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「ちょっと、これ見て」

 神名に誘導された霧斗と中田は、パソコンに表示された画面をいきなり見せられていた。

「どう思う?」

「どうと言われても、……これ全国模試の結果じゃないか。これが何だって言うんだい?」

「えっ! 全国模試だって!」

「そうなのよ。ね、変でしょ? ……あなたは何も思わないの? 相っ変わらず鈍いわねぇ」

「なんだよ。何が鈍いって? え〜と、一位が徳島、二位が山梨、三位が……。これの何が変だって言うんだい?」

「霧斗さん、ちょっとどいて下さい。……。……。……。……やっぱりそうだ。霧斗さん、ここ見て下さいよ」

「ん? 最下位が、沖縄?」

「その下よ」

「何だよ。え〜と……、京都、大阪、奈良、兵庫、和歌山、未回答? ……何で?」

「あ〜! もう! 本っ当に鈍い!」

「霧斗さん、よく考えて下さいよ。今、街中じゃモンスターがうろついて、会社はおろか、学校へも誰も行っていない状態なんです。そうですよね?」

「うん、そうだね」

「そうだね。じゃないわよ! じゃあ何で、全国模試の結果なんて出るのよ。学校にも行ってないのに!」

「どういう事だ?」

「しっかりして下さいよ。だから……要は、近畿圏だけなんですよ! 今の事態が起こっているのは! ……その他の地域じゃ、今も何も変わらず生活しているって事です!」

「どう? 分かった?」

「ふ〜ん。そうなんだ。……という事は、近畿圏のモンスターを駆逐すれば、一件落着って訳だ」

「いや、そんな簡単な問題じゃないと思いますよ。強いて言えば、まだ近畿圏だけでおさまってくれてますが、いつ周りの、他府県に飛び火するか分からないって状態だと考えるのが妥当だと思いますけどね」

「そういう事。で、この件は、『今の現状が確認できた』という位で置いといて、後二つ見て欲しいものがあるの」

 そう言うと、神名はパソコン内の、『Real RPG』というページを開いた。

「何だ? これ?」

「ほぅ! 俺達と同じようにモンスターハントしている奴らのリストか。でも、こんなもの誰が作ってるんだ?」

「制作者は不明。ある意味、ゴーストサイトなのよ。でも、確実に更新されていってるの。これ、使えないかしら」

「なるほど、これを使って仲間を増やそうって訳だな」

「でも、アマチュアハンターをいくら増やしても、足手まといにしかならないんじゃないのか?」

 その言葉を聞いた中田は、『自分達もアマチュアじゃ……』と言おうとしたが、それはグッと堪えた。

「そう言うと思っていたわよ。だから、え〜と。ちょっと待ってね。……。……これじゃない。……。……この人達も違う。……あれ? どこだったっけ。……。……あっ、あった。これ、この子達なんてどう?」

「え? この子達? 子供?」

「お前なぁ。子供、仲間にしてどうするんだよ」

「甘いわね二人とも。ちゃんと読む。そして見る。この子達、この文章上で見るとただ者じゃないわよ」

 神名は、パソコンの画面を指差して得意気に踏ん反り返っている。

「でもな、子供だろ……、何々? 『奈良県在住の二人組。一人は釘バットで殴り倒しながら、接近戦にはサバイバルナイフを使用。多勢に無勢時は、腰にぶら下げてあった、油の入った水鉄砲で油を撒いた後、ライター付き殺虫剤で火炎放射。もう一人は、シンプルファイターながらも、身の丈程ある長刀を両手、片手で器用に振り回し、こちらも接近戦には脇差しから短刀を抜き出し、二刀流へスタイルチェンジ。たった二人で、50を超えるモンスターをほぼ無傷で戦う。しかも笑いながら。奈良県、最強か?』か」

「ね。すごいでしょ。ねえ、この子達に会いに行ってみない?」

「でも、奈良だぞ。神戸から奈良まで会いに行く必要あるのか?」

「強力な戦力よ。遠いなんて言ってられないんじゃなくて?」

「……分かった。行ってみよう。但し、仲間にするかどうかは、当人達の能力を間近でみてからだ。いいな」

「ええ。いいわよ」

「ぇえ! 行くんですかぁ?」

 山里家二人は、意気揚々としていたが、中田は嫌々笑っていた。

「で、あと一つは?」

 すぐに真顔に戻った霧斗が、神名を見つめなおす。

「あっそうそう。これはちょっと見つけた記事なんだけど気になる事が書いてあったから。え〜と、読むわよ。『昨日未明、京都の山間の村にて惨殺現場発見。現場の佐久田さくた 正三しょうぞう氏74歳の家の一室にて、佐久田氏とその近隣住民数名の血液が、部屋中に飛散、付着しているのを、近隣住民が発見。その場に死体が無かった事から、警察は死体を移動させた可能性が高いとして捜査を開始した』これだけなんだけど、これってただの殺人なのかしら。場所が京都だし。ごめんね、これはちょっと気になっただけだから。聞いてもらいたくて」

「確かに気になるが、それは置いておこう」

「ねえ、神名さん。さっきのサイトだけど、俺達の事も載ってんの?」

 殺人には、興味がないとばかりに中田は突然話題を変えた。

「えっ、え〜とぉ。載ってるわよ。読みましょうか?」

「お、それは俺も興味ありだな。読んでくれるか」

「じゃあ読むわよ。まず中田さんからね。『姫路の鬼神。異様な笑い声をあげながら、チェーンを鞭のように振るう男あり。全身にモンスターの返り血を浴びながら、戦う男の姿はまさに鬼神そのもの。しかし、笑い方の為か、狂人にも見えてくる。兵庫県内では、四天王クラスか?』どう?

 中田は、返答せずに苦笑いだけしていた。

「次は私達ね。『神戸の街に、バトルマシーン発見。夫婦なのか、二人の男女が戦う姿は圧倒的。男の方は、両手にナイフを持ち、小刻みに攻撃を行うも、そのほとんどが致命的ダメージを与えており、瞬時に急所を見極めているようだ。女の方は、ナックル装備。ナックルも数種類持っているようで、シンプルな物から長い爪の付いた物まで、現在確認しているだけでも3種類。また、蹴りも強力な武器になっている事を考えると、あの靴には秘密が隠されていそうだ。近距離バトルにおいて、スピード、パワー、テクニックどれをとってもトップクラス。この二人、兵庫県内では四天王クラスか? 一人一人が四天王クラスの可能性も拭えない』ってこんな感じ」

「これ書いてる奴、よく見てるな。どこから見てるんだろ?」

「確かに、不思議ですね」

「まぁ、それは今はいいや。じゃあ、行こうか。奈良へ」

 三人は、立ち上がると部屋から出ていった。

「でも、俺、あれ書いてる奴知りたい……」

 中田はボソッと呟いた。



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