蔵には……
「クソッ! 何もねーじゃねーか。おっ! この箱は、期待出来そうじゃねーか。やっぱ、蔵は最高だね。正志、これが家の格の違いだよ。へへっ!」
薄暗い蔵の中で、頼は見付けた箱を片っ端から空けていた。電気はなく、天井近くにある小窓から、差し込む僅かな太陽の光を頼りに武器を探す。
しかし広い蔵の中で、そう簡単に何かが見付かるという事はなかった。
「では、どれどれ……って、……何じゃこりゃぁ! ばあちゃん! ここは、物置じゃねーんだぞ! クソッ! 期待して損した。……また振り出しかぁ。はぁ。……つーか、もう止めだ止め! もうねーわ! ……どうしよう」
大雑把に蔵の中をさまよった頼だったが、その広さとガラクタの多さに目眩さえ覚え、その場に座り込んでしまった。
「…………だ〜! 何も浮かばね〜! ……そうだっ! ……技だ、……何か技をいくつか覚えたら、新しい武器を手に入れるより、役に立つんじゃねーか!?」
蔵の暗い天井を見上げ、落ち込んでいた頼だったが、突然の閃きに光を垣間見たのか、飛び上がるようにして立ち上がった。
「……よーし! 燃えてきた! へっ! やるぞ! やってやるぞ! よーし! よーし! よぉ〜し! 善は急げだ、今からやるぞ! ……でも、何もない所でやってても、何も思い付かなさそーだな。……うしゃぁぁ! 狩りしながら、考えてやる! よっしゃぁ! 行っくぜぇ!」
技の習得を目的に、頼は玄関の大きな扉を開け、家の外に飛び出した。
「おう! 頼! どこ、行くんだよ」
「えっ! あっ! 正志? どしたのさ」
家の外に出た途端、正志に声を掛けられた頼は、何故正志がそこにいるのかと疑問に思った。
「なんか暇だからさ、何か新しい武器でも見つけたかなと思ってさ。なんとなく来てみた。なんか邪魔だった?」
「いや。邪魔じゃねーけどよ……、あのさ……正志、新ウェポンなんだけどさ……、家の蔵ん中探し回ったんだけどさ、……見付からなかったんだわ」
「ん? そか。じゃ、どーすんだよ。やっぱ刀だけでいくか?」
「るせっ。しゃーねーじゃねーか。……でも、ただ振り回してるだけじゃ、ダメじゃねーの? って思ってさ。今から、実地訓練兼ねて技を覚えに行ってくるぜ!」
実地訓練の言葉を聞くと、正志は渋々といったように、腰からサバイバルナイフを抜き出した。
「そかそか。じゃ、俺も一緒に行こーかな。もし、ヤラレちまったら後味ワリーしな」
「また二人で大暴れか? 懲りないねぇ君も。てか、その様子じゃぁ、元々そのつもりだったんじゃねぇの?」
「なんだよ! バレバレか!?」
「ったりめーじゃねぇか! 普通に歩くのに、そんなモンいらねーだろ!」
「流石だぜ! じゃあ、行くか!?」
二人は顔を見合わせると、そのままダッシュで駆けて行った。