闇の先は…?
気づけば私は泣いていた。
自分の信じていた人に信じてもらえなくて、泣くその姿は自分によく似ていた。
生きていていいよと言ってくれた、初恋の人にもう死んでくれと、用済みだと言われた。
フェリシアはどれだけ辛かっただろう。
所詮は小説の中の物語。
けれどもどうしても他人事とは思えなかった。
「私ならフェリシアはわかってあげられるのに」
その瞬間、黄金とも白銀ともつかぬような光が自分を覆った。
「彼女を救ってください」
次第に意識が遠のいていくのがわかる。
暗い暗い闇に引きずり込まれるような感覚を伴いながら。
頭がかちわれるように痛い。
「二日酔いかな…喉乾いた」
目を開けると、やけに暗くじめじめした空間が広がっていることに気づく。
「二日酔いの症状に幻覚もあったっけ?」
全力で現実を逃避しようとするが、どうしようもないことに気付き、あたりを見渡す。
「ここは…ゲボッ、ゲボッ」
ここは物置だろうか。
至る所に埃が積もっており、蜘蛛の巣も張っている。
こんなところに来た覚えがない。
酔ってここまで来てしまったのだろうか。
そうじゃなければ誘拐?
とりとめのない考えが頭の中に広がる。
頭を抱えようとして、自分の手の小ささに驚く。
「えっ?」
頭が真っ白になるのがわかる。
何か自分の姿が分かるものがないかと、近くを手探りで探す。
「いたっ」
近くにガラスの破片があったらしい。
覗き込むと、幼い少女の姿が映る。
絹のような透明感のある白い髪に、サファイアのように輝く目。
一般庶民として生きてきた、私には程遠い容姿だ。
ただ、その容姿には見覚えがあった。
「いやいや!そんなわけ…」
バーン!!!
ドアがものすごい勢いで開くのと同時に、
「あら、今日は早起きなんですね、フェリシア様」
「…」
どうやら、本当に乙女ゲームの世界に転生してしまったらしい。