バトル!!
ジリリリリン! ジリリリリン!
激しく鳴り止まない電話に少年は、手を伸ばし受話器を上げる。先程まで寝ていたと思われる少年は、重い瞼を擦りながら、受話器を耳に当てた。
「お〜い! 正志! 今日も行こーぜ、モンスター狩り!」
受話器の向こうから、元気な少年の声が飛び込んできた。
「ぅん? 頼? なんだよ、こんな朝早くから……」
正志と呼ばれた少年は、まだ眠たい目をこすりながら面倒臭さそうに答えた。
「朝でもいつでもいいじゃんよ! 正志! 狩りに行くぜ!」
「ぁあ? 今日も行くのかよ! しつこいねぇ、お前も……」
「あったり前じゃん! 今日こそは負けねーからな!」
彼の名前は、神崎 正志。で、このハンティングに誘ってきてるのが、親友の栗原 頼。
彼らは、ほぼ毎日このハンティングで、どちらが多くの獲物を倒すことが出来たか、競争をしている。今のところ正志が19勝5敗で勝っているのだが、頼にはそれが気に喰わないらしい。
「当たり前じゃねーか。散々、お前に負けてばっかの俺じゃねーぞ。今日からは、もう負けねー。なぜなら……、こいつ、こいつがあれば、もう絶対に負ける訳がねーからだ」
「おっ、またまた何か秘策か? 毎回飽きないねぇ、お前も。今回の秘策は何だ?」
「おっ! 興味あり? じゃあ、教えてやるよ。今回は、これ。って言っても電話じゃ見えねーか。刀だよ刀。家の蔵の中を、何かいい武器はねーものかと探し回ったら、出てきたよ。やっぱこういう時は蔵だねぇ。ゲームとかなら、武器屋なんだろうけど、そんなんねーしな」
頼の家は昔からの旧家で、かなり以前から建っているらしい。当然、見た目だけでなく、それなりに金銭的に裕福で家の隅には、大きな蔵が建っていた。
「刀! うそっ! また物騒な物見つけてきたねぇ。これは、俺の最強伝説も終わりかねぇ。なーんてな、そんな訳ねーじゃん。俺のこの最強装備が負ける訳ねーての」
「へっ、言ってくれんじゃねーか。よし、今から勝負だ! すぐ行くから逃げんじゃねーぞ!」
頼はそう言った途端、電話をきってしまった。
「あっ! おい! 今からって。……ってもう切れてるし。しゃーねーなぁ、じゃあ俺も装備の準備するか」
そう言うと正志は、言葉とは裏腹に楽しそうな表情で受話器を置くと、服を着替え始めた。
数分前まで眠たそうにしていた正志の姿は、もう何処にも無かった。