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目的達成

 薄暗い森の中。草むらに潜む男女は、固唾を飲んで目の前の光景を眺めていた。

「びっくりしたわね。まさか、植物が残るなんて」

「うぉぉぉぉ! どーしてくれるんだ! 俺の……。俺のぉぉ……!」

「何? 一体何なのよ」

「俺の仇は……。どこへ行きやがった〜!」

「命があっただけでも良かったじゃない。それとも、あの中に突っ込んで行って、どちらからも揉みくちゃに攻められて、何をどう攻撃したらいいか分からないまま死にたかった? それこそ、亡くなられたお嫁さんと娘さんが、うかばれないわよ」

 涙を流しながら大声で叫ぶ中田の肩に、女はポンっと手を置くと語りかけた。

「……。くそっ! くそぉ! くそぉぉぉぉ〜! ……ふーっ! ふ〜っ!! ……で、テメェ、誰なんだよ!」

 涙を拭いもせず、中田は鼻水と唾を飛ばしながら、女に詰め寄った。

「あっ! ごめんなさい。自己紹介してなかったわね……。私は、山里やまざと 神名かんな、自称研究者、……本当は専業主婦なんだけどね。……でも、戦いには自信ありよ」

「何が、自信ありよ。だ! 何もエモノ持ってねぇじゃねえか」

「あっ! しくじったなぁ。まだあいつらいたの、忘れてたわ」

「何!?」

 話をしている二人に、先程縄張り争いに勝利したプラントモンスター達が、標的を変更し襲い掛かろうとしていた。

「話は一旦終わり。あいつら、潰すわよ! 準備はいい?」

「うひゃひゃひゃひゃ〜! お〜し! 来い! テメェらは、仇の仇だ! 俺様が、再起不能にしてやる! してやるぅぅぅぅ〜! うひゃ! うひゃひゃひゃひゃひゃ〜!」

「もう! 聞いてないし。じゃあ、行くわよ! はぁ〜〜!」

 神名の言葉を待たず、中田は遅い掛かるモンスターに向かって走り出していた。

「うひゃひゃひゃ! 死ねぇ〜! おらぁ! うりゃぁ!」

「あ! 危ない。ちょっ! 危ないじゃない! この人にチームバトルは無理なようね。ハッ! 何、この人。たっ! これじゃ、野生動物と何も変わらないじゃないの! あ〜もう! うるさい! は〜っ、だだだだだぁ! うわっ! また? もう!」

 あたり構わず振り回す中田のチェーンに苛立ちを抱きながら、神名は近接するモンスターを確固撃破していく。

「うひゃひゃひゃひゃ! 死ね! 死に腐れ! ひゃぁはっはっは〜! う〜ひゃぁぁぁ! ラァストォ〜! うひゃひゃぁ! はぁはぁはぁ! うぉぉぉぉ! 渚ぁ! 愛里ぃぃ! お父さんは、やったぞぉ! お前らの仇、とったぞぉぉぉ! おぉぉぉぉ、とったぞぉぉぉ〜! とった。ははは。やった。やったぁ!」

「はぁっ! はぁっ! はぁっ! ふーっ! ふふ、良かったわね」

 静寂を取り戻した森の中で、神名は荒い呼吸を落ち着かせてから、中田に話し掛けた。

「あんた。ありがとな。あの数は、俺一人じゃ絶対無理だった。ありがとな。……でもよ、あんた、すごいな。本当にただの主婦か? あの身のこなし。しかも、素手? そのうち、腕へし折れるぞ」

「バカね。素手で戦えるわけないでしょ。こーれ、ナックル。メリケンサックっていうのかな? 私は、これが一番死角の少ない武器だと思っているのよ。………ていうか、あなた! ちょっと回り見て戦いなさいよ! 危ないじゃない! なぜ、あいつら相手にしながら、味方と思っているあなたのチェーンを避けながら戦わないといけないのよ! あなたは、チームバトルっていうものを覚えた方がいいわね」

「えっ。すっ、すまん。いや、ごめんなさい。本当に、ゴメン。敵討ちって考えてると、周りが見えなくなって……。これからは、気をつけるよ」

「当たり前よ。……って何よ、これからって。今後、一緒に戦うの? ……まあいいわ。よろしくね。あなた名前は?」

「ゴメン。申し遅れた。俺の名前は激。中田激だ。今後ともよろしく。……で、大変言いにくい相談だけど、……部屋空いてない? ……今、住む所ないんだ」

「はぁ? 何よそれ。本当に? ……まぁいいわ。じゃあ、家にいらっしゃい。でも、私の旦那、けっこうヤキモチやきだから、喧嘩しないでね。まぁ、喧嘩になっても、多分中田さんは勝てないけどね」

「はは。気をつけます。それでは、今後色んな意味でよろしくお願いします」

「あっ、そうそう。旦那の名前は、霧斗きりとよ。山里霧斗。覚えておいてね」

 中田の差し出した手を神名は強く握り返すと、ニコッと笑ってから歩き出した。中田は、一生懸命愛想笑いをしながら、神名の後ろについて行った。




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