晩飯
きょうの晩飯は目玉焼きとツナサラダと白飯だ。目玉焼きにはマヨネーズとソースをかける。俺は55年間、彼女ができたことがない。55歳にして童貞。死んだほうがましだが生きている。
炊飯器で飯を炊く。炊いている間、鶯谷駅の近くのレンタルDVDで借りてきたDVDを鑑賞する。昨晩、名作映画2本とAV1本を借りるとき、レンタル屋の女の店員が、その3枚のDVDのタイトルを見ながら、ちらっと俺の顔を見た。ほんの一瞬、ほんのわずかだが、その女がニヤリと嗤ったのを俺は見逃さなかった。あの女は俺が55歳の童貞だと見破ったに違いない。
晩飯を食い終わり、俺は散歩に出た。冬の星空は美しい。ふいに流れ星が見えた。俺は願いごとを言いたかったが間に合わなかった。
「あの女の店員を抱きたい」
流れ星は、とっくに消え失せていたが、俺は星空に向かって胸中で呟いた。
翌日、3枚のDVDを返却しにレンタル屋に行った。あの女の店員はレジにいる。返却が済み、女は事務的に「ありがとうございました」と俺に言った。
「すみません。この紙のここに名前を書いてください。ここに印鑑も押してください」
俺は婚姻届けをレジに広げた。
俺の願いは叶わなかった。すぐに警察が来て、俺は刑務所に入れられた。刑務所の晩飯は、豚の生姜焼き、シーザーサラダ、味噌汁、白飯だった。俺が自炊する晩飯よりも美味かった。




