染しているっていうの。あの時、実は私も感染していたの。初めは気が付かなかったわ。意識が無くなったのも覚えてないし……。けど、私の横で泣いてる聖史に気が付いて、意識が戻ったの。それからよ、遠くの方のモノも良く見えるし、耳も良くなった。身体が軽くて、動き易くなって、何よりも変わっていたのが、爪が硬くなってて自分の意思で伸縮が可能になってた。初めはびっくりしたわ。病院にも行こうかと思った。でも、もし入院にでもなったら聖史は……、って思ったら行けなかった。それからしばらくしてからよ、これが何なのか気が付いたのは。あの時も聖史の相手をしていた時だった。聖史の周りに、小蝿がたくさんたかっていたの。私がその小蝿を振り払おうとした時よ、小蝿達が突然ブァって飛び去ったの。その小蝿達周りにあった植物や動物の中に入って行ったのよ。私、その時分かったの。これは病気じゃないって、これは聖史が

自分を護る為に身体から何かを出しているんだって」

「はあ? 何じゃそれ?」

 伴子の言葉が切れたと同時に頼は、信じられないという素振りをした。

「黙って聞いて。……でね、聖史の出したモノには適性があるみたいなの。だから適合するモノは覚醒するし、適合しないモノは覚醒しないみたいなの。……で、あなたの質問にあったこの子と私の事だけど、……この子はね、唯一の生まれ持っての特別変異。誰から感染・覚醒したのではなく、産まれて間もなくして、自力で変異した特別変異の王なのよ。私は、この子を護ろうとするから、巷の特別変異と少し違う変異みたい」

 のんびりと話をしていた伴子だったが、突然顔を赤らめモジモジと話し出した。

「……でね、これは余談……なんだけど、最近分かった事で、……私……ね、普通の人と……しても、……ね、……できないみたい……なの。だから、……分かる……でしょ。あなたが……したい時、……私……いいわよ」

「何だよそれ」

「だから、……H………を、よ。ね。……あなたも興味無い訳無いでしょ?」

 伴子は恥ずかしそうに話すと頼の顔を覗き込んだ。

「あ? あぁ。分かった。その時は、よろしく頼む。てゆーか、聖史、モンスターの総元締なんだよな。じゃあこんな所でこんな事してる場合じゃねーだろ! 違ぇーのかよ!」

 頼は、いきなり立ち上がると、伴子・聖史に向かって叫んだ。

「こんな事って? 何すれば、いいって?」

「だから! 王様がこんな所で逃げ回ってていいのかよ! モンスター共集めて、護ってもらって、世界征服とかしねーのかよ! その方がRPGぽいじゃねーか! ……俺、思ってたんだ。……周りにモンスターが現れて、正志と狩りやってて、なんかRPGみてーだなって。……しかも、そのうえ、魔王がいるんだぜ。これは世界征服しかねーじゃねーか! 違ぇかよ!」

「えっ。そんな事言われても、……ねぇ」

 と伴子が聖史の顔を覗き込んだ時だった。

「我がしもべ達よ時は来た! 我が下に集い我を守護せよ! 我は『キラヘル』の長なり! 我はこれより大坂の社に身を移す。大坂の社に集いて我を待て! この命は絶対である! 背く事ならん! 背くモノには、瞬時なる死を!」

 すぅっと聖史が浮かび上がったかと思うと、伴子の頭の中に響く声が聞こえた。その声の主が横にいるにも関わらず、耳からは一切の声は聞こえなかった。

「えっ、何? 何なんだよ!」

「分からない。でも、聖史が何か始めるみたい。大坂の社にって言ってたから、……大阪城の事かしら」

「お母さん。今から行くよ。僕のチカラを見せてあげる。頼兄ちゃんも一緒にね」

 そう言うと3人は立ち上がり、廃屋を後にした。



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