表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/40

潜入

 病院の地下研究室の一室にて、醜い顔を更に歪めて、不敵な笑みを浮かべる園川の姿がそこにあった。

「クックックックッ。貴重なサンプルが、こんなに手に入るとは、全く笑いが止まらんな。クックックックッ。矢馬鍋から人間との見分け方も聞いていたので、苦労もしなかったし。これで、矢馬鍋に高飛車な顔はさせんぞ。クックックッ。それにしても、活きの良いのが……、7体も。待ってろよ、矢馬鍋。クックックックッ、ハァ〜ハッハッハッハ!」


 病院内部へ潜入した木村達は、作戦通り病院関係者に取り押さえられ、窓の無い隔離された個室の中に監禁・拘束されていた。

「お前ら、まだおとなしくしとけや。奴ら俺達の能力にまだ気が付いとらへんようや。あの男、俺達を矢馬鍋って奴に引き渡すつもりらしい。もう少し様子見てから、浩二に近付いたら行動開始や」

「あんた、ほんまに地獄耳やな。惚れ惚れするわ」

「しゃあないやろ、これが俺の覚醒した能力やねんから。それよりたもつ、動く時は頼むで」

「分かっとる。こんな鎖、糸みたいなもんや。問題あらへん」

「あんたらええなぁ。役に立つような力があって」

「何ゆうてんねん友利ゆり。お前のその動態視力、一番侮れへんのとちゃうか?」

「そんなことないわよ。ただ動いてるモノが、ゆっくりに見えるだけやんか。そんなんより、ほんまに7人なんかで良かったん?」

 メンバーの中で紅一点の友利と呼ばれた女は、不安な様子を醸し出しながら、木村の選抜したメンバーを改めて見渡した。

「俺は、バランスのとれた6人を連れて来たつもりやで。ちゃうか? 怪力の保やろ。雑食の蓮見はすみ。駿足のとどろき。動態視力の友利。強嗅覚の犬飼いぬかい。皮膚硬化の羽瀬はせ。そんで地獄耳の俺や。最強やないか? ……ん? 誰か来る!」

 木村がそう言って、しばらくしてからドアが開いた。

「おやおや、おとなしくなってしまいましたね。それでは、ここの中枢、研究施設へ移動しましょうか? クックック何も心配いりませんよ。すぐに浩二君に会わせてあげます」

 そう言って、部屋の外へと先導する園川に、木村達は言われるがまま後について行く。

 しばらく行った所で、男は壁の前で立ち止まり、壁に手を当てた。すると壁に0〜9の10個の数字が浮かび上がると男は6ケタの番号を押した。すると、壁だと思っていたところが両側にスーっと開き中にEVが現れた。男を含む9名が乗り込むと、EVは下へと動きはじめた。

 かなり下まで降りたような気がした時、突然EVがガタッっと大きく揺れたと思うと、明かりが消え、ボウッと仄かな光に変わった。

「どうした!」

 引率をしていた園川は苛立ちの表情に変わり、横にいたまだ一度も声を発していない女に怒鳴り付けている。

「確認します」

 女は、表情を一つも変えず、ポケットの中から小さなマイクのような物を取り出すと、ボソボソと何かを話始めた。時折頷くだけで、全く表情を変えずボソボソと話をしていたが、「了解しました」と一言言ってマイクをしまい込んだ。

「どうなってる!」

 園川の動揺とは反対に、女は平静を保ったまま冷静に状況を報告する。

「中層にて爆発事故が発生したようです。原因は不明。現在、確認中です」

「事故とは何だ! 中層は、サファリエリアではなかったのか!」

「現在確認中です。詳細は不明です。しばらくこのままお待ち下さい」

「くそっ! 何だと言うのだ! なぜお前は、そんなに落ち着いている!?」

 慌てふためく園川とは反対に、女は顔色を変える事もなく、平然とその場に立っている。

「………」

「何とか言ったらどうなんだ!」

「……無駄な私語は不要です」

「くそっ! 機械女め!」

 園川は、女に聞こえるように悪態をついたが、女には何も聞こえていないようであった。

「上から何か来るぞ」

「臭い、臭いぞ。獣臭せぇ」

「メシの臭いだ。メシが近付いて来るぞ」

 木村達が、異変に気付き危険を知らせる言葉を発すると、園川はますます顔色を悪くし、挙動不審になっていく。

「お前ら何を、!!!!」

 園川が木村達に何かを言おうとした時、EVの上にドンッっと大きな音がなったと思うと、EVがガタガタッっと揺れ始めた。

「来るぞ。来るぞ。今、上にいる。今、天井を開ける音がする」

「臭せぇ。獣臭せぇ。ん? 人間がいるのか?」

「Dr.端へ! バトルフォームへ入ります」

「保! 扉を開けろ! ここ狭いやろ! 広いとこ探せ!」

「少し下に臭いの薄れている空間がある。多分部屋か何かや」

「おっしゃっ、分かった! うおぉぉぉぉ!!」

 保はEVの扉を素手でこじ開けると、扉の前に現れた壁を上に持ち上げるようにし、EVをゆっくりと下に動かし始めた。

「保急げ! もう時間ない!」

「分かってる! 犬飼! あとどれくらいや!」

「あと少しや! ……よしっ、ここや! 保! 前の壁、壁とちゃう! 扉や開けてくれ!」

「分かった!」

「バトルフォーム、チェンジオン! 来ます!!」

 女が、声を出した瞬間EVの天井の一部が剥がれ、そこからモンスターの顔が覗いた。

「ぅおぉぉりゃぁぁぁ! ……開いたぞ! 分散しろ!」

「各自、戦闘体制に移行! 得意範囲に、分散しろ!」

 木村、保、女の声を引き金に園川を除く8名は、EVの外に姿を消していった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ