表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/197

決戦、クラス出し物会議

 翌日のロングホームルーム。


 担任の荒木理子が教壇に立ち、黒板に迷いのない手つきで文字を書き始めた。


「さて、文化祭のクラス出し物について決めます。動画とミスコンはすでに動いていますので、今回は“もう一枠”です」


 教室に微かなざわめきが広がる。


 空調の静かな風音の中、いよいよ始まるかという空気が全体に波及していった。


 荒木先生は一歩下がり、腕を組む。


「まず、案のある人は挙手。出し物の種類は自由。ただし、実現可能性を踏まえて意見を出してください」


 言い終えるか終えないかのうちに、前方の男子数人が勢いよく手を挙げた。


「先生! メイドカフェやりたいっす!」


「またそれかよ!」


「いやいや、絶対盛り上がるって!」


「他のクラスもやるって! これはもう、乗るしかない、このビッグウェーブに!」


 勢いに乗って声を張っているのは、真鍋怜央と大谷樹。


 ノリとテンションで押し切ろうとしているその様子に、クラスの半分が苦笑する中、なぜか男子の一部からは真剣なうなずきまで返ってくる。


「他には?」


 荒木が視線を滑らせると、今度は女子数人が静かに手を挙げた。


「縁日風の模擬店、どうでしょう。浴衣で統一したら雰囲気も出ますし」


「お化け屋敷も定番だけど、演出を工夫すれば見せ場になると思います」


 黒板には順に案が書き出されていく。


 メイドカフェ/縁日風模擬店/お化け屋敷/演劇/カフェ&展示


 だが、明らかに「メイドカフェ」の一文がクラス全体の注目を集めていた。


「……でも、メイド服って、着るのは女子なんだよ?」


 低く漏れたその声に、数人の視線が向く。


 発言したのは、内海紗月。腰まで伸びる黒髪をきっちり結び上げ、制服を丁寧に着こなしたシャープな雰囲気の女子。


 普段は無駄口を叩かない“しっかり者”のその言葉に、クラスの空気が一瞬だけ固まる。


 隣の席の南條美佳が、やや肩をすくめるようにして返した。


「まあまあ。文化祭だし、ちょっとくらいハメ外してもいいんじゃない?」


「え、美佳、それ許容派?」


「うん、見てる分には楽しいし?」


 やや巻いた髪を揺らして笑う美佳に、どこか釣られるように空気が緩む。


 そのやり取りに、一ノ瀬みつばが笑いながら乗った。


「いいじゃん、メイドカフェ。やるなら本気でやって、うちが一番かわいくしてあげるよ?」


 その一言に、周囲の女子たちが「……まぁみつばが言うなら」と苦笑を漏らす。


 すると紗月が、再び静かに口を開いた。


「……どうせやるなら、衣装の監修はやらせて。チープなのとか、露出多めなのとか、絶対いやだから」


「わ、それなら安心かも!」


「紗月に任せたら、“ちゃんとしてる”やつになりそう!」


 空気が変わったのは、確かだった。


 陽真はその様子を、少し離れた席から見つめていた。


(男子の勢いもだけど……女子のバランス感覚、すごいな)


「じゃあ、多数決にします」


 荒木の一声で、投票用紙が配られる。


 各自が案を記入し、教室の前で佐伯夏目が票を集めていった。


 高身長で動きに無駄のない彼女は、手際よく集計を終えると黒板の前に立った。


「集計完了。――文化祭のクラス出し物、メイドカフェに決定です!」


 「「「うおおおおお!!」」」


 男子たちが一斉に歓声を上げ、ガッツポーズを交わす。


 女子の中には渋い表情も見えたが、どこか“やるならやるか”という雰囲気に収束しつつあった。


 そのとき、みつばがぱんっと手を叩いて場を仕切る。


「どうせやるなら、最高のメイドカフェにしよう!」


「メイド服のデザイン、私考えてもいい?」


「じゃあ、店内装飾は任せて!」


「メニュー考えたい!」


 自然と役割分担が立ち上がり、クラス全体が一つの目標に向かって回り始める。


 陽真はその流れを、少し離れた位置から静かに見守っていた。


(文化祭の準備――始まったばかり、だけど)


 教室の空気は、確かに動き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ