悪役令嬢の生きる道
同僚はもちろん、上司も聞く耳を持たず、瞬く間に俺のクビが決まった。
「荷物をまとめて出ていけ!」上司はそう言い放って出て行った。
そのあとのことは覚えていない。
ただ、最後に見たのは泣いていたはずの後輩の歪な笑顔だった。
会社を追い出されるように出された後、とにかく遠くに行きたくて当てもなく歩いた。
そして今に至る。
会社をクビになったという事実よりも。
仲良くしていたはずの同僚に、上司に、自分のことを信じてもらえなかったことが何よりもつらかった。
やけ酒をし、携帯を触っていると、「癒しの光~帝国の女神~」という乙女ゲームの高校が出てきた。私の妹が高校時代には待っていたゲーム。
聖女ナビアが心に闇を持つ攻略対象の心を癒し、彼らとともに憎悪の神とたたかい、救う物語だったはずだ。
懐かしく思い、興味本位でプレイしてみることにした。
ゲームを始めてあることに気づく。
元々この乙女ゲームはナビア視線の物語だったはずがフェリシア視線の物語になっているのである。
物語の中でのフェリシアは性格の悪い悪役だったが、実際のところどうだったんだろうか?
~数十分後~
「はぁ?なにこれ悪役令嬢可哀そ過ぎる!」
悪役令嬢であるフェリシア・アトランティスの人生はつらいものだった。
帝国には二大派閥がある。一つはアトランティス侯爵家。もう一つはシルダリア侯爵家だ。
そんなアトランティス侯爵家に生まれたフェリシアは幸せに暮らせるはずだった。
だが、フェリシアが生まれたとき、我が子を守って母、シルファーは亡くなった。
そのため、父は最愛の人を失ったのは娘のせいと思い、幼少期から虐待した。
「母親殺しが!」と。
フェリシアは母がいない辛さと、父から愛されない悲しみを、そして自分さえいなければという
絶望を押し殺して、生きていた。
そんな中、自分に生きていてもいいと言ってくれたアルゼン帝国の王太子ウィンセント・アルゼンに恋に落ちたのは当然と言えた。
やがて、フェリシアとウィンセントは政略結婚をすることになった。
そのことをフェリシアは心から喜んだが、ナビアという恋人がいたウィンセントは悲しんだ。
婚約者同伴のパーティーにも、狩猟大会にも彼はナビアと一緒にいた。
フェリシアは嘆き悲しんだが、「痛み」を身をもって知っていたフェリシアは、ナビアを傷つけることはしなかった。
だが、ウィンセントは愛する人と結婚するため皇家主催のパーティーでフェリシアをナビアの毒殺未遂の犯人に仕立て上げた。
彼女は無実を最後まで主張したが、処刑された。