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狂人再び

 全身血まみれの男。中田は、憶測のボスを追って、森林ではなく、既に森の奥地へと足を踏み入れていた。

「鳥のボスは、やっぱり鳥か!? ホーホーか? カーカーか? うひゃひゃひゃ! まさか、チュンチュンじゃないよな! うひゃ! うひゃひゃひゃぁ〜!」

 半狂乱で狂気に満ちた中田は、血まみれのチェーンを振り回しながら、森の奥へと入って行く。相変わらず、発狂したような笑いを続けていたが、目は笑っていなかった。

 突然! 辺りの空気が変わった。辺りの草木がガサガサと音をたて、獣の唸り声のようなものも聞こえる。

「来たか! おぉぉっしゃぁぁ〜! 来い! 来い! 来いぃぃ! ……? ん? ……あれ? なんだ? どうなってるんだ!?」

 中田は、かまえをとり、辺りを見渡したが、何かが襲ってくる気配は全く感じられなかった。

 少し先の茂みの方から、何やら凄い覇気を感じ、中田はゆっくりと慎重にその場所を確認しようとした。途端!

「ぐわぁ!」

 何かにいきなり、頭を上から押さえ付けられた。

「クソッ! 不意打……」

 振り返り攻撃体勢に入ろうとしたが、無理矢理頭を押さえ付けられ立つ事が出来ない。

「静かに! 見付かる!」

 誰かがさらに頭を押さえ付けた。

「なんだ!? おりゃぁ! なんじゃ、テメェ!」

 立ち上がろうともがくも、頭を押さえる手は力を抜く気配がなかった。

「しっ! 黙って! ……ほら。始まる。ただ、採取に来ただけなのに、とんでもないものに遭遇したわね」

 声の主から、徐々に力が抜けていく。中田は、ゆっくりと横にすり抜けると、その声の主の横に座り、今始まったと言われた方を見た。そこには……。

 獣の群れ、ペットで飼われるような物から、野生の物・鳥類に至るまでの物が2つのグループになっている。そこに自由を得た植物達、これも大木から雑草に至るまでの物が一つの布陣を組んでいた。ただこれは周囲の草木に紛れて、どれが普通の植物なのか、どれがモンスターなのか、見分けがつき難い状態であったが……。3つのグループが、今、この場で、戦闘を始めようとしていた。

「なんだ? 何が始まるんだ? ……ん? あれか!? ボス!」

 中田が立ち上がり駆け出そうとした瞬間、横にいたヤツが腕を引いて中田を座らせた。

「待って。これは、縄張り争いよ。今、出て行ったら全てのグループの標的にされるわ。下手に動いても危ないから、しばらくここで様子を見ましょ」

 沈着冷静に状況を判断し、無関係の中田に指示する相手に中田は、苛立ちを感じ相手の方を見た。

「……てか、テメェ誰だよ! 何でこんな所に居る!? つーか、女じゃねーか! テメェ、邪魔すんじゃねぇよ! あいつはよ、あいつらはよ! 妻と娘、渚と愛里の仇なんだよ! 止めんじゃねぇ! うひゃひゃひゃ! うひゃひゃひゃひゃ〜! 殺す! 殺すぞ! 殺してやる! 死に腐れ〜! テメェ〜ら〜!」

 戦闘体制に入ろうとする中田を、女は無理矢理座らせると、再び中田の頭を押さえ込んだ。

「だからッ! じっとしてなさい! しっ! あんたが死ぬわよ!」

「クソッ! 手ぇどけろよ! 何だってんだ! しかしよ。テメェ、誰なんだよ。何だってこんな所にいる!」

 中田の質問など聞く耳を持たないのか、女は目の前の縄張り争いから目を反らさずに、中田の頭からゆっくり手を離した。

「始まったわ。なるほどね。これで私の仮説が正しいという事に一歩近付いたようね」

「だ〜か〜ら〜! テメェは……」

「うるさい! 静かに!」

「誰だって聞いて……」

「やかましい! 騒がしい男は嫌われるわよ。ちょっと、黙ってて!」

 今にも掴み掛からん勢いの中田だったが、女に睨まれ、とりあえず動物Vsモンスターの方へ目を向けた。

「ふーん。あいつらってあんな連携出来るんだ。一番不利なのは、野生の動物達ね。全く統制がとれてない。うわっ……プラントモンスターって、種類が増えると危険ね。あの上下からの攻撃は、乱戦の中じゃ多分かわせないわね。……やっぱり、アニマルモンスターが強いか……。あの攻撃力は侮れないわね。あっヤバ! 動物達もうダメ。バラバラに攻撃してちゃダメよ。あっ、あ〜。あ〜あ、あれも野生のカンってやつなのかしら。みんな逃げちゃった。……それにしても……すごいわね。雑草達、戦闘区域がこんな所だと全然ザコじゃないのね。周りの草と見分けがつかない。へ〜、根っこって、移動手段だけって訳じゃないのね。あれは連発できないみたいだけど、確実に不意打ちになるわね」

 戦闘は人の行う戦闘範囲を軽く超えていた。動物達がアニマルモンスターへと飛び掛かるも、アニマルモンスター達は、その身体能力を活かし動物達より攻撃を受ける事なく、動物達を虐殺していく。その間にアニマルモンスターへと近付いたプラントモンスター達は、その無数とも思える枝を鞭のようにしならせ、上からの叩き付け、横からの払い出しと攻撃の雨を降らせ続けた。

「あれは、ヤベェぞ! 地面から突然突き上げられる! あれ、出てくる場所が分かんねーんだ。……うひゃひゃひゃ、あれは、俺の一番嫌いな攻撃だ。鳥ども〜! 卑怯だぞ。空からの啄み攻撃!」

 根を地中へ潜り込ませ、突然槍のように地面より突き出す不意打ち攻撃。強靭な顎で大木の幹すらも粉砕するアニマルモンスター。草木の届かない空中から、急降下し体当たりにて、その直撃地に小さな穴を開ける鳥型モンスター。

 モンスター同士の戦いは、優劣を予想させることなく続き、中田と女は、じっと草むらの陰に身を潜め、その戦いの結末を待つしかなかった……。



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